15
爆豪君に完全個人用スマホ――爆破した前の機体も個人用ではあるのだが――を手に入れてからしばらくお茶をして意外にも穏やかな雑談を楽しんで帰宅した。部屋の前には当たり前のようにスーツの男性が二人立っていた。父親から遣わされた監視員だろう。
「お嬢様。先生からお嬢様とご連絡が取れなくなったとお聞きいたしましたが……」
「ああ、そうなのよ。今日の騒動でちょっとした事故があって、携帯端末が破損してしまいましたの」
申し訳なさそうな、悲しそうな表情を繕って大き目のハンカチに包んだスクラップを差し出す。
「お父様にご連絡いただいた件もご報告できず、端末も個性事故でこんなことに……どうしましょう」
力になりたかったのに突発的なアクシデントでそうもいかず、とても責任を感じています……というようなうるうると濡れた目で上目遣いに言い募る。我ながら女優である。
すると監視員の一人が別端末を新しく渡してきたのでホッとしたように受け取り、家の中へと入った。
直接顔を合わせてやり取りしなくなってから大分楽になった。繕うのも一瞬でいいし、基本的にその時その場だけの知り合い以下の人間なので騙しやすい。
「……フフッ。ああ、おかしい! 爆豪君に話して聞かせたいわ!」
家の近くや街中はちょっと安心できないから、そうだわ、彼の趣味だという登山のときだとか。山中では見張りを付けるのも目立つし控えるだろうから、電波の悪さにかこつけて携帯端末は電源を落としても問題ない。のびのびと本心を楽しくお話できそうだわ。
思い立ったが吉日とチャットアプリにの一番上に固定されたままの爆豪君へメッセージを送る。固定なんてしなくても今のところ彼一人しか連絡先を知らないのにね。
速攻で既読が付いたあと、「入学したてで正気か?」という頭語から始まり、せめてカリキュラムに慣れてからにしろ、道具も何もない素人が電波も入らない場所に行こうとするな、などとても心配をされていたので「書き忘れていましたけれど、貴方と一緒にですけれども?」と追記すると既読ののちしばらく返信が途絶えた。
すぐに監視用端末の実父の名前を”生物学上の父親”に変更してお夕飯の支度をしているといつの間にか返信が来ていて、「先に言えや。今週末帰りにウチ寄ってけ」と書かれており、どうやら了承が得られたらしい。想定外にかなり面倒見がいいようだった。私にはとても都合が良い。
「生活費から私のスマホの使用費を差し引いても余りある……贅沢な暮らしだわ。恵まれた生まれだわ」
けれど私はそんな生活を望んでもいないし、他人を道具にして稼いだ金で暮らしたいとも思わない。貧しくても大変でも、誰に迷惑をかけるでもないのだから本当は自分の手でアルバイトでも何でもして、稼いだ金銭で生活をしたかった。許されることはなかったけれど。
「いつか、絶対に抜け出して見せる。たとえ恵まれたこの現状を手放すことになっても。元々望んだ環境でもないもの」
その為にも、今回の戦闘訓練で分かった弱点を補うためにも、体力づくりしなければね。
そうして授業を振り返るとふと別人の視線を思い出させた。
「名前……何だったかしら、彼。何かした覚えもないし何がそんなに引っかかっているのかしら……?」
もの言いたげな視線を寄こす割に、なんだと問いかけてもろくな言葉は返ってこない。今日だって、意図的に意識から排除していたけれどいい加減視線が鬱陶しかった。
推薦合格者で成績上位者である彼がもしあの人の手の者だったら。あの手の人間は優秀なものにだって声をかけているはず。無くはない。しかし。
「どうもそういった系統の視線では無いような気がするのよね……はぁ」
このあと散々悩んだ挙句爆豪に「頭髪がおめでたい感じの男子生徒の名前を教えてくれないかしら?」と尋ね、「あ? 紅白の半分野郎かよ。知るか」と返答があったことで互いに”コイツ他人に興味ないな”と把握することとなった。
「お嬢様。先生からお嬢様とご連絡が取れなくなったとお聞きいたしましたが……」
「ああ、そうなのよ。今日の騒動でちょっとした事故があって、携帯端末が破損してしまいましたの」
申し訳なさそうな、悲しそうな表情を繕って大き目のハンカチに包んだスクラップを差し出す。
「お父様にご連絡いただいた件もご報告できず、端末も個性事故でこんなことに……どうしましょう」
力になりたかったのに突発的なアクシデントでそうもいかず、とても責任を感じています……というようなうるうると濡れた目で上目遣いに言い募る。我ながら女優である。
すると監視員の一人が別端末を新しく渡してきたのでホッとしたように受け取り、家の中へと入った。
直接顔を合わせてやり取りしなくなってから大分楽になった。繕うのも一瞬でいいし、基本的にその時その場だけの知り合い以下の人間なので騙しやすい。
「……フフッ。ああ、おかしい! 爆豪君に話して聞かせたいわ!」
家の近くや街中はちょっと安心できないから、そうだわ、彼の趣味だという登山のときだとか。山中では見張りを付けるのも目立つし控えるだろうから、電波の悪さにかこつけて携帯端末は電源を落としても問題ない。のびのびと本心を楽しくお話できそうだわ。
思い立ったが吉日とチャットアプリにの一番上に固定されたままの爆豪君へメッセージを送る。固定なんてしなくても今のところ彼一人しか連絡先を知らないのにね。
速攻で既読が付いたあと、「入学したてで正気か?」という頭語から始まり、せめてカリキュラムに慣れてからにしろ、道具も何もない素人が電波も入らない場所に行こうとするな、などとても心配をされていたので「書き忘れていましたけれど、貴方と一緒にですけれども?」と追記すると既読ののちしばらく返信が途絶えた。
すぐに監視用端末の実父の名前を”生物学上の父親”に変更してお夕飯の支度をしているといつの間にか返信が来ていて、「先に言えや。今週末帰りにウチ寄ってけ」と書かれており、どうやら了承が得られたらしい。想定外にかなり面倒見がいいようだった。私にはとても都合が良い。
「生活費から私のスマホの使用費を差し引いても余りある……贅沢な暮らしだわ。恵まれた生まれだわ」
けれど私はそんな生活を望んでもいないし、他人を道具にして稼いだ金で暮らしたいとも思わない。貧しくても大変でも、誰に迷惑をかけるでもないのだから本当は自分の手でアルバイトでも何でもして、稼いだ金銭で生活をしたかった。許されることはなかったけれど。
「いつか、絶対に抜け出して見せる。たとえ恵まれたこの現状を手放すことになっても。元々望んだ環境でもないもの」
その為にも、今回の戦闘訓練で分かった弱点を補うためにも、体力づくりしなければね。
そうして授業を振り返るとふと別人の視線を思い出させた。
「名前……何だったかしら、彼。何かした覚えもないし何がそんなに引っかかっているのかしら……?」
もの言いたげな視線を寄こす割に、なんだと問いかけてもろくな言葉は返ってこない。今日だって、意図的に意識から排除していたけれどいい加減視線が鬱陶しかった。
推薦合格者で成績上位者である彼がもしあの人の手の者だったら。あの手の人間は優秀なものにだって声をかけているはず。無くはない。しかし。
「どうもそういった系統の視線では無いような気がするのよね……はぁ」
このあと散々悩んだ挙句爆豪に「頭髪がおめでたい感じの男子生徒の名前を教えてくれないかしら?」と尋ね、「あ? 紅白の半分野郎かよ。知るか」と返答があったことで互いに”コイツ他人に興味ないな”と把握することとなった。