ふう、と吹かれた口からは白い靄が漂う。
指に挟んだ煙草はいつも自分が吸っているものではなく、メンソールの匂いがした。
「まっず…」
ある程度燃やされた煙草の先を忌々しく睨んでベランダの手すりに押し付ける。
「シスターがそんなモン吸っていいのかよ」
私に覆い被さるように抱きついてきたランサーに煙を吹きかけると渋い顔を向けられた。
今私が身につけているのは正真正銘シスターの服で、露出が驚く程少ない。いやしかし、世間ではそれが良いという話だったし、ランサーやギルガメッシュはよくそう言って私の体を撫で回す。その度にその手の甲は抓られた赤い印が付くのだが。
「良くはないなあ〜。ねえランサー、この銘柄良くない。良くないよ〜。如何せん頭にくらっと来ない。」
殻と化した煙草をランサーが着ているアロハシャツのポケットに突っ込んでから文句を言い、部屋に戻って引き出しを開け、自分の煙草を口に加える。
ああ、やはりこれだと肺に巻き込ませて息を吐く。
脳に痺れるような快感が及ぶのは、流石にドラッグじみていると自分でも思う。
「おいおい名前。あんまり吸いすぎるなよ。」
心配してくれているのであろうランサーは殻をしっかりと灰皿に戻してから部屋に入ってくる。
こつりと床を鳴らす靴の音がどこか涼しげに思えた。
「うるさいなあ。」
ベッド脇に灰皿が置かれたので、それに付いて行くようにベッドに座って仕切り直しをするように肺に深く深く葉っぱの煙を吸い込む。
「そもそも私も中身は泥なんだから、なんだっていーのよ」
隣に座って私の髪を漉くように撫でて来たランサーに笑いながらもう一度煙を吹きかけてやる。
嫌そうにしかめた顔もかっこいいとか、そんな事は流石に口には出さないけれど。
「脱がせにくいんだよなあ、その服。そこだけが難点だよなあ」
「…なんの話よ。」
急にぼそりと独り言のように口を開いたランサーから聞こえて来た言葉は、さっきまでの話とは脈絡も何も無くて。
顎に指を添えてこちらを見つめながら思案するランサー。指の男らしいところとか、唇の薄さとか。そんな所ばかり見てしまうのは空気がなんとなくそういう雰囲気に変わって行っているからだろうか。
「煙吹きかけてきただろーが。」
事も無さげに言うランサーに私は少し驚いてから、しまったと思う。
万能の願望機、聖杯。それから支給される知識は膨大な量に及ぶ。
「聖杯ってのは何でも知ってるのね。」
背中に感じるランサーの手とベッドの柔らかな感覚に笑みがこぼれたのは言うまでもないだろう。
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