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「……!? 誰もいない……!」

しばらく進むうちに上がっていた狼煙の跡を見つけるも、そこには誰もいなかった。明らかに人の手で火を付けられていたのは確かであるというのに。

「狼煙を上げているうちは移動しないと思っていたのに。くそ、読み違えたな」

急いで戻ろうかとも考えたが、その場から離れた形跡を見つけて足跡を追っていくことにした。

「足跡の大きさと歩幅からしておそらく成人前の少年少女。体重はとても軽い。裸足じゃないけど、固めの何かの足跡だ。なんだろうか……。しかもこれ山の方に向かってない?」

私がまっすぐ直線距離を移動したのとは違うルートで道なりに山の方へと向かっていた。綺麗に迂回したようにすれ違っている。道理で円にも引っかからなかったわけである。
もうすぐ山のふもとあたりという頃、先ほどまで黒色火薬づくりをしていた場所からそう遠くない位置で爆発が起こった。足跡を見るにこの人物の行く方向と同じ方向のようだ。そのまま音の方へ向かっていると急な雷雨に見舞われどんどん視界が奪われていく。咄嗟に広げた円に山から下るように走っていく二人と、抱えられた一人が引っかかった。反射で全速力で彼らの傍へ駆け戻る。

「……なにが、なんで……見つかってたの……?」
「瑠奈さん!! せ、千空くんが、私の代わりに犠牲に……っ」
「うん、うん。大丈夫、杠ちゃんのせいじゃないよ。あと大樹君、心臓マッサージは、もう、」
「し、しかし!」

もう死んでいるから、とは言えなかった。閉じたままの精孔から漏れ出ているはずのオーラが完全に消えていた。念能力者の目にははっきりと彼の死が映っていた。
私がボタンを掛け違えるように判断を間違えたから、死なせてしまった。傍にいれば絶対に違う結果になったと断言できるだけにその後悔は津波のように大きく押し寄せてきた。
何を発言する前に杠の言葉に反応した大樹が、小さく「代わりに犠牲に……?」と訝しげに何かを考えている。

「千空は自殺しない。誰かの犠牲にもならない。何かあるはず……なにか、ヒントが……!」

ハッと何かに気が付いた大樹が千空の身体をうつぶせにひっくり返し、首の根元を見ている。

「首の根元に石化の残りが!! 杠! 石化復活液を!」
「はい!」

杠から受け取った復活液を千空の首に残る石化残りにかけて呼び戻そうと叫んでいる。
念能力者として一人先にその死を知り呆然と受け入れて諦めてしまっていたが、まさかそんな、奇跡みたいなことが起きるというなら。

「ね、センクー戻ってきて。判断を間違えた私に謝らせてセンクー」

石化が解けていくにつれて精孔からオーラが漏れだす。

「……嘘じゃん、オーラ消えてたのに。脳死判定はセーフとか?」
「クッ、お熱い抱擁とセリフがあってねーよ瑠奈。あと二人、雷雨もやんでカモフラージュもなくなったんだ、もう叫ぶなよ」
「千空くん……!!」
「千空……!!」
「わかってっと思うがな、逐一感謝のお言葉垂れ流すんじゃねえぞ。俺も言わねぇ」
「うん、おかえり……千空くん……」
「ゴミみてぇなヒントから首に気付きやがったな。お前ら全員に100億万点やるよ。」
「わたしいらない、もらえない」

千空が目覚めてからずっとしがみつくようにしていた私が泣き顔は見せまいと千空の薄い胸を借りて顔をうずめながら言うと、何も言わずに後頭部を撫ぜられた。
しばらくはそのままにしてくれるらしく、千空は抱きしめられたまま、私は彼の胸を借りて頭を撫でられながら狼煙の一件を報告した。

「やっぱ居やがったか、人類が……!」
「石化復活勢なのか、そうじゃないのかは見てないから今のところ不明なんだけどね」
「最後まで追わなかったのな」
「だっでヤバそうなゼングーだぢ見づけだんだもん」
「クク、キャラ変わってんぞ。駆けつけてくれてありがとな」
「ヴヴヴ〜〜ッ!」
「俺をあっさり諦めた件はちゃんとあとで償ってもらうから待っとけ」
「ん"」

一連を千空復活からずっと同じ体勢で何食わぬ顔をして執り行うふたりを、大樹・楪ペアがそっと離れて見守りながら楪は化学の旗を作り、大樹はここら辺一体の痕跡を消していってくれていた。

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