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貝殻やら大型動物の肉やら色々と調達するために3日ほど拠点を空けて戻ってきたら、明らかに普通じゃない男が一人増えていた。
たしかユズリハという女の子を復活させるとかいう話は聞いていたが、それが何故かライオンの皮(!?)を身にまとった大男にすり変わっている。……髪が長かったが女の子ではなかったはず。たしか。
その男が私の円の内側に入った時点で念能力者にはわかる力を有していた。つまり、オーラをまとっていた。
その時点でまず拠点で二人に合流する考えとかさばる大きな荷物は捨て、絶で己のオーラや気配をすべて消し去り己の痕跡を消す方向に舵を切った。この世界にまさかオーラを発現させている人間が自分以外にいるとは思わなかったので、久々に感じる空気にピリピリしていた。この判断の仕方こそ、私があの世界であの歳まで生き続けていられた理由でもあった。

「とりあえず……てんはできてる、けど円を出してるわけでもないし、纏自体そこまで熟達してるわけでもない……」

纏は念能力者が最初に必ず習得する技である。というよりも纏ができないとオーラを体に留めておけないのでじわじわ死んでいく。つまり必修技であり、且つできないものはいない。纏ができないとお話にならないのである。
まずもって、念能力者のいうオーラとは生命エネルギーである。つまり生きるための力であり、命そのものであるそれを知覚・制御することで非能力者以上の力を発揮するのが念能力者である。オーラの発現は目に見えるものではなく、能力者も目にオーラを集めて視覚能力を強化するぎょうと呼ばれる技を使わなければ見えることはない。
だからこそ、凝をしなければ見えない念でできた文字を使って非能力者と念能力者とを選別する者たちがいるほど、能力者の間ではこういった必修技能は共通認識である。

「ということを鑑みて、”あの世界”の念能力者では、ない。けどオーラは発現してるからきっと強者ではあるはず」

ごく稀に修行もなしに念を発現する者や、念を知らずに体を鍛えるうちにオーラを発するようになり、纏までは何となくで習得する者がいる。才能としか言えない、念に対するアドバンテージを持つものたち。言わずもがな私自身はそんな才能など「念を扱えた」という向き不向きのうち向いていたと言うだけの人間である。
それでも二千年の時間を念の修行に充てるとかいう時間の使い方をした、努力した私の敵ではないのだけれど。
逆にいえば、石化前であっても非能力者が大半のこの世界で、彼の力は大きすぎる力であるはずだ。

「私一人だったらぶちのめして分からせて終わり、わからなければ始末してしまえばいいけど……」

すでに千空たちと出会ってしまっている以上、考えなしの行動はできない。
どうするかな、と悩んでいる間に問題の男はどこかへ向かい、石像を持った大樹君と千空が拠点を荒らしに荒らして走り出した。拠点を離れる判断をしたらしい。おっいいぞ。
しばらく様子を見て拠点が視認できなくなった頃、絶は解かないまま2人へと寄って行った。

「急いで離れるぞ! 瑠奈が居ねぇのが手痛いが、アイツは、……強い女だ、今は考えんな!」
「千空……!!! おう!!」
「石像持とうか?」
「いや大丈夫だ!! 杠は俺が責任をもって運ぶ!」
「……、!?」
「酸素行ってなくて頭回ってないの草」
「ハァッ、そういう、わけじゃ、ハアッ、ねぇ……!」
「体力ないだけだったか」

石像より千空を運んだ方がいいまであるかも。
なんだかよくはわからないけれどあの男に危機感を覚えてくれたのは私としても僥倖で、走りながらこけつまろびつしている千空の手を引くことにした。

「なんか色々共有したいんだけど、目的地に着いてからがいいね?」
「ハァッ、は、そりゃ、そ……ハァ、おありがて、」
「目的地わかんないけどね!」

こらえきれない笑いを隠す気もなく出しながら、もう少しの間だけ走ることで死にそうな千空を楽しんでから、彼を抱えて先導してもらおうと考える瑠奈であった。

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