やあ、なんて珍しい。
珍しいって何のことか、それはこの目の前に居る馬とその近くに見える人影。
しかしこの馬はあの人影のものではない。
おおかた、共同戦線でも張っていたのだろうな。

「や、ホット・パンツ。この大会はどう?」

軽く声をかけてやると人影の主である彼女はパッと顔を明るくする。
いつも男を演じる顔から年相応の女の子の顔になるこの瞬間はいつ見ても面白いと思う。

「名前!良かった、このラウンドもまだ怪我無く走っているのね。安心した。」

にこにこ笑う彼女の表情はとても可愛い。いつもそうしていればいいのに。

「ああ、私も安心したよ。ホット・パンツが無事だからね。なにせ昔からの友人の怪我した姿なんて見たくない。」

クツクツと笑ってやれば、彼女はカアッと顔を赤くして口を開く。

「な、何よそんな…!私は怪我なんかする程弱くないしそれに…!」
「うんうん、分かってる、アンタは強い。だからこそだよ、勝って兜の緒を締めよってね。
ところでアンタはまだ男を演じるつもり?」

たいして小さい胸でも無いんだから隠せやしないのに、と胸を凝視してやるとこれまた顔を真っ赤にして胸を隠した。
いいなあ、私にももう少しあっていいんじゃあないだろうか。

「それは名前もじゃあないの。勿体無い、折角可愛いのに。」

つまりさっきの質問は自分を棚に上げた質問だった訳である。
私は体格を隠す為に大きめのローブをフードを付けないではいるが着ているし、馬も女性があまり乗らないような気性の荒い馬に乗っている。まあ後者はただ愛馬がそういう性格なだけだが。

「まあ女ってだけで舐められるのは目に見えてるからな〜。私のスタンドは攻撃系だから、舐められると怒りで暴走してしまうかもしれないからね。困るって訳。」

昔昔に一度誰だったか(確か名前はネエロと言った気がする)にプッツンしてスタンドが暴走した事があった。
それ以来怒らぬよう、と思っているのだが何だか実力以下に自分が見られるのにむかっ腹が立つのだ。
そう、と軽く流されたがまあ彼女もその現場を目の当たりにしているのだから何と無く事情は分かったのだろう。

「ところでなんでこんなところにスロー・ダンサーが?ジョニィ・ジョースターは見当たらないけれど。」

そして人影に居たという馬は紛れもなくスロー・ダンサーだろう。
蹄鉄の跡と馬装を見れば分かる。

「ああ、彼は今水を…丁度戻ってきたな。」

ホット・パンツの視線の先を振り向いて見ると、確かにそこにはジョニィ・ジョースターの姿がある。
健気に車椅子を動かしているのを見ると手伝ってやりたいのだが、もし彼のプライドを傷つけたらと思うとそれも憚られる。

「や、ジョニィ・ジョースター。久し振りだね。どうだい?このレースは。」

片手を軽く挙げて、ホット・パンツにしたように軽く挨拶を交わす。

「やあ名前。そろそろ僕がジョニィって呼べって言ったの覚えてくれよ。…はあ、レースは見ての通り順調だよ。」
「ああ、そんな事も言っていたな。すまないジョニィ。まだ怪我は無いようだけど、どうせこれからするんだろう。傷薬いる?」
「傷薬よりハーブがいいな、出来ればカモミール。」

カモミール?何で急にそんな物を…

「ふうん?でもすまんな、生憎カモミールは持ってない。ああ、カモミールが入ったクッキーがある、それをやろう。」

本当に何故こんな物が入っていたんだろう。いつ入れたんだったか…腐っていないといいのだけれど。

「いいの?ありがたく貰っておくよ。…………ところでちょっと相談があるんだ。こっちに来てくれないか。」

クッキーをしっかりとポケットに突っ込んだジョニィが真剣な顔で手をこまねく。
先ほどジョニィが来た道だ。道中に何かあったのだろうか。

「ああ、ホット・パンツはスロー・ダンサーを見ていて貰ってもいいかな。」
「ん?構わない。」

クッキーのくだりからぼおっと空を見て天気を把握していた(っぽい)ホット・パンツは間抜けた声で返事をする。
信用しあっているんだろうか…?
はやくはやく、とジョニィが急かすので小走りで着いていくと、特に変な物が無いところでジョニィは止まった。
何だ、もしかして本当に相談か。

「あのさ、君…」

私?私が一体何をしたんだろうか。あ、まさかスタンドがばれた?一体どこからばれたというのだろうか。
ホット・パンツが喋った?いやいやまさか…。

「君、すっっっっっっっごく顔がタイプなんだ。どうしよう!僕はゲイだったのかな!」

ほんの少しがっくりと、あとはホッとした。
というかこういう事を本人に相談するというのは、彼は相当にぼんやりした性格なのだろうか。それともこれが彼のたらしテクニックのひとつなのか?

「ジョニィ、ううん…もし君が私を尊敬や友情で好きだと言うのなら、どこが好き?」
「な、何のこと…?そりゃあ君は誰にでもフレンドリーでどこか憎めなくて、でも信頼出来る。何より取っ組み合いの喧嘩がズバ抜けて強い。そこがいい。恰好いいと思うけど…それとこれとは…」

ふうん、

「及第点、って感じかな。流石だよ。」

頭にクエスチョンマークが沢山浮かんでいるジョニィににっこりと微笑む。

「私、これでも女なんだよね。だからもし私をタイプだと思うのならそれは異性と言う意味で正解だ。嬉しいよ。」
「な、えっええっ!?」
「私はジョニィとどんな関係になるのも拒まないんだけれど、どう?」


(昔はモテた現男日照りと昔はめちゃめちゃモテた現女日照り)


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