10
ついに石の殻を破り動ける体を取り戻した俺は、いの一番に杠の元へ走った。
楠の枝や葉に守られて割れることもなくその姿を留めていた彼女を前に膝をつく。数百年、もしくは数千年の感謝の念と安堵が押し寄せてきたのだ。
「俺は、俺は……! お前のおかげで生きていられたんだ……!」
数千年越しの思いの丈を石像に向けて零したとき、その楠の幹に「川下れデカブツ」と記名すらないメッセージを見つけた。しかし俺にはこれだけで伝わる。
その指示に従ってしばらく川を下ると、開けた場所に最早別荘並なログハウス風ツリーハウスが拵えられ、そこに皮の服を着た千空が立っていた。
「う、うおぉぉ! 千空!! 生きてたのかーっ!」
「素っ裸同然で近寄んな! 殺すぞ!」
感動の再会だったがどうやら話を聞くに、半年以上働いて命をつないできた千空にとってはそんなこと よりも人手として一秒でも早く働いてほしい様子だった。
「わかった!! 俺は難しいことはわからん! だから考えることはお前に任せる!」
「おー」
「その代わり体を使うことは俺に任せろ!」
「……な。こういう奴なんだよ」
千空が俺ではない誰かに向かって話しかけている。どういうことだ? 俺ら二人以外にも生還者が? と考えていると、千空のすぐ後ろに先ほどまで気が付かなかったが小柄な女性がひっそりと立っていた。
「ほんとだねぇ、こうも裏とか嘘とかないと最早嘘くさく見えすらしないなんて……」
「言ったろ。こいつは頭が雑な分単純に出来てんだ」
「ああ! 俺は雑頭の大木大樹だ!!」
「その形容詞受け入れてんだすごいなきみ」
「こいつは俺より一年も前に起き出してサバイバルしてた女だ」
「センクーくんより前に起きてた瑠奈です〜」
「ああ! よろしく!!」
「声でかいな〜」
「こう見えてお前以上にタフだし、この家作ったのも98%は瑠奈だ」
「なんと!!?」
ゆらっと存在感が増したように見えた後話し出した彼女は、華奢で杠よりも一回り以上小さく見えた。サバイバルに必要そうな筋肉どころか運動さえ苦手そうなのに凄いなと感心していたら、千空によってこの家までほぼ彼女が作ったと聞いてたまげた。
「にしてもその絶っつったか? 便利すぎんだろ」
「ね。大樹くん、私がいるのに気付かなかったでしょ?」
「まったく!!!!!」
「生命エネルギーを意図的に体から出さないようにするから気配が分からなくなるんだよ。あと傷の治りも早くなる」
「チートだろ。気配とか元からわかんねぇから結果だけ見てると面白すぎるわ」
「(千空と難しい話ができる人種だ!!!)」
良くはわからないが、あの千空と難しい話ができる年齢の近い女性だということはわかった。そして、石化以前より彼が楽しそうにしていることも。
「瑠奈さんは千空と科学の話ができるタイプなんだな!」
「……してたか? 科学の話」
「いや、うーん……生体科学の話ならしてたかも……?」
あの千空が! 恋愛脳は面倒だとばっさり切り捨てては科学に心酔していた千空が! どちらかを蔑ろにすることなく科学も恋も楽しめている!!
「うおぉぉ……感動だぁぁ……」
「わァ、泣いちゃった」
「ちいかわ出てんぞ。……こいつはまあ、なんだ。情緒も元気なんだよ」
誰よりも鈍いと思われた大木大樹が一目で見抜いたこの関係性を、さらに「なるほど、千空の片思いなんだな!! 同じ身として応援するぞ!!」と正確に見抜いてきたことで千空が「オメーはッ!(片思いじゃねーだろ!)」と一層拗らせる要因となるのもすぐの話であった。
楠の枝や葉に守られて割れることもなくその姿を留めていた彼女を前に膝をつく。数百年、もしくは数千年の感謝の念と安堵が押し寄せてきたのだ。
「俺は、俺は……! お前のおかげで生きていられたんだ……!」
数千年越しの思いの丈を石像に向けて零したとき、その楠の幹に「川下れデカブツ」と記名すらないメッセージを見つけた。しかし俺にはこれだけで伝わる。
その指示に従ってしばらく川を下ると、開けた場所に最早別荘並なログハウス風ツリーハウスが拵えられ、そこに皮の服を着た千空が立っていた。
「う、うおぉぉ! 千空!! 生きてたのかーっ!」
「素っ裸同然で近寄んな! 殺すぞ!」
感動の再会だったがどうやら話を聞くに、半年以上働いて命をつないできた千空にとっては
「わかった!! 俺は難しいことはわからん! だから考えることはお前に任せる!」
「おー」
「その代わり体を使うことは俺に任せろ!」
「……な。こういう奴なんだよ」
千空が俺ではない誰かに向かって話しかけている。どういうことだ? 俺ら二人以外にも生還者が? と考えていると、千空のすぐ後ろに先ほどまで気が付かなかったが小柄な女性がひっそりと立っていた。
「ほんとだねぇ、こうも裏とか嘘とかないと最早嘘くさく見えすらしないなんて……」
「言ったろ。こいつは頭が雑な分単純に出来てんだ」
「ああ! 俺は雑頭の大木大樹だ!!」
「その形容詞受け入れてんだすごいなきみ」
「こいつは俺より一年も前に起き出してサバイバルしてた女だ」
「センクーくんより前に起きてた瑠奈です〜」
「ああ! よろしく!!」
「声でかいな〜」
「こう見えてお前以上にタフだし、この家作ったのも98%は瑠奈だ」
「なんと!!?」
ゆらっと存在感が増したように見えた後話し出した彼女は、華奢で杠よりも一回り以上小さく見えた。サバイバルに必要そうな筋肉どころか運動さえ苦手そうなのに凄いなと感心していたら、千空によってこの家までほぼ彼女が作ったと聞いてたまげた。
「にしてもその絶っつったか? 便利すぎんだろ」
「ね。大樹くん、私がいるのに気付かなかったでしょ?」
「まったく!!!!!」
「生命エネルギーを意図的に体から出さないようにするから気配が分からなくなるんだよ。あと傷の治りも早くなる」
「チートだろ。気配とか元からわかんねぇから結果だけ見てると面白すぎるわ」
「(千空と難しい話ができる人種だ!!!)」
良くはわからないが、あの千空と難しい話ができる年齢の近い女性だということはわかった。そして、石化以前より彼が楽しそうにしていることも。
「瑠奈さんは千空と科学の話ができるタイプなんだな!」
「……してたか? 科学の話」
「いや、うーん……生体科学の話ならしてたかも……?」
あの千空が! 恋愛脳は面倒だとばっさり切り捨てては科学に心酔していた千空が! どちらかを蔑ろにすることなく科学も恋も楽しめている!!
「うおぉぉ……感動だぁぁ……」
「わァ、泣いちゃった」
「ちいかわ出てんぞ。……こいつはまあ、なんだ。情緒も元気なんだよ」
誰よりも鈍いと思われた大木大樹が一目で見抜いたこの関係性を、さらに「なるほど、千空の片思いなんだな!! 同じ身として応援するぞ!!」と正確に見抜いてきたことで千空が「オメーはッ!(片思いじゃねーだろ!)」と一層拗らせる要因となるのもすぐの話であった。