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私の家はこの世界の基準でいうとごく普通の一般家庭である。
というのも、前世と呼べる記憶の中の人生と比べてみるとどう考えても恵まれまくっているとしか思えないので、基準をこの世界にいちいち合わせなければならない。
そんな一般家庭に生まれ、何事もなく健やかに成長した私は中学三年生になった。
「オイ! どういうことだルナ」
ずいっと目の前にくしゃくしゃの紙を突き出した幼馴染のかっちゃん、もとい爆豪くんは信じられないとでも言いたげな顔で私の机にその紙を叩きつけた。
「いやなにこれ……」
「お前の進路希望用紙だろーが!」
「えっうわ。なんでくしゃくしゃにしたの」
「お前がふざけた進路書き込んでるからだろうがッ」
一度握りしめた後に伸ばしてもう一度丸めたのだろうか。紙には一度では付かないような縦横様々な皺が寄っている。
その紙には私の字で”星城女子高等学校”と書き込まれている。
「お前は! 俺の横に立つために! 雄英受ンだよ!!」
「えぇ……だって雄英は推薦取れないんだもん」
「そりゃ成績のせいだろ! 俺が勉強教えてやっから一般受けろや」
「うちそこまで裕福でもないし。推薦取れるとこのほうが、」
いいんだよ。そう言い終わる前にかっちゃんの手が既にくしゃくしゃの用紙を縦に真っ二つに裂いた。
「うるっせえ!! 高校も満足に選べねえほど貧困じゃねえだろ! 見て分かンだろが! そんなに金が気になるんならそれこそ雄英でヒーローになりゃ稼げンだろ!! それで返してやれや!」
「いやヒーローになる気は……いやそれは、そうかも?」
このヒーローが台頭し、公務員的扱いの社会。さらにヒーローは兼業も許されている。”見ず知らずの誰かを助ける”仕事に興味などなかったが、そう言われれば確かに稼ぐ道の一つと言えなくもないのかもしれない。
彼の言葉に、む? と考え直し始めた私を見て、かっちゃんはニッと口角を上げて笑う。
「俺は高額納税者ランキングにその名を刻むんだ、俺の隣に並べば金で苦労なんかさせねぇよ」
破った用紙に未練を残すのを許さないとでも言うように、厚い手の中でびりびりと細かくしていく。爆破した方が早いのにそうしないところに執念のようなものを感じさせる。
「ちょっと、それ書き直せばよかったのに。新しい用紙もらいに行かないとじゃん」
「皺よってンだろが。こっちで出せ」
誰のせいで皺くちゃになったと思っているのか、代わりに手渡された新しい用紙には、既に名前も進路希望先の欄も埋められていた。もちろん書いた覚えはないし私の筆跡でもない。
「……私より綺麗に私の名前書くじゃん……」
「ハッ。年季がちげぇんだよ」
「なんでだよ、私の名前は私の方が書き慣れてるに決まってるでしょ」
「……、うるせぇわッ! 早く出してこいッ」
謎に私の名前を書き慣れてる宣言をかましたかっちゃんに蹴り出されるように教室を追い出され、腑に落ちない顔をさらしながら職員室へと向かうのであった。
というのも、前世と呼べる記憶の中の人生と比べてみるとどう考えても恵まれまくっているとしか思えないので、基準をこの世界にいちいち合わせなければならない。
そんな一般家庭に生まれ、何事もなく健やかに成長した私は中学三年生になった。
「オイ! どういうことだルナ」
ずいっと目の前にくしゃくしゃの紙を突き出した幼馴染のかっちゃん、もとい爆豪くんは信じられないとでも言いたげな顔で私の机にその紙を叩きつけた。
「いやなにこれ……」
「お前の進路希望用紙だろーが!」
「えっうわ。なんでくしゃくしゃにしたの」
「お前がふざけた進路書き込んでるからだろうがッ」
一度握りしめた後に伸ばしてもう一度丸めたのだろうか。紙には一度では付かないような縦横様々な皺が寄っている。
その紙には私の字で”星城女子高等学校”と書き込まれている。
「お前は! 俺の横に立つために! 雄英受ンだよ!!」
「えぇ……だって雄英は推薦取れないんだもん」
「そりゃ成績のせいだろ! 俺が勉強教えてやっから一般受けろや」
「うちそこまで裕福でもないし。推薦取れるとこのほうが、」
いいんだよ。そう言い終わる前にかっちゃんの手が既にくしゃくしゃの用紙を縦に真っ二つに裂いた。
「うるっせえ!! 高校も満足に選べねえほど貧困じゃねえだろ! 見て分かンだろが! そんなに金が気になるんならそれこそ雄英でヒーローになりゃ稼げンだろ!! それで返してやれや!」
「いやヒーローになる気は……いやそれは、そうかも?」
このヒーローが台頭し、公務員的扱いの社会。さらにヒーローは兼業も許されている。”見ず知らずの誰かを助ける”仕事に興味などなかったが、そう言われれば確かに稼ぐ道の一つと言えなくもないのかもしれない。
彼の言葉に、む? と考え直し始めた私を見て、かっちゃんはニッと口角を上げて笑う。
「俺は高額納税者ランキングにその名を刻むんだ、俺の隣に並べば金で苦労なんかさせねぇよ」
破った用紙に未練を残すのを許さないとでも言うように、厚い手の中でびりびりと細かくしていく。爆破した方が早いのにそうしないところに執念のようなものを感じさせる。
「ちょっと、それ書き直せばよかったのに。新しい用紙もらいに行かないとじゃん」
「皺よってンだろが。こっちで出せ」
誰のせいで皺くちゃになったと思っているのか、代わりに手渡された新しい用紙には、既に名前も進路希望先の欄も埋められていた。もちろん書いた覚えはないし私の筆跡でもない。
「……私より綺麗に私の名前書くじゃん……」
「ハッ。年季がちげぇんだよ」
「なんでだよ、私の名前は私の方が書き慣れてるに決まってるでしょ」
「……、うるせぇわッ! 早く出してこいッ」
謎に私の名前を書き慣れてる宣言をかましたかっちゃんに蹴り出されるように教室を追い出され、腑に落ちない顔をさらしながら職員室へと向かうのであった。