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「ちなみに除籍はウソな」
総合順位をぱっぱと開示して見せた相澤先生は事も無に嘘だという。阿鼻叫喚の反応を見せる周囲に混じって瑠奈はほっと胸を撫で下ろす。流石に運動系個性じゃない私がどこまで食らいつけるかと不安だったのだ。
結果、6位と上位に名前を見つけて編み出したこの方法が通用することを知った。
個性の治癒と麻酔の併用で、痛みを無くした上で意図的に肉体の限界を突破させて最大値以上の結果を出す。その代償に壊れた肉体は治癒で即時回復させる。私の個性が尽きない限り仮初の永久機関として動き続けるのだ。
「でもこのままじゃダメなのだけれど」
初日はこれで終了だと言い渡されて着替えたあとぱらぱらと教室へともどる人に紛れてひとり歩く道すがら、小さい声で呟く。
壊して動くだけではいつか限界が来る。体力も個性も無限では無いのだ。
「やっぱ鍛え直すか……」
「何をだよ」
「え?」
意外な近距離で問いかけが聞こえたため、驚きながら振り返ると薄い金髪を逆立てた目付きの悪い男子生徒、今朝一番に出会った人が立っていた。
「だから何を鍛え直すんだっつってんだよ」
「……ああ、身体をね。まだまだ鍛え方が足りなかったもので」
それを聞いた彼は少し驚いたような顔を見せたあとニッと歯を見せて笑った。
「お前、治癒と麻酔だろ。自分に使っとったんか」
「あら大当たり。よくわかったわね」
「じゃねーとまともに使ってんじゃ入試すら突破できねぇだろ。なら途中のアレは何だ」
「……? どれ?」
「変な息遣いになっとったヤツ」
今度こそ本当に驚いて改めて彼の目を見た。あれに気づいて話しかけてきたのだ、彼は。個性を使用する中で混ぜ込んだ個性では無いアレに。
「! 見てたの」
「見てねェわ!」
「え?」
「あ"!? ……チッ! 見とったわ、ンでなんだアレ」
「(舌打ち……。)あれは残念だけど個性じゃないの。自損する使い方をせずに、鍛えた力だけでどこまでやれるのかを途中に混ぜ込んで確認していただけなの」
「……握力は」
「あっ、あれは違うの、握力は失敗したの」
カッと頬が熱を持つ。あの時握力も素でどの程度やれるか見ようとしたら思いのほか貧弱だったので自分でもドン引きしていたので、指摘を受けてまた見られていたのかと恥ずかしくなった。あの後2度目できちんと成果は塗り替えたのに、そこまで見られていたなんて。
「そーかよ」
「ねぇ、貴方名前は?」
赤くなった顔をしっかり見てから、確認は満足したのかさっさと戻ろうとした彼を慌てて引き止める。彼の個性は爆破、もしくはそれに準ずるものであったはず。ならば近いうちに世話になるかもしれない。言い方を変えれば利用させて貰うかもしれない。
「人に聞くならテメーから名乗れや」
「月城瑠奈よ。貴方の個性も知りたいわ」
「……爆豪勝己。個性は見てたろ、爆破だ」
「やっぱり素敵」
役に立ちそうな個性で。
しかし今の受け答えだけで素直に頼み事を聞いてくれるような人ではないことも理解した。アプローチの仕方を考えなければ。
ニコ、と陰りのない笑顔で答えた私を見てそのままさっさと先を行く爆豪の背を見ながら、さてどうやって協力してもらおうかと頭を捻りながら教室へ戻った。
教室に戻るとカリキュラムなどの要項や説明書などが置いてあり、家で目を通すことにしてそのまま鞄にしまい込んだ。
わざわざ一人暮らしのために選んだ家が学校から近いこともあり、急ぐ必要は無いものの鍛え直すと決めたので善は急げと今日から始める為にクラスメイトに声をかけ、教室を出て足早に帰路に着く。
十数年の間計画を立て、準備を重ねてきたことをやっと実行に移す段階に来たのだ。内容が復讐という過激かつ後暗いことであろうと、彼女の中にその暗さは一片たりとも存在していなかった。
