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「わははは! 石化のせいでこんなに苦労してるのに、その石化のおかげで治るとはなー!」

大樹が笑いながら言う。確かにそうだ。
石鹸作りのときに大樹に言った言葉をそのままこの場で返される。

「むしろ石化こそが医者代わりの命の石――Dr.STONEじゃないかー!!」

そうなのだ。俺は最初この現象を何かの攻撃の一種だと考えていた。しかしだ。本当に人類への攻撃であるならば”石化解除時、周辺部位もろとも修復する”などというお誂え向きな機能は必要ないはずなのだ。
千空はある日の瑠奈との会話を思い出す。
まだ大樹が石化から目覚めていない、初期ツリーハウスが出来てすぐの頃の夜。毎日健全に夜を共にしながら会話していたうちの一つの話題だった。

「センクーはアレを攻撃だと思ったんだね」
「お前は違う解釈したっつーのか」
「私は最初報復かなって思ったね。前世で私が殺した相手が私と同じような境遇に置かれて、磨いた念能力で己の敵討ちを己で果たした、的な」
「一番最初にその発想になるのは相当だな」
「まあね〜。でも感覚消えただけで生きてるし、円を広げてみたら周囲諸共だったから違うな〜って気付いたんだよね」

話題の殺伐さを微塵も感じさせないほどの朗らかさで笑う彼女は千空に向かって言った。

「攻撃や復讐ってさ、必ず害意があるわけ。でもあの石化は何か違う意図がある気がするな。石化解除の方法が存在している……ていうか石のエネルギー使い切れば勝手に解除したし。何より”復活すること前提の現象”だし」

あのときはあの途方もない石のエネルギーを使い切るなどという彼女の冗談のような能力に木を持っていかれていたが、言われてみればその通り過ぎる現象だった。
その時の彼女曰く、「私は私に害意をもって接触してくるものには気付けるもの」。
彼女のセンサーに引っかからなかったこの石化現象。解除方法も無理やりでないならいたってシンプル、ご親切に修復機能付きときた。
本当にこれは”攻撃”なのか?

「首が治るなら、バラバラ石像も引っ付けて復活液掛けたら繋がりました! みたいなことないかな〜」
「いや、初っ端に試したがバラバラ死体に戻るだけだったな。こんな修復力たけぇならなんで、」

引っかかりが増えた。割れて断面が劣化したものは再生しない説を瑠奈は劣化不再生理論と呼んだ。やはり根本からして攻撃であるという説は間違いだったのかもしれない。
引っかかりから己の中で真説へと置き換わっていくのを感じながら、また別のことを考えていた。

「千空の怪我も無事修復……というか私にはもはや別物に見えていたけど。なら、最近壊されたモノたちは劣化してないからもとに戻る可能性があるね」

考えをトレースしたように同じ思考回路でものを考えていたらしい瑠奈が近くで小さく言う。
そうだ。このアドバンテージを活かすなら今ここでだ。
俺の死の偽装、他文明と思しき人類の影、そして最大戦力瑠奈の存在の秘匿。これらが明るみに出る前に動かなければならない。

隣にいた瑠奈の顔を見る。視線に気づいた彼女が合わさった目で理解を示した。我ながら以心伝心しすぎだろ。
杠にあるお願いと今後の話をするために踏み出した。

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