18
「俺の蹴りを受けて倒れなかった人間は初めてだ。でもそれ以前に、君は攻撃できなかったのではなく、する気がなかった。どうしてだ?」
司が本当にわからないというように大樹に向けて問う。その姿はある日の瑠奈と重なって見えた。
彼女もまた身体的に恵まれているデカブツが大型動物の狩りを一つもできないことに疑問を持ったことがあったのだ。いや現代人でできる奴の方が少ないだろうが。その本当に解らないという感じが何故かここで重なった。
「俺は人を殴らん! だが俺をいくら殴っても蹴っても構わん! その代わり石像を壊すのをやめろ司!!」
唐突なサンドバック宣言と人殺しは悪いことだという道徳の説得に、周囲の方の空気が止まった。瑠奈の「いやどの代わり???」という突っ込みさえ幻視した。ぜってぇ見えないとこで笑ってるだろあいつ。
デカブツの主張を整理した司も理解が追い付かなかったのか、何度も頭の中で反芻しているらしい。司も頭の回転が速く賢い部類だからこそ混乱しているのだろう。
「意味が分からない。何の取引にもなってない」
そりゃそうだ。デカブツは難しいことは考えられないが、善いこと・悪いことははっきり判断・主張できる根っからの善性の持ち主である。
「なら、復活したばかりのその子。杠を殺すと言ったら?」
だからこそそういう大樹には人質という考え方がど真ん中に突き刺さるのである。
そしてしばらくの間極限の選択肢にさらされ、全力で頭を回転させた、考えることが滅法苦手な大樹はぶっ倒れた。好機である。
「効いてやがったか。出血がひでぇ、何日か寝かしとくしかねぇな」
「……うん。仲間割れはよそう」
そうして形勢は司に有利に傾いたまま、彼はまた森の中へと去って行った。
「ったく、クロスボウの時速200q超えてんだぞ……」
「取ってたね、バシッて」
「ね。はい大樹君これ頭に貼り付けててね」
「おわぁ! どなただあ!?!?」
虎の子をいとも容易く完封されちょっとばかりへこんでいると、またしてもいつの間にか瑠奈がぬるっと戻ってきていた。
やはりこいつでさえ司は警戒してしかるべき相手、ってことか。
実際彼女は「この場に大樹君以上の戦力があると思われると良くなさそうだし隠れとくか」程度の判断であったのだが、執着やら虎の子が効かないと分かったショックやらでそこのところを正確に推し量れないでいた。
「改めて私は瑠奈。センクーと一緒に楽しく科学サバイバルしてる人だよ」
「科学サバイバル……?」
「この中で唯一司に対抗しうる、こっちの最高戦力であり俺の科学クラフトの理解者だ」
「千空君の!?」
「センクーの理解者って文言でめちゃくちゃ驚かれてて草」
「ああ! 千空の相棒で狩りもこなす、つよつよ女子だ!!」
「つ、つよつよ女子……!!」
「おい瑠奈デカブツに変な語彙刷り込むな」
「へへ」
「私一人ならともかく、三人がまともにやりあうのは現実的じゃないね」
「お前も一人で相対はすんな。だから一気に時代を駆け上がるぞ。199万8700年の文明をワープする!」
「!! スマホか!?」
「違う! 好きだなスマホ!」
瑠奈に目を向けると何やら考えているようだったが、目が合うと小さく頷いた。俺が何を欲して、どこへ向かいたいのかが掴めたらしい。ほんと助かりまくるぜ、この1を話せば10を理解してくれる相棒はよ。
「一時拠点を放棄、なるべく目的を悟られる前に現地入りして採集・調合、って感じかな」
「ああ。そうと決まればおら、起きやがれ! 食料かき集めてツリーハウスん中荒らして出てくぞ!」
司が本当にわからないというように大樹に向けて問う。その姿はある日の瑠奈と重なって見えた。
彼女もまた身体的に恵まれているデカブツが大型動物の狩りを一つもできないことに疑問を持ったことがあったのだ。いや現代人でできる奴の方が少ないだろうが。その本当に解らないという感じが何故かここで重なった。
「俺は人を殴らん! だが俺をいくら殴っても蹴っても構わん! その代わり石像を壊すのをやめろ司!!」
唐突なサンドバック宣言と人殺しは悪いことだという道徳の説得に、周囲の方の空気が止まった。瑠奈の「いやどの代わり???」という突っ込みさえ幻視した。ぜってぇ見えないとこで笑ってるだろあいつ。
デカブツの主張を整理した司も理解が追い付かなかったのか、何度も頭の中で反芻しているらしい。司も頭の回転が速く賢い部類だからこそ混乱しているのだろう。
「意味が分からない。何の取引にもなってない」
そりゃそうだ。デカブツは難しいことは考えられないが、善いこと・悪いことははっきり判断・主張できる根っからの善性の持ち主である。
「なら、復活したばかりのその子。杠を殺すと言ったら?」
だからこそそういう大樹には人質という考え方がど真ん中に突き刺さるのである。
そしてしばらくの間極限の選択肢にさらされ、全力で頭を回転させた、考えることが滅法苦手な大樹はぶっ倒れた。好機である。
「効いてやがったか。出血がひでぇ、何日か寝かしとくしかねぇな」
「……うん。仲間割れはよそう」
そうして形勢は司に有利に傾いたまま、彼はまた森の中へと去って行った。
「ったく、クロスボウの時速200q超えてんだぞ……」
「取ってたね、バシッて」
「ね。はい大樹君これ頭に貼り付けててね」
「おわぁ! どなただあ!?!?」
虎の子をいとも容易く完封されちょっとばかりへこんでいると、またしてもいつの間にか瑠奈がぬるっと戻ってきていた。
やはりこいつでさえ司は警戒してしかるべき相手、ってことか。
実際彼女は「この場に大樹君以上の戦力があると思われると良くなさそうだし隠れとくか」程度の判断であったのだが、執着やら虎の子が効かないと分かったショックやらでそこのところを正確に推し量れないでいた。
「改めて私は瑠奈。センクーと一緒に楽しく科学サバイバルしてる人だよ」
「科学サバイバル……?」
「この中で唯一司に対抗しうる、こっちの最高戦力であり俺の科学クラフトの理解者だ」
「千空君の!?」
「センクーの理解者って文言でめちゃくちゃ驚かれてて草」
「ああ! 千空の相棒で狩りもこなす、つよつよ女子だ!!」
「つ、つよつよ女子……!!」
「おい瑠奈デカブツに変な語彙刷り込むな」
「へへ」
「私一人ならともかく、三人がまともにやりあうのは現実的じゃないね」
「お前も一人で相対はすんな。だから一気に時代を駆け上がるぞ。199万8700年の文明をワープする!」
「!! スマホか!?」
「違う! 好きだなスマホ!」
瑠奈に目を向けると何やら考えているようだったが、目が合うと小さく頷いた。俺が何を欲して、どこへ向かいたいのかが掴めたらしい。ほんと助かりまくるぜ、この1を話せば10を理解してくれる相棒はよ。
「一時拠点を放棄、なるべく目的を悟られる前に現地入りして採集・調合、って感じかな」
「ああ。そうと決まればおら、起きやがれ! 食料かき集めてツリーハウスん中荒らして出てくぞ!」