「私の明るい未来のために前向きに復讐していきましょうね」
総合順位をぱっぱと開示して見せた相澤先生は事も無に嘘だという。阿鼻叫喚の反応を見せる周囲に混じって瑠奈はほっと胸を撫で下ろす。流石に運動系個性じゃない私がどこまで食らいつけるかと不安だったのだ。
結果、6位と上位に名前を見つけて編み出したこの方法が通用することを知った。
個性の治癒と麻酔の併用で、痛みを無くした上で意図的に肉体の限界を突破させて最大値以上の結果を出す。その代償に壊れた肉体は治癒で即時回復させる。私の個性が尽きない限り仮初の永久機関として動き続けるのだ。
「でもこのままじゃダメなのだけれど」
初日はこれで終了だと言い渡されて着替えたあとぱらぱらと教室へともどる人に紛れてひとり歩く道すがら、小さい声で呟く。
壊して動くだけではいつか限界が来る。体力も個性も無限では無いのだ。
「やっぱ鍛え直すか……」
「何をだよ」
「え?」
意外な近距離で問いかけが聞こえたため、驚きながら振り返ると薄い金髪を逆立てた目付きの悪い男子生徒、今朝一番に出会った人が立っていた。
「だから何を鍛え直すんだっつってんだよ」
「……ああ、身体をね。まだまだ鍛え方が足りなかったもので」
それを聞いた彼は少し驚いたような顔を見せたあとニッと歯を見せて笑った。
「お前、治癒と麻酔だろ。自分に使っとったんか」
「あら大当たり。よくわかったわね」
「じゃねーとまともに使ってんじゃ入試すら突破できねぇだろ。なら途中のアレは何だ」
「……? どれ?」
「変な息遣いになっとったヤツ」
今度こそ本当に驚いて改めて彼の目を見た。あれに気づいて話しかけてきたのだ、彼は。個性を使用する中で混ぜ込んだ個性では無いアレに。
「! 見てたの」
「見てねェわ!」
「え?」
「あ"!? ……チッ! 見とったわ、ンでなんだアレ」
「(舌打ち……。)あれは残念だけど個性じゃないの。自損する使い方をせずに、鍛えた力だけでどこまでやれるのかを途中に混ぜ込んで確認していただけなの」
「……握力は」
「あっ、あれは違うの、握力は失敗したの」
カッと頬が熱を持つ。あの時握力も素でどの程度やれるか見ようとしたら思いのほか貧弱だったので自分でもドン引きしていたので、指摘を受けてまた見られていたのかと恥ずかしくなった。あの後2度目できちんと成果は塗り替えたのに、そこまで見られていたなんて。
「そーかよ」
「ねぇ、貴方名前は?」
赤くなった顔をしっかり見てから、確認は満足したのかさっさと戻ろうとした彼を慌てて引き止める。彼の個性は爆破、もしくはそれに準ずるものであったはず。ならば近いうちに世話になるかもしれない。言い方を変えれば利用させて貰うかもしれない。
「人に聞くならテメーから名乗れや」
「月城瑠奈よ。貴方の個性も知りたいわ」
「……爆豪勝己。個性は見てたろ、爆破だ」
「やっぱり素敵」
役に立ちそうな個性で。
しかし今の受け答えだけで素直に頼み事を聞いてくれるような人ではないことも理解した。アプローチの仕方を考えなければ。
ニコ、と陰りのない笑顔で答えた私を見てそのままさっさと先を行く爆豪の背を見ながら、さてどうやって協力してもらおうかと頭を捻りながら教室へ戻った。
教室に戻るとカリキュラムなどの要項や説明書などが置いてあり、家で目を通すことにしてそのまま鞄にしまい込んだ。
わざわざ一人暮らしのために選んだ家が学校から近いこともあり、急ぐ必要は無いものの鍛え直すと決めたので善は急げと今日から始める為にクラスメイトに声をかけ、教室を出て足早に帰路に着く。
十数年の間計画を立て、準備を重ねてきたことをやっと実行に移す段階に来たのだ。内容が復讐という過激かつ後暗いことであろうと、彼女の中にその暗さは一片たりとも存在していなかった。
「私の明るい未来のために前向きに復讐していきましょうね」