…なんでこんな事になっているのか、僕自身も全く分からない。
気がついたらこうなっていたし、もう動く事さえ出来ない。
隣の承太郎でさえもこの状況を打破出来ないだろうし、最早打破する事をあきらめている。
まさか打破する気が無い訳でもなかろう。
…ないよね?
僕は今承太郎の双子の姉に前髪をいじられている。
承太郎によく似たエメラルドグリーンの瞳とホリィさんによく似た茶色がかった髪。
人にクールな印象を与える目に通った鼻。
この兄弟の顔は本当にとても似ていると思う。顔は。
「…あのさ。」
「んー?」
「何をしているの?」
「ん〜、ふふふ」
「…」
この調子である。
承太郎はというと最初は物珍しそうに見ていたのだが途中からはもう飽きてしまったのか煙草を吸いながら退屈そうに眺めている。
彼女がいやに楽しそうにしているからやめろとも言いにくい。
いや、別に嫌な訳じゃあないんだ。
一応彼女という存在であるし、むしろ嬉しい。承太郎はそれが気に食わないのか心配なのかいつも部屋を僕と彼女二人きりにさせまいとしている。そりゃあもう頑に。
ジョースターさんも承太郎の肩を持つから本当に二人きりになる暇なんて滅多に無い。
それでも彼女は日本に帰ってからくっつけばいい話とでも言うように全く気にしていない。
おかげで僕の性欲は溜まりに溜まって…ああいや、そんな事はどうでもいい。
嬉しいにも関わらずやめてほしいと思う理由というのが
「トイレに行…」
「動かないで!」
「ごっごめん」
これである。
別に僕が尿意を催している訳ではない。
…便意を催している訳でもないが。
つまり先ほどから彼女の指が耳に当たる感覚とベッドに座る感覚しかなく、気を紛らわせる物が無い。
必然的に彼女の指の感覚に意識がいってしまうのだ。
つまり…つまり…
「おい、花京院」
「はっハイイ!!!!」
ゴゴゴ…と効果音が聞こえそうなくらい承太郎がこちらににらみを利かせる。
多分僕の異変に気付いたんじゃあないかな、顔が動かせないからしっかり目視は出来ないけれど横目から見て承太郎の視線が僕の僕である、ある一点を見ている気がする。
もちろん彼女は僕の髪に夢中だからその異変には気付かない。
それが唯一の救いであろう。
許してくれと横目で承太郎に問うと彼はため息をひとつ。
同じ年頃の男子として仕方が無いと思ってくれたのだろう。
帽子の鍔をぐっと下げてやれやれだぜ、とつぶやいたのが聞こえた。
「おい、名前」
「…なに?」
「花京院が困ってるだろうが。離してやれ。どうせもう終わったんだろ。」
「ああうん、そうだね。ごめん典明。」
「えっ!あ、うん、大丈夫だよ。」
「まあいい名前、煙草が切れた。買い物付き合え。」
「ええ…私弟の体壊す手伝いしたくないんだけど…。」
「やかましい、着いてこい。…そういう訳だ花京院。そうだな…あと三十分くらいは帰らない。」
「あっああ、そっか、ええと…い、いってらっしゃい」
「ああ」
「いってきます、典明。」
ひらひら、と手を振って見送る。
ドッと疲れた。承太郎よありがとう。
そう思いながらトイレへ向かうのに少し情けない気持ちになった。
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