卯月の嘘 8
「チッ、あいつら一体何歳だよ」
花宮が呆れたくなる気持ちがよく分かる。公園のベンチに座る俺と花宮の視線の先には、小学生の如くはしゃぎながら鬼ごっこをする男子高校生2名と女子高校生1名。言わずもがな原、山崎、野々宮の3人である。ちなみに。鬼ごっこを開始してから15分以上経つが、いまだに鬼は山崎のままだ。
ちらりと隣に座る花宮を見れば、頬杖を突きながら無言で鬼ごっこをする3人の方を見ていた。
「やめさせなくていいのか?」
「別にいい」
「花宮がそう言うとは意外だな」
「今、やめさせると玲が後で面倒だからな」
諦めたように言う花宮に対し、俺は「そうか」と返すしかない。
最近、花宮の事で気が付いたことがある。それは野々宮の扱いが無駄に上手いことだ。幼馴染なのだから当たり前だと言われればその通りなのだが、あの花宮が彼女を見捨てることなく世話を焼いていることが俺としては驚きだった。
学校生活では完璧に優等生を演じている花宮。そんな花宮が野々宮が関わることになるときだけ、幼く感じるのは彼女に心を許しているからなのではないかと俺は思う。
「野々宮の事をよく分かっているな」
「小さい頃からあいつと一緒に居たら嫌でも分かるっての」
「そういうものか?」
「そういうもんだ」
やっぱりだ。野々宮が関わると、いつもの猫を被った花宮が素に戻る。
そういえば、と話を切り出せば前を向いていた花宮がゆっくりとこちらを見た。
「野々宮が彼氏ができないと嘆いていたぞ」
「へー」
花宮は全く興味なんてありませんという様子で再び前を向く。
相変わらず演じるのが上手いことで。
「ほどほどにしておけよ」
「何のことだか」
「分かりやすいぞ。お前の牽制は」
長い沈黙の後。花宮は大きく溜息をついて、俺の名前を呼ぶ。
「…古橋」
「どうした?」
「なんでよりにもよってあいつなんだ」
「そんなことを俺に聞くな」
出口どっち?
『ザッさん、頑張れ〜!私、そろそろ逃げてるの疲れてきた』
「玲ちゃんに同じくー!」
「それは追いかけてる俺の台詞だっての!!なんでお前らそんなに逃げるの速いんだよ」
『別に普通だと思うんだけど。それじゃあ、逃げる人数を増やしてザッさんもはやく鬼という役職から解放できるようにしてあげよう!』
「は?人数を増やすって...まさか、」
『真ちゃーん!!古橋くーん!!一緒に鬼ごっこしましょー!!』
「...だそうだが?」
「チッ、仕方ねぇ。行くぞ古橋」
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