8
「足の皮剥がれちゃ満足に戦えねぇぞ」
ビル階下から凄まじい勢いで核もろとも凍結させたらしい。足をビルに凍り付けたことで油断している彼らは悠々と核の方へ向けて歩いてくる。そしてその中間には私が居る。
「まだ決着も付いていないのに勝った気でいるのは舐めているからかしら?」
何事もなくすたすたと核への道を阻むように歩いてきた私に驚きと不可解さとで足を止めた。もう一人相方が出てこないのは下で待機させているからか。本当に一人で十分だと思っているらしいので心が戦闘の楽しみと舐められている怒りで興奮してしまう。
「……避けたのか?」
「いいえ。悔しいですけれど私にそこまでの反射神経はありませんでした」
今後の課題ですね、と歩いて近づく私の素足を見て、轟はサッと顔を青ざめさせた。まさか靴ごと凍った足を省みず、膝から下の皮膚すら己で剥ぎ取って脱出することは無いだろうと? 私の覚悟はそんな事で躊躇する程度のものでは無い。相手は知らぬことでしょうけれど。
「足の皮、犠牲にして抜け出してきたのか……!」
「治癒と麻酔の使い方ってこうでしょう?」
ウフフ、と小さく笑いながら一気に近接戦に持ち込む。拳だろうと蹴りだろうと、きちんと体術を仕込まれているのか護身術程度の知識しかない私の攻撃は全て受け止められている。
しかしその顔は受けるたびに想像以上の痛みに驚き歪んでいる。それはそうでしょう、私は一撃一撃に己の体が耐えられる以上の力をかけて振るっている。ただ壊れる端から修復しているだけで。受け止める側も無傷では済まさせない。
これが、女として生まれ体躯にも恵まれず、成人男性に対して決定打を与えられない私が考え抜いた末に出した継戦能力を上げて物量で押す戦略である。もし私に別の個性や能力が宿ったとして、ここだけは根幹の考え方なので私が私である限り変わらない確信がある。
「……ッ即時、回復か!」
「ウフフ正解です。貴方も後で治して差し上げるので今は我慢してくださいな!」
「ぐ、この……っ!??」
グッと踏み込もうとした動作に合わせて、彼にかけていた個性を一部解除した。すると目の前で足が急に痛みを訴え、体重を支えきれなくなったのだろう彼が体勢を崩して崩れ落ちる。
何が起きたか分からず目を白黒させながら立ち上がろうとしている。
「麻酔で知覚できてなかっただけで骨が折れていますから、立てないと思います」
「な、」
「それにもう一人来てしまいました。ここまでですね」
小さく溜息を吐いてはためく袖を意識しながら腕を後ろへ引く。
「範囲制圧が己の専売特許だとでも?」
ヒーローチームのもう一人が室内に踏み込んだ時点で麻酔を最大出力で放出、その場の全員が昏倒したことを確認してから室内に充満した麻酔個性を収めていく。
その合間に確保テープを二人に巻いて敵チーム勝利のコールを聞き届け一息ついた。
氷の解除を頼むために轟の意識回復を優先させる。彼の意識が戻ったところですぐに手足の治癒を施していく。
「氷個性の解除をお願いできます?」
「……ああ」
轟は身体の動きを確かめたあと、ぐっと奥歯を噛みしめながら左手で熱を操り溶かしていく。その様子を見て解除で消すことはできないのね、と考えながら氷漬けのまま意識を落としてしまった自チームの二人を起こして凍傷を起こしている足を治癒していく。
何もできなかった、と悔しがり謝ってくれる二人に私こそ協調した動きは一つもできなかったわと返す。本心だ。けれど。
私の最終目標を達するためには、こんなやり方で通用するとも思っていない。強化すべき点や学ぶべきことの多さの一端が見えた今回の勝利に喜びも感じられなかった。
「……はあ。課題がたくさん、ですね」
「瑠奈ちゃん何で勝ったのに残念そうなの!?」
