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「うふふ。それじゃあ案内お願いするわね」
「ケ。やけに機嫌が良いじゃねぇかよ」
「(本当に「ケ」なんて言うひとが存在していたんだわ……)まあ、期待した方に委員長が回って行ったものだから、つい」
「帰り際ファンサしてたもんなァ」
「ふぁんさ……?」
「手ェ握って頑張ってねとかほざいてたろーが」

授業を受け終えて帰り際、嬉しくなって飯田君に激励していったことを思い出した。
委員長に就任した緑谷が昼休みの一件を収めたという彼の手腕に委員長の役割を彼に譲り、今日から飯田君が委員長として務めることとなったのだ。自分の審美眼が認められたようで喜びがひとしおだった。

「なるほど、あれが激励ファンサなのね……」
「はよ行くぞオラ」



爆豪君の案内で商店街へやってきた。本当はショッピングモールへ連れて行ってくれる予定だったらしいが、条件として近くて門限までに帰れる場所が良いと伝えると近場の商店街へと行先変更された。
欲しい機能を伝えるとさっさと機種を選んで契約を進め、オプションだと言って付けられそうになった要らないものも全て弾いてくれた。私は次のためにそれらのやり取りを見て学んでいた。なぜ要らないオプションを付けさせようとするのかしらね。

「で、詳しいこと話せや」

商店街の中にある落ち着いた雰囲気のカフェに入って新しく手に入れた真っ赤なスマホを感慨深くいじりいじりしていると手の中のスマホをすっと抜き取られて話を促された。
一旦紅茶で口内を湿らせてから落ち着かせる。

「まず、私には復讐したい相手がいるわ。一人は顔もよく知らない男。彼は父親を通して私に指示を出してくる人物。監視しているのも彼の指示だと思うわ。そして詳細は不明だけれど、雄英高校で何かしようと企てているみたい」
「それが、今日の騒動と繋がってるっつーわけか」
「さすが話が早いわ! そしてもう一人は実父よ」
「……実の父親、で間違いねぇんか」
「ええ。私の個性も、私の死んだ母親も、今のところ全て父親の為に道具として消費される予定よ」
「……。」
「元々、私の個性もね、治癒と麻酔なんかじゃないの。本当は別にある。けれど私も馬鹿じゃないわ。求められていない個性を隠していたの。そうしたら、」
「……そしたら?」
「父親の望む治癒と麻酔の個性をね、無理やり植え付けられたの。そういう個性なんだと思うわ、指示してくるその人。それから指示を下す”その人”が父親の上に立つようになって、雄英に入った私にも指示を出してくるようになったの」

思っていたより重い話だったのか、黙って話をかみ砕いているらしい爆豪に、私がスパイのような活動を指示されていること、父は私に次世代の医療者に仕立て上げ地位を確保したいこと、私はその二人の言いなりになる気が全くないこと、自分の幸せのために犯罪に手を染めることなく復讐をきっちりやり遂げること、聞いたからには協力してもらうことを話した。
すると協力に関してはすんなりと肯定した彼が、表情をゆがめて「クソヴィランが水面下で何か動いてやがるわけかよ」と呟いた。やはり彼は見た目や言動に反してちゃんとヒーローなのだ。

「元の個性は何だよ」
「届け出も医療関係者にも隠し通したから私の推測ではあるけれど、おそらく”反射”だと思うわ」
「反射? 能力を跳ね返せたりすんのか」
「人に使ったことが無いので何とも。でも能力の反射は可能だと思うわ」
「なんで言い切れんだよ」
「個性把握テストのとき、貴方が指摘した私のおかしな呼吸、覚えてるかしら。あの時自分の個性を内で反射して増幅させて使ってみていたの。だから調整に時間もかかってしまってたのよね」
「だから個性は反射できそう、ってことか……」
「そういうこと! でね! 私のこれをご存じなのは世界に爆豪君だけなの! だから色々と実験に付き合ってほしいわ!」

興奮でつい勢いを増した私の額に押し付けるようにスマホを返してきた爆豪君は、不機嫌な表情の中に少しの戸惑いを滲ませていた。

「……私は爆豪君を信用しているわ。自分の人を見る目を信じているから」
「ハッ大層な自信じゃねーか」
「真の委員長だって見抜いたでしょう?」

またしても「ケッ」と言って会話を切った彼は静かにコーヒーを傾けた。
私も戻ってきたスマホをいじりながら紅茶を飲む。

「あ、チャットアプリこれ……あら? え?」
「……」 
「これ貴方、ん? いや……んん?」
「……ンッ」
「ねえこれ、どうやってピン止めを外すのかしら!? 貴方が一番上に固定されて序列が変えられないんですけれど!?」
「ッぶはは! 便利だろーがそのまんまにしとけや」

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