透き通った風が頬を撫でる。
ここ数日で一番マシというくらいに暖かい今日は、屋上でお弁当を広げる事にした。
「やっぱりまだ冷えるねえ」
名前がそう口にすると、仗助は少し笑ってから
「人が来なくっていいだろ」
と言う。
いつもなら億泰や康一、由花子も一緒になるところだが、億泰はおとといくらいから風邪、康一由花子ペアは二人きりで食べる予定だったようだ。オーラがそう語っていた。
億泰については、名前は正直内心バカでも風邪ってひくんだ…と思っていた。失礼きわまりないが、口に出さなかっただけ良いだろう。
二人は身を寄せ合って風から避けられそうな壁際に座る。足の上で弁当を開けて、箸箱を二人して開ける。
隣でにこやかに口角を上げている仗助が気になったので名前はちらりとそちらを目だけで追うと、それに仗助はいち早く気がついて視線で語りかけてくる。
まるでキスしてキスして!とせがむ犬のようだ。訳だってそう間違ってはいないだろう。
食べた直後じゃあないからまあ大丈夫か、と口内の事を気にしつつ、一度お茶を一口飲んで綺麗にしてから少し腰を浮かせて仗助と名前の唇が合わさる。
啄むように唇を数度吸ってから舌をちろりと出して段々深く絡めていく。時折響く水音がやけに淫靡に聞こえた。
「いっ!」
ぴりりと唇に鋭い痛みが名前に走る。
「ん?」
仗助はその違和感に気がついたのか、合わせた唇を少し離して、舌を口内を検査するように滑らせる。
「あ、名前。また口内炎作ったろ。」
ほらここ、と仗助は舌先で不自然に出来た口内のクレーターを刺激する。その度にびりびりと刺激が走る。
「いぁ、痛い!いたいよ!」
「ちゃァんとバランス良く食わねえからだろォ〜、ちっとは我慢しろっつーの。」
「だからって突っつくこと無いでしょぉ」
名前はもう一度軽く仗助にキスして、まだ少し上気した頬を冷たい風で冷ましながらご飯をほおばる。
もうこれでこの昼休みはキスしないという意思表示だ。
「あ!あ〜あ…ま、いっけどよォ。治してほしくねえなら」
「ええ〜、そりゃあ治してもらうに越した事ないけどさァ…。」
「じゃ、もっかいキスして」
「はァ?もうご飯食べちゃったし、やだよ。」
お箸を持って名前ははあ、とため息をつく。
「ほっぺたでいいから、なっ」
「それならいいんだけど。」
箸を弁当のふたに器用に乗せて、自分の目線あたりにある仗助の頬に小さくキスをする。
「これでいい?」
「…グレートッ!じゃあちょっと口開けて。」
「はァい」
今一度お茶を口にしてから口を開く。
「あんまりまじまじ見ないで。」
「ん?ああ、すまん。じゃあっと…『クレイジー・ダイヤモンド』ッ!」
ぶん、と仗助の腕が二重に見えたと思ったら、クレイジー・ダイヤモンドが宙を浮かんでいる。
「お世話になりまァす。」
「こりゃご丁寧にドーモ。」
クレイジー・ダイヤモンドの指が私の口内に入ってくる。
(これは…なかなかどうして倒錯的な気分だ)
ぐちゅぐちゅとクレイジー・Dの指先で口内を点検して口内炎を探られる。食事中だったのもあって、唾液はいつもより少し多めに分泌されているように思う。
「ん、こんだけか。ちょっと変な感じしても文句言うなよ。」
「ん〜」
いつも仗助はこういうが、特に変な感じも無いように名前は思っている。もしかしたら慣れすぎているだけかもしれない。
「よォ〜っし!ばっちりだぜ!」
「やった〜!」
もしかしたら構ってほしいから作っているのかも?
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