「と、言う訳で一期さんのレベルがカンストしました。一軍から本丸待機への移動を命じます。」
何やら空中に浮かぶ電子画面(というらしい)が、私たち刀のパラメーターを映し出している。
その中でも斗出しているのは勿論一軍のメンバーらしい。何かあってはいけないと主は私たちにその画面を見せようとはあまりなさらない。
「私の能力はこれで打ち止め、と?」
人間の体を得て何を勘違いしてしまったのだろうかと己を恥じる。
人間とは、努力を重ねれば重ねる程それに見合った能力が付いてくるものだと思っていた。それはほぼ際限無く。
「何でそういう言い方を……。ある程度は底上げ出来ますし、システムの強化によりもっと強くなれる可能性は必ずあります。それよりも自らの今までの努力を褒めてくださいよ。」
主殿は苦く笑ってこちらを見やる。
考え方、というのは実に多岐に渡って、時に他人は自分では考えつかないような事を言う。
人間とはとても楽しいが、それ以上に難しくもある。
「そう、ですね。」
しかし自分の考えというのはこれまた難儀ですぐには曲がらない。これは性格もあるのかもしれないが。
まだしょぼくれている私を主殿はちょっと、と近くまで呼び寄せた。
一体何だ、まだしょぼくれている自分を叱りでもするのだろうか。
しかし次の瞬間主殿は少し強ばった私の体をやわく抱きとめていらっしゃった。
私はあまりの出来事にその数瞬後に今の状況を把握して少したじろいだがすぐに主殿と距離を取ろうとした。
「逃げないで、私の話を聞きなさい。」
主殿のその言葉に私はひとつため息をついてされるがままにする。
抱きすくめられるなんて初めての経験だ。弟達を抱きすくめる事はあっても、そもそもこうやって抱きしめてくれる人なんて居なかった。
抱きしめられるとこんなにも安心するものなのかと思った。
「あなたはここまで良くやって来てくれたし、きっとこれからも活躍してくれる事でしょう。私はそんな貴方に多くの期待を込めています。
しかし今回は貴方の弟達や、他の刀の育成を優先していこうというだけです。」
「はい…はい……。」
弱く頷く私の頭を主殿はゆっくりと撫でていた。なんとも情けないのかと思ったが、それで心が落ち着いたのも確かだった。
薄暗い、燭台の上で仄かに光る蝋燭しか光という光が無いこの空間で大人が抱き合っているというのもなんだかよろしくない気もするが。
「…それに、少し貴方と一緒に居る時間が増えるのも…本望ですし。」
どういう事なのか真意を測りかねる発言に主殿の顔を見上げると、蝋燭の光に照らされた横顔は赤く上気していて、何故か私も顔が火照ってくるのだった。
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