街中で見覚えのある尻尾のような髪を見た。
「ラン……」
声をかけようと近寄ると、人ごみの影からちらりと女の人の影。
その女の人はあろう事かランサーに手を握られ、まんざらでもないようだった。
またいつものナンパかと声を描けるのを断念して、近くの港へと向かう。
あの港はランサーの釣り場だった。他の人にこの場所を聞いたのだろうが、ランサーがそこで釣りを始めてからというもの、その場所ではさほど良いものは穫れないと気がついた釣り人達は寄り付かなくなっていた。
それもこれも、召還されたサーヴァントであるランサーの幸運がEな事に所以しているのだろうけれど。
言峰の亡き今、カレン・オルテンシアがランサーのマスターなのだけれど、世話は私が頼まれている。
魔力の配分が適当だとかなんとか言われて魔力を供給する事もあった。
私は所謂魔法使いだ。魔術師の上位に存在する、魔法使い。何でも出来たし、何にも出来なかった。
だから私はこの四日間を終わらせる事も、干渉する事さえ出来ない。
それでも良いと感じたのはランサーが居るからだろう。
ああ、彼を失いたくない
「失いたくっ!ないっ!わっ!」
「痛い痛い痛い痛いいたたたた!!!」
ギリギリと彼を卍固めで苦しめるのは他でもない私。失いたくないとは言いつつもナンパをしている現場を見た事実は変わらないのでキツくお灸を据える事にした。
私の居ないところで何かをするのには何も言わないが、目の前で私に気がつかずに女の子を口説いていたというのは腸が煮えくり返るようだ。
魔力供給の頻度も少なくは無いのだから気配くらい分かるものだろうけれど。
「オメーなあ…もうちっと可愛げってやつを身にあっ痛い痛い痛い!!」
「うるさい!あんたもそろそろナンパなんてやめなさいよみっともない!」
そこではたとランサーの強ばっていた体が和らいだのを感じる。それにつられて私の力も緩くなったのだろう、ランサーが私の手や足からするりと抜け出してこちらをニヤついた顔で伺ってくる。
「妬いたか?」
犬歯をちらりと見せて笑う顔は本当にかっこよくて。少し怯んだ自分を内心叱咤した。
「私がもし妬いていたとして…そうだったら何なのよ」
わざと刺々しく言ってやってもランサーはその犬歯を隠す事は無い。それに段々腹が立って来てため息を大きくひとつついた。
「何って、なあ?」
「なあって何むっ…ん…」
ランサーが私の唇をぺろりと舐めると次の瞬間ため息をついていた口を塞がれる。
突然の出来事に私も動揺するけれど、すぐに口内に生暖かい舌が潜り込んできたからどうにも軽口でさえ言えなくなったのだ。
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