的場さん家の居候 5
『あれ?七瀬さん。的場さんは?』
「あぁ。的場なら出掛けたよ」

そういえば。今日は会合があるって言っていたようなそうでないような。そんなことを思いながら、熱々のココアが入ったマグカップを両手で持って適当な場所に腰を下ろす。

「ことりは、その(的場の)席が好きだね」
『別に好きなわけじゃありません。テレビが見やすい席だから座ってるんです」
「ふーん。そういうことにしておくよ」
『…七瀬さん、なんですか。その意味ありげな笑みは』
「そんなことはないよ。さて、残りの仕事を終わらせてくるか」
『あ、ちょっ、七瀬さん!…行っちゃった』

あっという間に部屋から出て行ってしまった七瀬さん。あの様子からすると恐らく分かっているのだろう。私がこの席にいつも座る本当の理由を。

『七瀬さーん。お願いですから的場さんには言わないでください』

的場さんに知られたりなんかしたら 恥ずかしすぎて死ねる気がします。そんな私のつぶやきはテレビから流れてくる声にかき消された。
7/7