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「記者が大量に向かう……ね」

入学後に一体何の連絡かと思えば、「記者侵入のどさくさに紛れて雄英セキュリティ等の校外秘情報を流せ」と、早朝からメールでまるで命令のような指示が送られてきた。
まるで、ではなく正確に”あの方”からの指示なのだろうけれど。

「雄英、こんなに簡単にスパイを紛れ込まされて大丈夫なのかしら……」

指示の内容から読み取るに他にも私以上に積極的な、もしくは強力に縛られているスパイがいるようだし、実際大丈夫ではないのだろうけれど。私からすれば学校のセキュリティ情報の流出など正直”知ったこっちゃない”のである。

「とはいえ、私自身を保護してくれるはずの学校が信用を失うのはとてもいただけないのよね。それに……」

父親と”あのお方”両方に復讐したうえで、己の人生を謳歌する。その目標を掲げた時点で進学先に選んだ雄英高校には安泰でいてもらわなくては困る。
と考えたうえでそのメールに了解の意を返し、さてこの端末をどうしてやろうかと睨みつけた。
いつも必要以上に早朝に登校しているのは家に親なのかあのお方からなのか、監視の目が付いているのでそれから逃れるためである。
勉強も医学生を目指すよう強制された私がそうそう躓くことなどないのだが、雄英のレベルの高さを言い訳に「私が至らぬばかりについていけないのです」という体で勉強ばかりしている。そのおかげか、あのお方からのお願いを振られることもあまりなかったのだが。
ついに具体的な情報流出の指示がなされた。つまりスパイとしての任務を振られたのである。

「これはよろしくないわ。手を染めれば私の将来設計に取り返しのつかない傷が付いてしまう。けれど、ただ無視をしたとしてもそれがまかり通る程度の相手ではない……」

はあ、と深いため息を吐きながら窓の外を見つめる。開けておいた窓から入る風が気持ち良いので少しだけ気が晴れた。
今日までほとんど動きのなかった――ないようにさせていた――私への指示。この対処も考えねばならないのに、先々のための監視端末の処理まで。
私は絶対に、自分の敵の為に行動しないと決めている。それは一体何があっても。
大きい溜息をもう一度吐いた。せめて半日だけでも監視の目のない完全に自由な時間が手に入れば。新しい監視の目を付けられる前に私だけが知る、私のための安全な情報ツールを手に入れるのに。
生まれてから今日に至るまで一度も叶わなかった計画へのもう一歩。監視の目を掻い潜るそこまでにそびえる大きな壁に頭を悩ませて憂鬱な表情で外を見る瑠奈が、爆豪と二人きりの朝に妙案を閃きいきいきと爆破をねだるまであと数分である。

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