ビル階下から凄まじい勢いで核もろとも凍結させたらしい。足をビルに凍り付けたことで油断している彼らは悠々と核の方へ向けて歩いてくる。そしてその中間には私が居る。
「まだ決着も付いていないのに勝った気でいるのは舐めているからかしら?」
何事もなくすたすたと核への道を阻むように歩いてきた私に驚きと不可解さとで足を止めた。もう一人相方が出てこないのは下で待機させているからか。本当に一人で十分だと思っているらしいので心が戦闘の楽しみと舐められている怒りで興奮してしまう。
「……避けたのか?」
「いいえ。悔しいですけれど私にそこまでの反射神経はありませんでした」
今後の課題ですね、と歩いて近づく私の素足を見て、轟はサッと顔を青ざめさせた。まさか靴ごと凍った足を省みず、膝から下の皮膚すら己で剥ぎ取って脱出することは無いだろうと? 私の覚悟はそんな事で躊躇する程度のものでは無い。相手は知らぬことでしょうけれど。
「足の皮、犠牲にして抜け出してきたのか……!」
「治癒と麻酔の使い方ってこうでしょう?」
ウフフ、と小さく笑いながら一気に近接戦に持ち込む。拳だろうと蹴りだろうと、きちんと体術を仕込まれているのか護身術程度の知識しかない私の攻撃は全て受け止められている。
しかしその顔は受けるたびに想像以上の痛みに驚き歪んでいる。それはそうでしょう、私は一撃一撃に己の体が耐えられる以上の力をかけて振るっている。ただ壊れる端から修復しているだけで。受け止める側も無傷では済まさせない。
これが、女として生まれ体躯にも恵まれず、成人男性に対して決定打を与えられない私が考え抜いた末に出した継戦能力を上げて物量で押す戦略である。もし私に別の個性や能力が宿ったとして、ここだけは根幹の考え方なので私が私である限り変わらない確信がある。
「……ッ即時、回復か!」
「ウフフ正解です。貴方も後で治して差し上げるので今は我慢してくださいな!」
「ぐ、この……っ!??」
グッと踏み込もうとした動作に合わせて、彼にかけていた個性を一部解除した。すると目の前で足が急に痛みを訴え、体重を支えきれなくなったのだろう彼が体勢を崩して崩れ落ちる。
何が起きたか分からず目を白黒させながら立ち上がろうとしている。
「麻酔で知覚できてなかっただけで骨が折れていますから、立てないと思います」
「な、」
「それにもう一人来てしまいました。ここまでですね」
小さく溜息を吐いてはためく袖を意識しながら腕を後ろへ引く。
「範囲制圧が己の専売特許だとでも?」
ヒーローチームのもう一人が室内に踏み込んだ時点で麻酔を最大出力で放出、その場の全員が昏倒したことを確認してから室内に充満した麻酔個性を収めていく。
その合間に確保テープを二人に巻いて敵チーム勝利のコールを聞き届け一息ついた。
氷の解除を頼むために轟の意識回復を優先させる。彼の意識が戻ったところですぐに手足の治癒を施していく。
「氷個性の解除をお願いできます?」
「……ああ」
轟は身体の動きを確かめたあと、ぐっと奥歯を噛みしめながら左手で熱を操り溶かしていく。その様子を見て解除で消すことはできないのね、と考えながら氷漬けのまま意識を落としてしまった自チームの二人を起こして凍傷を起こしている足を治癒していく。
何もできなかった、と悔しがり謝ってくれる二人に私こそ協調した動きは一つもできなかったわと返す。本心だ。けれど。
私の最終目標を達するためには、こんなやり方で通用するとも思っていない。強化すべき点や学ぶべきことの多さの一端が見えた今回の勝利に喜びも感じられなかった。
「……はあ。課題がたくさん、ですね」
「瑠奈ちゃん何で勝ったのに残念そうなの!?」