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「ううっ……ぐす、ルナちゃ……ねえ、ルナちゃんは個性、出たんだ……よね?」

打ち解けて仲良くなってしばらく。
いつものように待ち合わせして近所の子達で遊びに集まる日、いずくんが今にもぼろぼろに崩壊しそうな表情で問いかけてきた。

私の個性は既に言霊として出現していた。強制力のある言葉を使えるが、使いすぎると声帯に直接ダメージがくるものである。
しかしその使い勝手の悪さから、暴発を防ぐため鍛錬は積むものの、念能力の発を個性として常用しようと決めた。
私は幾つかある系統のうち、現実に実物を具現化する具現化系能力者である。早いうちに生命エネルギーオーラの鍛錬を始めた私は、だいたい4歳までに発現するという個性の出現時期に合わせて具現化を再習得することに決めた。通常であればありえない進行度であるが私はなんせ2度目で感覚まで掴んでいるのだ。あらゆる工程をすっ飛ばし、念能力の元であるオーラを練り上げる"練"と必殺技にあたる"発"の修行に取り組んだ結果、前世と同じ精神帯スピリチュアルリボンを手に入れた。攻防に優れ軽く治癒も可能な"器用貧乏"と称された能力である。

首を傾げながらそれにうん、と答えれば、羨むような、けれど同時に嬉しそうな変な顔をして「だよね、いいな」と目を潤ませながら言う。
割といつも変ないずくんだが、今日は輪をかけて様子がおかしい。

「……どうしたの?」

そう問いかけると、いずくんは目にためていた涙をついに零して、しゃくりあげながら打ち明けた。

「ぼ、ぼくっ、ぼくね、個性が……ぼくにはなんにも、なにも、ないんだって……っぐす」
「……? そういうこともあるの?」
「むこせいっていって、……めずらしいけど、あるって、ぼぐ…む"ごぜい"ってぇ……」

ひっくひっくと本格的に泣き出してしまったいずくんに、頭の中に新たに情報を追加しながら抱きしめてぽんぽんと背中を叩きながら慰める。

「ぼぐっ……ひー、ろーっな"れ"ないのかなあっ」
「? なれるんじゃない?」
「……えっ?」
「え?」

一瞬前まで目が溶けてしまいそうなほどぼたぼたと涙を流していたのに、私が答えた途端ぴたりと泣き止んでぱちぱち目を瞬かせてはこちらを見上げる。おかしなことは言っていないはずなんだけど。

「でも、こせいが……」
「ヒーローの条件って個性があるかどうかなの?」
「え、いや……そんなことはない? けど、でも」

私がこれまで見てきた中で、彼は純粋にヒーローに憧れて自分もそうなりたいと目指していた。どんな個性が出るか楽しみにしている様子も幾度となく見たが、彼は個性ありきでヒーローになりたいと考えているようには見えなかった。

「いずくんはヒーローになりたいんだよね?」
「ヴン」
「ヒーローになるために個性が欲しいだけで、なくてもヒーローになれるなら、いずくんはヒーローになるでしょ?」
「……う"ん"!」
「ならなれるよ。個性にたちうちできる体を作れたらいいんだよ」

にこ、と微笑めばすっかり涙は引っ込んだようで、私の言葉を噛み砕いている。

「……いつもルナちゃんがやってるようなトレーニング?」
「そうそう。一緒にやる?」
「……う"ん"っ」

きっと憧れの道が閉ざされた訳では無いと言って欲しかった彼は、以降文字通り血反吐を吐くトレーニングに必死に食らいついた結果、数年後に出会うオールマイトを驚愕させることになる。

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