星は手が届かないから星なのだと、知ったのはいつだったろうか。
天へ伸ばした手は虚しく空を切り、それでもなお光る点をただ眺めるだけしか出来なかった。だと言うのに、彼はやすやすと言う。
星を掴もうとしないでお前は何をするのかと。彼はその名の通り、星のある天までの道を照らす輝きだった。
人はすべからく上を目指す。
上というのは物理的な上の場合もあるが、全てがそれに在らず。
たとえば社長であったりとか、人気者であったりとか。
カーストの頂点というのはとても魅力的なものだった。
「俺にとってトップアイドルとは?そうだなあ」
彼の目の前に座るのはぱりっとしたスーツに身を包む女性だ。
机にはボイスレコーダーが置かれており、秒数を刻み続けている。
毎月発行されている有名雑誌に取材を申し込まれたのはつい一月前の話だ。
今や国民的アイドルとなったドラマチックスターズは、テレビに雑誌、ラジオなど様々なところで引っ張りだこになっている。
彼らは前職が専門職だったのもあり、専門知識が求められる番組には特に重宝されている。
「やっぱ、いろんな人を笑顔に出来るアイドルのことかな!俺たちのファンだけじゃなくて、特に興味もなかった人たちが偶然俺らのライブに来て、楽しかったねって言いながら帰れるような」
楽しそうに語る彼をカメラマンが適宜撮影し、記者は要所要所でキーボードに手を滑らせている。
天道はそれを気にしないように記者の目をしっかりと見つめている。
その瞳が本当に見ているものはなんなのだろうか。彼は未だにトップアイドルにいないと、そう思っているのは明白だった。
今や彼は誰しもを笑顔に出来る手腕はあるだろう。
しかし満足をしていない。
「天道さんの思うトップアイドルは、このままの方針でその『トップアイドル』に辿り着けるんでしょうか」
「プロデューサー?」
「私は、あなたをちゃんと導いているでしょうか」
「どうしたんだよ、プロデューサー。」
心配そうに私の顔を覗き込む天道さんの瞳は綺麗な赤茶色で、何もかもを見透かされているような気さえしてくる。
彼の望むところがわからなくなっていることさえ。
歩く先は常に暗闇だ。
私はその道をランタンを持って先導して、彼を輝く高いステージへと導く役目がある。
彼は暗い道では私が照らす光を信じるしかない。彼は自ら仕事を得る訳ではないのだから。
「俺は、プロデューサーの判断に何も文句はないし、何かあったら直接言っているさ。俺にも正しいとか正しくないとかはわからない。ただ、今があって未来があるんだぜ。俺はプロデューサーと未来を見たい」
「天道さん」
空に浮かぶ星を掴もうとしないで何をするのかと軽々しく言った彼は、一点の曇りもなくそこを目指していた。
私の灯す光が揺らごうとも、それを信じるのだった。
ならば私も私の灯す火を。そしてそれを信じる彼を信じて導かねば。
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