幻太郎の手帳

※向日葵畑 サブ


「あの、明日・・・なんの日かって」
「明日ですか?・・・あぁ。担当さんとの打ち合わせですね。」
「・・・そ・・・そうですね!じゃあ明日は早いですよね。支度整えておきます。」

やっぱり、覚えてなんてないよね。明日私の誕生日なのだけれど。・・・ちょっとだけ期待してたんだけど。
明日は1日一緒にいれたらよかったななんて思ったけど、そうは問屋は卸さぬというわけです。
我儘は言っちゃダメだよね、幻太郎さんもお仕事なのだから。

明日の朝食の仕込みをして床についた。







月明かりに照らす指輪はあの時からずっと机の引き出しに仕舞っている。あの日渡せなかったこの指輪はもう渡すことはできない。おめでとうの一言さえも彼女に伝えられなくて。

彼女が亡くなった後もスケジュール帳のこの日に彼女の名前を書き込んでいる。私にとって、この日はとても大切な日だ。

「ねー、幻太郎〜。その指輪って結婚指輪だよね?」
「えぇ。この指輪は亡くなった恋人に渡すはずだった指輪です。」
「へぇー!そうなんだ!!」
「・・・なんて、もちろん嘘ですけどね。」


あぁ、そうさ。
全部、嘘だよ。




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