「やめてやる!」

ガタン!
大きな音を立てた物はどうやら椅子だったようで、そこに座っていた人物はテーブルに手を思いっきり付いて涙を流している。

「お、おい。どうした。」

女を泣かせるのはどうやらいくら俺でもイタリアーノとしては嫌なようで、焦りを感じつつなだめようとしてやる。
すると彼女はギッと、暗殺をする時の目でこちらを睨むものだから少し警戒してしまった。
彼女は身体のパラメータが高く、常人の男性をも凌駕するやもしれない。
いや、しなくてもスタンドを考えるとかなり強いのは分かり切っている。
そんな彼女が反旗を翻したとなると俺は止められるか怪しいところだ。
何せ彼女には俺のスタンド能力は暴露ているからな。

「ッやめてやるんです!こんな仕事!」

馬鹿みたい!と大粒の涙を流して言い切る。
やめてやる?この仕事を?

「何を言ってるんだ。今更だろう。」

ギャングが足を洗えるとでも思っているのだろうかこの娘は。
そうだとしたら教育をやり直すべきなのだろう。
ギャングは毒を食らわば皿まで。一度入るとすべてを知る事となり、その皿が胃袋から再生される訳でも、料理が戻ってくる訳でもない。
そんな甘ったれた事を考えているのは精々頭の悪そうなSFだったり馬鹿げたドラマぐらいだろう。

「今更じゃあないです!今だからですよ!信じられない!こんな安月給だなんて!」

否定は出来ないなと思う。
確かにうちのチームはシマを持たされていないし、それ故にやることは多い。
しかしつまりは信頼はされていても信用はされていないということだ。
シマなんか渡して、そこから密かに侵食される危険も無きにしも非ず、というのが上層部の考えだろう。
そういう訳で給料は必要最低限ギリギリ、食べるので精一杯だ。
多趣味な人間…特にメローネやギアッチョ、ホルマジオはどこかで仕事を見つけて好き勝手働いているようだ。
確か彼女もしていた筈だな。

「まあ落ち着け。お前は快楽殺人者だろう?ここに所属する事で罪に問われないんだと思って給料の事はだな…。」

そう、彼女は快楽殺人者なのである。
例えば暗殺もこなすが出来れば悲鳴も聞きたい、だとか出来れば解剖も生きたまましてやりたい、だとか気味の悪い事を言う。言うし時々実行してみせる。
実行した時に同行していたメローネは顔を真っ青にして嘔吐物受けであろう袋を抱えて帰ってきた。
アイツがそこまでショックを受けるなんて珍しい、とその時は思ったのだが実際目にするとそれも致し方ないかと納得した。
あれは酷かった。詳しく思い出すと吐き気がするからやめておこう。

「私が快楽殺人主義なのに何の関係があるって言うんですか!」
「仕事と趣味を合わせられて一石二鳥じゃあないか。」
「なんでウエイトレスをするのと殺人が結びつくんですか……。」

ああ、なるほど。

「…今までの発言は無かったことにするしてくれ」
「ええ…?」


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