17
運悪く瑠奈がいない間にライオンのハーレムに襲われた俺たちは、小川杠に使うための復活液を戦力足り得る人物――高校生にして人類最強の名を冠する獅子王司に急遽使用することに決めた。
彼は期待通りの戦闘力を発揮してくれた。その割に穏やかに対応していたが、彼の武力はこの原始世界において脅威である。彼に力に訴えかけられたとき、俺はもちろん耐久力全振りの大樹も対抗はできない。
デカブツがうっかり漏洩した復活液の件でそれを危惧した結果、俺たちは逃げの一択を取った。
最後の砦人して最大戦力の瑠奈はまだ拠点に戻ってきていない。帰ってきたとして、そして彼と敵対したとして、もちろん人外の強さを誇っているし、熊と戦って余裕で帰ってきている実績だってある。しかし。
「(あいつが本当に力で司に勝てるのかなんて、俺には判断が付かねぇ。万が一武力で届かない可能性があるなら俺は、)」
もし司と敵対する場合、どうあがいてもこちら側最大戦力である彼女に頼るしかない。ないのだが、どうも気乗りしない。できれば相対してほしくもない。
合理的じゃない、と思ったとき頭に「寝た女に絆されたのか」という言葉がよぎる。冗談じゃねぇまだ寝てねぇ。
まだそうと確定してないが、やっぱ恋愛脳は厄介すぎる。こんなところで彼女に対する執着心を自覚させられたところで、いつからいたのか、瑠奈本人がいつの間にか合流していた。
走りながらで話ができない俺の手をしっかり握って先導する彼女に、とりあえずその辺で止まるように伝える。
「とりあえず、ハァ、復活……」
「え? 完全な安全地帯でやった方が良くない?」
「こいつらには選択肢がある。選ばせるべきだ」
「……なるほど?」
分かったのかわかってはいないのか。その言葉を聞いて瑠奈は止まってくれた。
デカブツの担いでいた石像を下ろして復活液をかける。しばらくの反応時間ののち、杠は崩れ落ちるように殻の中から復活した。
感動の再会もそこそこに、彼らに選択肢を提示する。どこか遠くへ逃げるか、司の殺人を止めるべく戦うか。
ちらりと見た瑠奈はどの言葉にも動揺していないようだった。ひとまず内心でホッと息をつく。
「俺と杠を見損なうな! 即答だ!! 共に戦うに決まってるだろー!!」
熱く答えるデカブツと、訳も分かっていないだろうにそのそばでコクコクと同意をあらわにする小川杠。そしてそれを見て柔い目をする瑠奈。
そして何かを言う前に瑠奈がその言葉を遮って「来るよ。すごいスピードだ」と司の接近を告げた。と同時に茂みから司が現れた。
彼は接近しながら持論を語る。新世界のために人類の選定をしているのだと。その手には砕かれた石像の頭部分がかけらとなってついていた。道中でも石像を粉砕しながら来たのだろう。
何故か司の存在と俺らの警戒を知っていた瑠奈に目を向けようとして一瞬その存在を見失った。なるほど、これが気配を絶つ絶 とかいう技術か。
「千空、もしもの時は杠を頼む……!」
は? と思う間もなく雑頭が司へと突っ込んでいく。ライオンを素手で殺る男だとわかっていてなお。
咄嗟に虎の子のクロスボウを発射するも、動きを止めるどころかまさか素手でつかみ取ったうえで地面に叩きつけられた。そこから体のひねりだけで大樹を吹き飛ばすほどのけりを放つ。
大樹も直撃は免れたものの出血している。今は瑠奈も気配すらわからないほど存在を消して潜んでいるらしい。その判断が勝てないゆえなのかはわからないが、正直ありがたかった。
「(もともと攻撃は苦手な奴とはいえ大樹も一撃で負傷する、杠は蘇生してしまっている、瑠奈は自己判断で姿を消している……どうする)」
俺が取れる手はそもそも残っているか?
そう考えて汗が頬を伝った。
彼は期待通りの戦闘力を発揮してくれた。その割に穏やかに対応していたが、彼の武力はこの原始世界において脅威である。彼に力に訴えかけられたとき、俺はもちろん耐久力全振りの大樹も対抗はできない。
デカブツがうっかり漏洩した復活液の件でそれを危惧した結果、俺たちは逃げの一択を取った。
最後の砦人して最大戦力の瑠奈はまだ拠点に戻ってきていない。帰ってきたとして、そして彼と敵対したとして、もちろん人外の強さを誇っているし、熊と戦って余裕で帰ってきている実績だってある。しかし。
「(あいつが本当に力で司に勝てるのかなんて、俺には判断が付かねぇ。万が一武力で届かない可能性があるなら俺は、)」
もし司と敵対する場合、どうあがいてもこちら側最大戦力である彼女に頼るしかない。ないのだが、どうも気乗りしない。できれば相対してほしくもない。
合理的じゃない、と思ったとき頭に「寝た女に絆されたのか」という言葉がよぎる。冗談じゃねぇまだ寝てねぇ。
まだそうと確定してないが、やっぱ恋愛脳は厄介すぎる。こんなところで彼女に対する執着心を自覚させられたところで、いつからいたのか、瑠奈本人がいつの間にか合流していた。
走りながらで話ができない俺の手をしっかり握って先導する彼女に、とりあえずその辺で止まるように伝える。
「とりあえず、ハァ、復活……」
「え? 完全な安全地帯でやった方が良くない?」
「こいつらには選択肢がある。選ばせるべきだ」
「……なるほど?」
分かったのかわかってはいないのか。その言葉を聞いて瑠奈は止まってくれた。
デカブツの担いでいた石像を下ろして復活液をかける。しばらくの反応時間ののち、杠は崩れ落ちるように殻の中から復活した。
感動の再会もそこそこに、彼らに選択肢を提示する。どこか遠くへ逃げるか、司の殺人を止めるべく戦うか。
ちらりと見た瑠奈はどの言葉にも動揺していないようだった。ひとまず内心でホッと息をつく。
「俺と杠を見損なうな! 即答だ!! 共に戦うに決まってるだろー!!」
熱く答えるデカブツと、訳も分かっていないだろうにそのそばでコクコクと同意をあらわにする小川杠。そしてそれを見て柔い目をする瑠奈。
そして何かを言う前に瑠奈がその言葉を遮って「来るよ。すごいスピードだ」と司の接近を告げた。と同時に茂みから司が現れた。
彼は接近しながら持論を語る。新世界のために人類の選定をしているのだと。その手には砕かれた石像の頭部分がかけらとなってついていた。道中でも石像を粉砕しながら来たのだろう。
何故か司の存在と俺らの警戒を知っていた瑠奈に目を向けようとして一瞬その存在を見失った。なるほど、これが気配を絶つ
「千空、もしもの時は杠を頼む……!」
は? と思う間もなく雑頭が司へと突っ込んでいく。ライオンを素手で殺る男だとわかっていてなお。
咄嗟に虎の子のクロスボウを発射するも、動きを止めるどころかまさか素手でつかみ取ったうえで地面に叩きつけられた。そこから体のひねりだけで大樹を吹き飛ばすほどのけりを放つ。
大樹も直撃は免れたものの出血している。今は瑠奈も気配すらわからないほど存在を消して潜んでいるらしい。その判断が勝てないゆえなのかはわからないが、正直ありがたかった。
「(もともと攻撃は苦手な奴とはいえ大樹も一撃で負傷する、杠は蘇生してしまっている、瑠奈は自己判断で姿を消している……どうする)」
俺が取れる手はそもそも残っているか?
そう考えて汗が頬を伝った。