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進路希望を変更して(させられて)提出した私を待っていたのは職員室へのお呼び出しと急遽の三者面談であった。
女子高普通科の推薦から難関校ヒーロー科への志望変更、しかも親も知らされていないとなれば問い詰められるのは当たり前のことであった。私だって未だ飲み込みきれていない。
何より問題なのは学力が合格ラインまで届いていないことだ。担任からは「個性の扱い、身体能力は共に正直一級品です。身体能力なんて特に……ですが、学力が……5教科のうち4教科が偏差値に届いていないので雄英高校を志望するには厳しいかと」とのお言葉をただいている。
志望校の変更理由を聞かれた際に「将来安泰な職について親を安心させて恩返ししたいので」とお利口に答えたことで消極的な応援は取り付けられたものの、学力の壁は想像していたよりも高かった。前世のハンターライセンスの取得試験には筆記の学力テストなんてなかったのに。そもヒーローに学力は要るのか? 頭のいい敵が居たとて圧倒的な力でねじ伏せてしまえばいいのでは?
とてもヒーローと言えぬ思考回路で嘆きつつ愚りちつつ、しかし決めたからには死ぬ気で頑張る以外に選択肢はない元念能力者である。早々に人の手を借りることにした。

「かっちゃん、ほら責任取って」
「他に言い方ねェンか……」

「俺が勉強教えてやるから普通入試受けろ」の言質を得ているので遠慮なく幼馴染であり弟子を使っていく。そもそもこいつが全ての元凶なのだ。最後まで付き合わせるつもりである。責任を取ってもらってこれから入試までの間、空いた時間を私の為に割かせていただく。

「……どの教科がわからねェンだよ」
「国語数学社会英語」
「ア? おま、……偏差値は」
「51」
「20点以上足りてねェじゃねーか!!」

担任も本人の前ではっきり厳しいと評するわけである。しかもこの偏差値を支えているのは圧倒的理解度で安定的に95点以上を取り続けてきた理科あってこそである。軒並み他が足と言わず両手両足をひっぱりまくっていた。
人生二回目のアドバンテージがあるのはあくまで経験したことのみであり、物心ついたころからゴミ溜めで育ち生きるために必要に迫られて念を習得したあの世界での私は教育などというものを受けたことが無かった。つまり念能力レベル50、お勉強レベル1スタートなのである。理科科目は具現化系能力者として人体の創造を最終目標として掲げていた瑠奈には理解が深くて当たり前の内容なのであった。

「お前、手ェ抜いて……」
「ると思う?」
「ねェな。ってことはマジかよ。お前そんなに馬鹿じゃねェ癖になんで点数取れてねェンだ……」

以前、自分でも知識の偏りが気になって調べたことがある。実のところ、前世の経験のために生物・科学系の知識は高等教育レベルは修めていたが、全くの初めてである言語系、数学系の科目と社会情勢・歴史系の教科が記憶とごっちゃになって結局点数に反映されないのである。

「一から教え殺したる」
「ん……遠慮なく殺して」
「…………俺の前以外でそういうこと絶対ェ口に出すなよお前」

複雑な顔をしながらこちらを見おろす爆豪に何も言わずニコ……と返すとこちらも無言でデコピンを貰った。当たり前のようにオーラを集中させて防御力を上げたので、食らわせた側の爆豪の指が痛そうに赤くなった。またニコ……と笑っておいた。

「フツツカモノですが?」
「だァッから! そういうとこだっつってンだよ!!」

そうしてここから約1年ほど、周囲から"才能タッグ""天才ペア"などと評されるものの、その実ゴリゴリの努力の2人は付きっきりでみっちり勉強とトレーニングを進めていく中で付き合っているのでは? という下世話な話題の中心人物となり、どうやら様子がおかしいと気付かれ、なんだ違うのかと話題も徐々に下火になって行った。

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