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ある時からかっちゃんがと瑠奈ちゃんが付き合っているという噂が立った。
噂自体はその後すぐに「いやなんか様子がおかしいぞ」という客観的意見からたち消えたのだが、僕はまだソワソワし続けていた。
僕とかっちゃんは中学3年の今も同じクラスでこれまでずっとほぼ同じクラスだった。対する瑠奈ちゃんは同じクラスになることもあれば離れることもあった。3年に上がってからは残念ながら別クラスになっていて、学校での接点はあまりない。
しかし僕は彼女の一番弟子だ。4歳からずっと体作りと称した修行をつけてもらっているので、同い年でおかしいかもしれないけれど彼女は僕の師匠なのである。
「いつになったら瑠奈ちゃんみたいな動きができるようになるかな……」
驚くべきことに、彼女の肉体強度と身体能力は人智を超えていた。彼女の個性が身体強化などそういうものかと思ったがそういうことも無く。純粋に彼女の肉体が優れているだけだった。彼女は同じように鍛えれば個性などなくともこうなると言っていた。その言葉を信じて放課後の修行と自宅での自主トレを続けている。
その修行にかっちゃんが加わったのは少し後で、僕たちは2人とも彼女の弟子なのである。物覚えもよく体の使い方なんかはすぐに僕を追い抜いてセンスを見せつけてきた彼は、その頃から事ある毎に「一番弟子の称号さっさと寄越せや」と突っかかってくる。順番なので譲れるものでも無いし譲る気もないので毎回拒否しているが、その件を抜いてもかっちゃんが僕を敵愾心むき出しで見てくる理由を僕は知っていた。と言うよりも見ていたら気付いたと言うだけである。
僕が瑠奈ちゃんに褒められたり励まされたりしているとき、普通にお喋りをしている時、手当をしてもらっている時。彼女の顔をじっと見つめては僕の方を睨みつけてくるのだ。そうして次に自分が同じことをしてもらった時には限られた人にしか見せないはにかむような柔い笑みを見せて喜んだあと僕にドヤ顔をする。最初訳が分からなかったが、きっとあれが不器用な彼なりのマウントで、自分は彼女のことを好いているのだと彼女本人や他人に向けて必死にアピールしているのだ。
それに対して僕はと言うと、そんな様子を見せられては、まだ恋とも呼べないような淡い淡い気持ちを育てる前に諦めざるを得なかった。だって僕は何一つかなわない相手が、結果論ではあるが10年以上も報われることなく想い続けている相手だ。ライバルがかっちゃんなこともあるけれど、何より彼女自身が手強過ぎる女の子だった。
ある時ボソッと呟いていたかっちゃんの独り言が思い出される。
「あいつ、あんだけ強くて誰が対等に話してやれるんだ。俺が諦めたら本当に独りになっちまうんじゃねーの。諦めてやる気なんかこれっぽっちもねェけど」
きっと異性として好きになれた女の子だった。でもそれ以上にたくさんのものをくれる彼女に好き以外の気持ちの方が大きくなっていったし、僕はきっとそう望まなくとも彼女を独りにしてしまう。
だから言葉にはしないけれど、かっちゃんにしか任せられない。だから頑張って欲しいし応援しているのだ。
「かっちゃんに勉強教えて貰ってるの」
瑠奈ちゃんにそう教えてもらった時に、やっぱり彼女に何かを与えるのは彼なのだと確信した。
彼女に物理的に尻に敷かれながら腕立て伏せをしているかっちゃんを見て内心で応援する。後々暴露した際に「オタク特有のクソ重感情をあらゆる形で俺と瑠奈に向けんのやめろや!! 重ェ!」とキレられることになる想いをまだまだ重ねていくのであった。
噂自体はその後すぐに「いやなんか様子がおかしいぞ」という客観的意見からたち消えたのだが、僕はまだソワソワし続けていた。
僕とかっちゃんは中学3年の今も同じクラスでこれまでずっとほぼ同じクラスだった。対する瑠奈ちゃんは同じクラスになることもあれば離れることもあった。3年に上がってからは残念ながら別クラスになっていて、学校での接点はあまりない。
しかし僕は彼女の一番弟子だ。4歳からずっと体作りと称した修行をつけてもらっているので、同い年でおかしいかもしれないけれど彼女は僕の師匠なのである。
「いつになったら瑠奈ちゃんみたいな動きができるようになるかな……」
驚くべきことに、彼女の肉体強度と身体能力は人智を超えていた。彼女の個性が身体強化などそういうものかと思ったがそういうことも無く。純粋に彼女の肉体が優れているだけだった。彼女は同じように鍛えれば個性などなくともこうなると言っていた。その言葉を信じて放課後の修行と自宅での自主トレを続けている。
その修行にかっちゃんが加わったのは少し後で、僕たちは2人とも彼女の弟子なのである。物覚えもよく体の使い方なんかはすぐに僕を追い抜いてセンスを見せつけてきた彼は、その頃から事ある毎に「一番弟子の称号さっさと寄越せや」と突っかかってくる。順番なので譲れるものでも無いし譲る気もないので毎回拒否しているが、その件を抜いてもかっちゃんが僕を敵愾心むき出しで見てくる理由を僕は知っていた。と言うよりも見ていたら気付いたと言うだけである。
僕が瑠奈ちゃんに褒められたり励まされたりしているとき、普通にお喋りをしている時、手当をしてもらっている時。彼女の顔をじっと見つめては僕の方を睨みつけてくるのだ。そうして次に自分が同じことをしてもらった時には限られた人にしか見せないはにかむような柔い笑みを見せて喜んだあと僕にドヤ顔をする。最初訳が分からなかったが、きっとあれが不器用な彼なりのマウントで、自分は彼女のことを好いているのだと彼女本人や他人に向けて必死にアピールしているのだ。
それに対して僕はと言うと、そんな様子を見せられては、まだ恋とも呼べないような淡い淡い気持ちを育てる前に諦めざるを得なかった。だって僕は何一つかなわない相手が、結果論ではあるが10年以上も報われることなく想い続けている相手だ。ライバルがかっちゃんなこともあるけれど、何より彼女自身が手強過ぎる女の子だった。
ある時ボソッと呟いていたかっちゃんの独り言が思い出される。
「あいつ、あんだけ強くて誰が対等に話してやれるんだ。俺が諦めたら本当に独りになっちまうんじゃねーの。諦めてやる気なんかこれっぽっちもねェけど」
きっと異性として好きになれた女の子だった。でもそれ以上にたくさんのものをくれる彼女に好き以外の気持ちの方が大きくなっていったし、僕はきっとそう望まなくとも彼女を独りにしてしまう。
だから言葉にはしないけれど、かっちゃんにしか任せられない。だから頑張って欲しいし応援しているのだ。
「かっちゃんに勉強教えて貰ってるの」
瑠奈ちゃんにそう教えてもらった時に、やっぱり彼女に何かを与えるのは彼なのだと確信した。
彼女に物理的に尻に敷かれながら腕立て伏せをしているかっちゃんを見て内心で応援する。後々暴露した際に「オタク特有のクソ重感情をあらゆる形で俺と瑠奈に向けんのやめろや!! 重ェ!」とキレられることになる想いをまだまだ重ねていくのであった。