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モニターで戦闘の様子を見守る。
最初こそ静かだった両チームも、爆豪の奇襲から突然激しい火蓋を切った。相方の飯田を見るに納得の上での作戦行動というわけではなさそうだけれど、それも飲み下して自分の役割を果たそうと動く彼は印象よりも意外と融通が利くし協調性もあるようだ。

「一方彼の方は……強さゆえのワンマン行動かしら」
「奇襲かよ! 漢らしくねぇ!!」
「あらそう? 勝利条件に貪欲で素敵じゃない」

ただ意思の疎通も困難なほどの我の強さは、邪魔でしかないのだけれど。
褒める口調とは裏腹に冷めた目でモニターを見ていると、すぐ隣から視線を感じたので目を向けてみると体が半分凍り付いた男子生徒がこちらを見ていた。少しだけ驚いて二度見してしまった。
目はあったものの特に言葉を交わすこともなくモニターに視線を戻された。なんだったのだろうか?

少し目を離したすきにヒーローペアの麗日が単独離脱して上階へ向かったようだった。音のない映像のみで見ている限り、爆豪対緑谷の戦闘は激しさを増しているものの緑谷はどこか別に意識を割いているようにも見えた。
そして爆豪は。

「爆豪少年ストップだ。殺す気か」

オールマイトの静止を振り切った個性使用と攻撃判断。彼は何をそこまで焦っているのか。
観戦しているクラスメイト達の囁く声でどうやら因縁のある幼馴染らしいことを耳に挟むも、もはや瑠奈の中から興味は失われていた。
戦いでも作戦でも、そこに私怨が入っていようが別に構いやしないけれど。私怨でも復讐心でも、そこに飲み込まれるようなら身の丈に合っていない感情でしかないのだから。

その後は純粋に高い戦闘センスと技術の観察をしていたら建物の大幅な破壊と引き換えにして無重力の麗日が核を確保してヒーローチームの辛勝となった。
熱い戦いではあったものの、ここまで甚大な被害をヒーロー側が与えているのは如何なものだろうか。
その後ハンソーロボに回収されていった緑谷を除いた3人が帰還して講評の時間となった。
そこでMVPとなったのは飯田であり、ここにいない緑谷含めて麗日、爆豪は推薦組片割れの八百万からの辛口コメントを頂いていた。

「飯田さん、相方の独断行動も飲み下して作戦行動に徹していましたし。最後の予想外の攻撃以外は冷静に相手を分析して最善を模索していましたよね。私も見習わないといけませんね」
「……くっ! まさかここまで評価してもらえるとは……!!」

八百万と私の両名に高評価を頂いた飯田はじぃんと感動を噛みしめているらしい。ルールを守れて礼儀正しい人は好きよ。規範意識高めで委員長気質な性格は少々私とは相性が悪いでしょうけれど。
対戦終了からずっとうつ向きがちで静かになってしまった爆豪は講評が耳に入っているのかさえ怪しい様子だ。

「そんなにヤワではないと思っていたのですけれど」
「……」
「……なにか?」
「いや」

小さい声で独り言ちたつもりが、隣で聞き取ったらしい半身凍った轟がまた無言で視線をくれたのを感じて今度は言葉をかけたが、それもそらされてしまった。何がそんなに引っかかっているのかしら。
そして迎えた第二戦。ヒーローチームB轟・障子と敵チームI尾白・葉隠は最初の推薦合格者の轟が参戦する回となり、私も逆チームに配属となった。

「尾白君! 瑠奈ちゃん! 私ちょっと本気出すわ!」
「あら」
「うん……」

前の対戦に触発されたのか、個性の透明人間を活かしてコスチュームをすべて取り払っていく葉隠に、ころころと笑いながら素敵ね、と受け入れる月城を前にして尾白は皇帝意外に返せるものはなかったようだった。
ビル内へ移動しながらそれぞれの個性を共有しあう。それぞれが”透明人間””尻尾””治癒・麻酔”という属性のわかりやすいものであるためとりあえず簡単な役割を決めて配置につく。もちろん私が前線で戦闘員になることはなかった。

「……あの半身くん、推薦合格者だったのね」

さあどう出るかと少しのワクワクを抑えながら待っていると、階下から尋常でない冷気が一瞬のうちに迫ってきた。

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