秋の入り口。すでに冬の息吹すら感じる灰色の空。
30度近くになっていた気温は今や20度を割るようになって、街を歩く男女もアウターを羽織るようになっていた。
隣に並ぶ男は夏が似合うと持て囃されたものだったが何を隠そう秋も似合う。
襟のあいた薄手の白ニットに軽い生地のラップコート、黒のボトムとスニーカーを合わせた彼はシンプルないでたちであるのにどこか雑誌の切り抜きのような雰囲気を漂わせている。
彼一人で静かに歩いていたのなら逆ナンが絶えず来ることだろう。

「名前さん、どしたんだよ?」
「うん?うん、なんでもない」

私が隣にいるからか、周りの女性たちもこちらをちらちらを見るに留めているものの、強くピリピリした視線を背中に感じる。
もう日は暮れているからか、酒を飲んだ後の女性団体も多くみられるのもその原因なのだろう。

「ガクくん、どこか入らない?」
「…………えらく積極的なんだねえ」
「違うって、バカじゃないの?」


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