21

「んでおめーは何してんだ?」

3700年越しの思いを伝える二人の邪魔をするほど野暮ではない私は、千空とともに黒色火薬の材料を採集していた。
が、個人的な趣味で集めているものもこの地にあるため、同時にそちらの採集も行っていたところ、目ざといセンクー先生に見つかった。

「せっかく硫黄が産出してる温泉に来たし、ちょっと趣味をね」
「石……じゃねぇな、鉱石か」
「そ! FeS2、パイライト。またの名をフールズ・ゴールド愚者の金
「宝石系が好きなのか?」
「綺麗なものは好き。あとこれ金を持ってる気分になれるから好き」
「ニセモンだけどな」
「知識人にとっては偽りの金じゃなくて宝の半導体の原石になるかもしれないんだし〜」

材料採集を終えたころ、神妙な顔をした二人が温泉から出て来た。成功も失敗も読み取れないので見守ることしかできない。でもきっと悪いようにはなっていないはず。

「さて! お待ちかねの火薬クッキングのお時間だ!」

私では声をかけることもできなかった空気の中、慣れたもんなのか千空がさっくりと割り込んできて本題を進めていく。すごいな。
黒色火薬は簡易に作った木炭と自然硫黄、そこに拠点から持ち出してきたKNO3……硝酸カリウムを混ぜて固めるだけで完成する。

「私、硝酸カリウムのペトラの塩って呼ばれ方がなんか好きで覚えてたんだよね」
「俺は毎回お前の理系知識の広さに驚いてるわ」
「俺も毎回毎回千空と会話が成り立ってて感心しているぞ!」
「他の人、会話成り立ってないと思われてんの? 草生えるね」
「これが噂の科学教室千空君の相棒かあ……!」

そんなこんなで和やかに会話しながらあとは固めるところまで作り上げた黒色火薬。
基本的に安全のために金属ではなく木などの火花を発しないもので叩いて固めるのが簡単である。

「まー、普通の石同士をぶつけても火花はでねぇがな」
「あっでもパイライトは黄鉄鉱……」
「鉄……デカブツのインチキパワー……待、」

硬質な音を立てた大岩と火薬袋は最悪の予想通り火花を散らして叩きつけた火薬袋に着火した。



「し、死んだ……」
「……生きてるよ」
「ありがとう瑠奈さん、引っ張ってくれたおかげで杠も俺も無傷だ!!」
「あっ、ありがとうございます! 何が何だかわからないうちに助かりました……!」

身体が爆風で吹き飛ばされるほどの大爆発が起こったのは想定外だったものの、オーラを操るものの前では脅威になり得はしない。が、生身の非能力者、それも鍛えてもいない未成年を庇うのは少々骨が折れた。

「マジでいかれてるわデカブツパワー……。ありがとな、瑠奈。命拾いしたわ」
「咄嗟に全員庇えてよかったよ……帯状に作った自分の念能力に感謝〜」

せっせと消火活動に勤しんでいる傍らで不安そうにしている二人が見えた。

「千空君、この火薬で司君を……攻撃、するの?」
「……。いや、取引に使う」

一瞬口元を引き締めた千空は「司が話の通じない殺人鬼ではない」ことを説明して交渉の材料に使うと説明し、二人を安心させていた。
そのあとひとり高校生とは思えない厳しい顔つきをしていたので、きっと何かを覚悟したのだろう。想像するに、交渉決裂した場合の処遇であるとか。
すすす、と横に並んびにいく。

「また一人で勝手に腹をくくったでしょう千空くん」
「おまえに普通に呼ばれるとソワソワすんだよ……」
「どうあがいても私が一番強いんだから、ちゃんと使ってよね」
「俺が何を覚悟したかわかって言ってんだろうな?」
「センクーよりは向いてるでしょ」

今世でこそ経験はないものの、誰かの、何かの命を奪うという意識をもって行動した経験値は確実に私の中に蓄積されて残っている。どこかで聞いた、「人殺しの罪はその人の魂に傷を付けて、生まれ変わっても洗い流されることはない」という言葉が蘇ってくる。
でもそんなこと言ったら、あの世界の人たちは一体どれだけ輪廻をめぐり続けているというのか。そう考えたら笑っちゃうね。

HOME