原作軸 入試前
そろそろマフラーが必要かもなと思い始めた時期。自分の体も今仕上げうる限りの状態にしつつ、弟子2人の方も無理のない範囲で体を仕上げに持って行き始めていた。
いずくんに至っては無個性を鑑みて、燃の修行までを解禁した。精孔を開いたとしても耐えうる体に鍛えたものの、念能力をこの世界に広める気は無い。無数の個性溢れるこの世界で念能力など広めてみろ、前世以上の無法地帯が待ち受けているだけだ。
いずくんは己が無意識下で垂れ流す微々たるオーラを制御して強化(している意識はないだろうけれど)させる修行をさせて身についたところだった。
対するかっちゃんはもはや燃の修行よりひたすらあらゆるパターンを想定しての対人戦闘をやらせていた。本当なら私以外にも相手を作りたかったがそんなツテはこの世界にないので私で我慢してもらっている。幸い毎回楽しそうに戦ってくれているのでいいのだが、経験値としてはあまり宜しくない。
「かっちゃんは私以外の人と手合わせ出来たらもっといいんだけど……ごめんね。いずくんはこのまま自分の体のコントロールと体作りで仕上げてこうね」
「ウン!!」
「お前以外なんていらねーわ」
「私もバリエーションは気にしてるけど同一人物ばっかりだと経験値にならんのよ」
ケッとそっぽを向いてクールダウンと帰り支度を始めたかっちゃんに対して、いずくんはソワソワしている。
「どうしたの」
「えっあっいや! ……やっぱり見てくれる!?」
「いいよ」
ソワッソワッと落ち着きなかったいずくんが離れた木の横へ並ぶ。念能力者の目には薄いオーラをきちんと纏って強化しているのが見える。右手のみにオーラを搾ったな。
ドゴォ! と盛大な破壊音と共に決して細くは無い木の幹が抉れて倒れていく。
「おお、コントロール上手くなったね」
「ほ、本当に無個性の僕がこんなこと出来るようになるなんて、感激で……! ほんとにこれ個性じゃないの!?」
「違うよ。ラッキーで授かったものじゃなく、正真正銘いずくんが努力して獲得した力だよ。系統的にパワーは私以上だね」
「ほっ本当かあ……!」
轟音に驚いたのか急いでやってきたかっちゃんがこの惨状を目の当たりにして固まったあとキッといずくんを睨んだ。
「おっせーわ! やっと木ィ一本倒して満足してんじゃねー!」
「そ、そうだよね! 瑠奈ちゃんに師事してるんだもんね……!」
「あと私有地じゃねンだから派手に壊してんじゃねーよ! 加減しろバカが!」
「うっごめん」
修行は原則個性の使用を禁じられているのでどこでもできるものの、色々と見られたくないことがあって森の中で鍛えていた。それも勝手に入り込んでいるのでかっちゃんの言う通りなのであった。私が止めるべきだったな。
そう考えながら彼らの会話を聞いていた。
2人とも、才能が見えている。念を念として習得させていないにも関わらずこの成長速度なのだ。しかも私程度の中途半端な師を仰いでいるのに。
この世界でなければ。いやこの世界にも念があれば。念があれば、私程度の中途半端に師事することもなかっただろうから残念に思うと同時に寂しさを覚える。
「2人とも」
声をかければ二人共がピタリと騒ぐのをやめてこちらを向いた。躾されたような素直さを中学生になってもなお見せてくれる。
「入試まであと少しね。実技面は私から見て2人とも誰かに劣ることはないから自信もって。まあ勉強は2人の方が成績いいし、不安はないでしょ」
「俺はお前の数学と社会が懸念点だわ」
「帰ったら入試対策よろしくね」
「おー」
「いずくん」
「なあに?」
かっちゃんに帰ったあとのお願いをしてからいずくんを見る。半年ほど前から度々いずくんのオーラとは違う何かを感じるのだが、今はなりを潜めているようだ。
「半年くらい前からかな、急にオーラの総量が増してる気がしてたの。何か変調や心当たりは?」
「エ"ッ……ア、ウン。トクニナイヨッ」
途端に汗を流しながら視線を逸らす彼に思わず私とかっちゃんの目と目が合う。互いに「コイツ嘘が下手すぎる」と半眼になっていた。
「……そう。ならいいんだけど。体調管理ちゃんとね」
「ウ、ウン!」
「オラ、帰っぞ」
私もかっちゃんも鈍感でも愚かでも無いので気付くことは気付いているが、本人が言いたくないなら無理に聞くことはしない分別もあるのだ。
