シルバーの鳴る食卓。基本的に小さくならしているのは私とシーザー。
ジョセフはいつものちゃらんぽらん加減に似合わず、少しの音も立てずにごはんをかっこんでいる。
それをスージーはにこにこと眺めている。食べないのか、と彼女に問うと、彼女は私も一応は家政婦なんだからと遠回しに断られてしまった。
空になった食器をスージーと一緒に片付けると先生が腹ごなしにエア・サプレーナ島をぐるりと一周してこいと言う。折角食事前に汗を流したのに、と私とジョセフで言うが先生はそれに聞く耳を持たない。
基本的に先生側についているシーザーは今回もいつもと同じように私たちを叱りつけて一緒に走るよう促した。

「シーザーって本当に先生っ子だよね。」

走りながらシーザーに聞くと彼は薄く笑ってそうだな。と答える。
それからちらりとジョセフを見てまた口を開く。私もそれにならって後ろに居るジョセフを見る。ほんの少しとは言え、速さに差があるのに加えてジョセフはもう既に息が切れ始めているようだ。マスクをしているからというのもあるのだろう。

「俺は先生に波紋もだが処世術もある程度教わったんだ。スラム育ちなのもあって、その辺りはどうも知識が偏っていたからな。いわば先生は俺の育ての親なんだよ。」

どこか懐かしむように笑いながら話してくれるシーザーは、母の日にメッセージカードを渡す子供のような表情だ。どこか照れていて、どこか不安なような。

「だからこそ、こんな状況になったのも仕方無いとは言え先生が傷つくのだけは避けたいんだ。」

俺が強くならなくちゃあな、と自嘲気味に笑うシーザーは格好よかったと私は純粋にそう思った。

「名前も強くなってスージーを頼むぜ。」

私を信頼してくれているのだろう。そんな事まで言って。

「私もシーザーに守られたかったし、守りたいんだけどね。」

そんな言葉はウミネコの鳴き声に遮られたけれど。

「にゃに二人で話してんのかにゃ〜ん!オレをハブろうなんてあまりにも酷いんじゃあなくてェ〜?」

急いで走って来たのだろう、さっきよりも息を切らせたジョセフが私とシーザーの間に割って入る。

「そんな大したものじゃあないよ。」

そう言って私もシーザーもジョセフのペースに合わせて走る。ジョセフは私のさっきの発言を聞いていたのだろうか。私を見てにやにやと笑っていた。


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ふわりと浮かぶのは赤色のシャボン。中にはバンダナが込められていて、よく見たらそこにリングも通してあった。

「シャボンのように華麗で儚き男よ。」

なんて、そんな言葉でシーザーの死を終わらせようなんて。
まるでシーザーの死を悼むように、シーザーに罪を背負わせるように十字に切られた石の下。そこから少量ではあるが血が流れ出ている。
ジョセフも私もそれに気がつく。
早く、早く掘り起こさないと。そうじゃあないとシーザーが。手遅れなんてそんなのは嫌だから。
しかしその岩はとても持ち上げられるものでは無い。無慈悲にも岩をこするだけになる指から血が滲む。
ぼやける視界に、絶望から鈍化した聴覚。指先の触覚はもう殆ど無い。

「シーザーを掘り起こすことは許しません。」

こんな状況でも凛と響く先生の声は鈍化した私の聴覚にも鋭利に刺さって、意識がそれに集中せざるを得なくなる。

「でも先生!」

反射的に振り向く先生の手が震えているなんて。こんなに取り乱している先生は初めて見た。

「リサリサ先生…煙草逆さだぜ。」

同じく冷静になったジョセフがそうやって言う。それを聞いてやっと逆さになった煙草に気がつく。
ああ、シーザー。貴方が守ると言っていた先生がこんなにも。
貴方の意思を汲まなければ。先生も、スージーも、ジョセフも。みんなを守り、助けにならなければ。
そのために私は命を全て燃やしても


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