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箱根をゴールとして進む道中はなかなかに愉快で楽しかった。安全面は瑠奈が居るから大体は保証されているとして、おかげで3700年前との違いから色々な発見があり、それを見つけて楽しむ余裕があった。

「桜、なんか感じが違うねー」
「そりゃ俺らの知ってる桜はソメイヨシノだ。自家受粉できねぇでソッコー滅亡してっからな」
「……好きな花だったんだけど、惜しいな」

楪の呟きに返せば、ぽつりと独りごちて残念そうな瑠奈を見やる。散る花びらの中で何かを考えているようで、その様子は憂いを帯びていた。
傍によって小さく「それはコッチの世界の話か?」と聞くとこちらを見ずに小さく頷いた。

「(コイツの、きっと少ないだろうこの世界にある好きだったものが減っちまうのは、確かに惜しい)」

風に散る花びらの中で霞むような彼女を見て思う。
何故だか、ふとした時に消えてしまいそうな彼女を繋ぎとめていられない気がするから。



「着いた〜! ゴールの箱根だ!!」
「ふふ……念願の温泉、何年ぶりかなぁ」
「3700年ぶりだろ」
「いや、東北で起きたての頃真冬で死にそうだったから現地の温泉を拠点にしてたのよ」
「マジで真冬の東北で全裸スタートの癖に死んでねぇのバグだよな」

喋りながらも大樹君とちゃきちゃきと簡易な衝立を作り、そこらへんで湧き出ているちょうどいい温度の温泉の中に立て、男湯と女湯とを隔てる。

「あつ……」
「ん〜…ちょっとあついね」

全員で全裸で湯につかるという状況に流石に危機感を覚えたのか、時間をずらそうと言っていた男たちに「私はどんな状況でも格好でも強さには別に影響ないし、暗くなる前にまとめて入ってゆっくり体を休めようよ」と提案したので現在全員で同じお湯に浸かってのんびりしているところである。

「瑠奈さん温泉行きたがってたって聞いたんですけど、そんなに好きなんですか?」
「うん。修行が捗るからね」
「シュギョウ???」
「疲労回復促進で効率的な修行のために温泉求めてたのかよ」
「む! その勤勉さゆえの強さなのだな!!」
「ちゃんと好きだよ温泉入ること自体も!」

きちんと温泉好きなので心外すぎて反論したものの、石化以降は体の回復のために探していたのでまあ間違いではないのだった。

「で、センクーが欲しかったのはこの辺のサルファー…硫黄だよね」
「大当たりだ! っつー事で俺は採取だ」
「私はまだもうちょい……いや! 手伝うわ私も!」
「お? おう」

まだ入りたそうな顔をした瑠奈がいそいそと残した2人の様子を気にしながらこちらへ寄ってきたので、あの二人の甘酸っぱい系統のことだと察した。邪魔したくねえわけな。

「センクーは私と甘酸っぱい感じに自然硫黄の採取しようね」
「クク、こっちは腐乱臭組だな」
「やだな純粋な硫黄は無臭だもんね」
「流石に知ってたか」
「温泉好きですから〜?」

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