悪いことは出来ないいずくんのやることだからというのも大きいが。
いずくんに至っては無個性を鑑みて、燃の修行までを解禁した。精孔を開いたとしても耐えうる体に鍛えたものの、念能力をこの世界に広める気は無い。無数の個性溢れるこの世界で念能力など広めてみろ、前世以上の無法地帯が待ち受けているだけだ。
いずくんは己が無意識下で垂れ流す微々たるオーラを制御して強化(している意識はないだろうけれど)させる修行をさせて身についたところだった。
対するかっちゃんはもはや燃の修行よりひたすらあらゆるパターンを想定しての対人戦闘をやらせていた。本当なら私以外にも相手を作りたかったがそんなツテはこの世界にないので私で我慢してもらっている。幸い毎回楽しそうに戦ってくれているのでいいのだが、経験値としてはあまり宜しくない。
「かっちゃんは私以外の人と手合わせ出来たらもっといいんだけど……ごめんね。いずくんはこのまま自分の体のコントロールと体作りで仕上げてこうね」
「ウン!!」
「お前以外なんていらねーわ」
「私もバリエーションは気にしてるけど同一人物ばっかりだと経験値にならんのよ」
ケッとそっぽを向いてクールダウンと帰り支度を始めたかっちゃんに対して、いずくんはソワソワしている。
「どうしたの」
「えっあっいや! ……やっぱり見てくれる!?」
「いいよ」
ソワッソワッと落ち着きなかったいずくんが離れた木の横へ並ぶ。念能力者の目には薄いオーラをきちんと纏って強化しているのが見える。右手のみにオーラを搾ったな。
ドゴォ! と盛大な破壊音と共に決して細くは無い木の幹が抉れて倒れていく。
「おお、コントロール上手くなったね」
「ほ、本当に無個性の僕がこんなこと出来るようになるなんて、感激で……! ほんとにこれ個性じゃないの!?」
「違うよ。ラッキーで授かったものじゃなく、正真正銘いずくんが努力して獲得した力だよ。系統的にパワーは私以上だね」
「ほっ本当かあ……!」
轟音に驚いたのか急いでやってきたかっちゃんがこの惨状を目の当たりにして固まったあとキッといずくんを睨んだ。
「おっせーわ! やっと木ィ一本倒して満足してんじゃねー!」
「そ、そうだよね! 瑠奈ちゃんに師事してるんだもんね……!」
「あと私有地じゃねンだから派手に壊してんじゃねーよ! 加減しろバカが!」
「うっごめん」
修行は原則個性の使用を禁じられているのでどこでもできるものの、色々と見られたくないことがあって森の中で鍛えていた。それも勝手に入り込んでいるのでかっちゃんの言う通りなのであった。私が止めるべきだったな。
そう考えながら彼らの会話を聞いていた。
2人とも、才能が見えている。念を念として習得させていないにも関わらずこの成長速度なのだ。しかも私程度の中途半端な師を仰いでいるのに。
この世界でなければ。いやこの世界にも念があれば。念があれば、私程度の中途半端に師事することもなかっただろうから残念に思うと同時に寂しさを覚える。
「2人とも」
声をかければ二人共がピタリと騒ぐのをやめてこちらを向いた。躾されたような素直さを中学生になってもなお見せてくれる。
「入試まであと少しね。実技面は私から見て2人とも誰かに劣ることはないから自信もって。まあ勉強は2人の方が成績いいし、不安はないでしょ」
「俺はお前の数学と社会が懸念点だわ」
「帰ったら入試対策よろしくね」
「おー」
「いずくん」
「なあに?」
かっちゃんに帰ったあとのお願いをしてからいずくんを見る。半年ほど前から度々いずくんのオーラとは違う何かを感じるのだが、今はなりを潜めているようだ。
「半年くらい前からかな、急にオーラの総量が増してる気がしてたの。何か変調や心当たりは?」
「エ"ッ……ア、ウン。トクニナイヨッ」
途端に汗を流しながら視線を逸らす彼に思わず私とかっちゃんの目と目が合う。互いに「コイツ嘘が下手すぎる」と半眼になっていた。
「……そう。ならいいんだけど。体調管理ちゃんとね」
「ウ、ウン!」
「オラ、帰っぞ」
私もかっちゃんも鈍感でも愚かでも無いので気付くことは気付いているが、本人が言いたくないなら無理に聞くことはしない分別もあるのだ。
悪いことは出来ないいずくんのやることだからというのも大きいが。