「そこで次の任務なんだが…おい、名前。」
書類を手にしたリゾットがぴたりと手を止める。
名前はひんやりと冷えて行く部屋を冷や汗をかきながら感じるほか無い。
「…はい。」
ほぼ満身創痍、絞り出すように名前が声を出すと、口の中が凍ってしまうのではないかという錯覚さえ覚えた。
「ギアッチョをなんとか出来ないのか。」
流石のリゾットも少し体が冷えたのか、ぐず…と鼻を鳴らしながら言う。
しかしそこはリゾットと言うべきか、体に震えは見られない。
「いやあ…リーダーが謝るしか無いんじゃあないかなあ…。」
事は遡る事数十分前…
「ねえギアッチョ、射撃場行こうよお、射撃場ゥ〜!」
名前がソファに座って本を読んでいるギアッチョの肩をがっしりと掴み、前後に激しく揺らす。
「ギアッチョ!ねえ!聞いてる!?」
段々ヒートアップしていく名前にギアッチョは額に青筋を立てていく。
「おい」
「ギアッチョ!ね〜〜え〜〜!!」
「おいッ!!!」
「はいっ!!」
ギアッチョの突然な大声に名前は肩を掴んでいた手を離す。
ハッとしたギアッチョが勢い良く名前を振り向くと、彼女は目を大きく見開き頬をひくつかせていた。
「お、おい…」
「ん?ああ、ごめんごめん…。うるさかったよね…。」
急にしおらしくなった名前が肩を落として踵を返す。
「なあ名前!射的場…ッ」
「名前。」
焦ったギアッチョの声に被さり、落ち着いた声が名前に投げかけられる。
「リーダー?」
振り返った名前の瞳は少し潤んでいた。
しかしその瞳はギアッチョではなく勿論リゾットに向いている。
ギアッチョはそれに気付き額の青筋を濃いものにしていく。
「サプレッサー付きだ。好きに使うといい。」
投げるように名前に者が手渡される。
手渡されたそれをしっかりとキャッチした名前はそれに視線を向ける。
「わあ、ハードボーラー!すっごおい!ステンレス!軽い!!」
手渡されたモノはひどく物騒だったが、名前の欲しいものにぴったり合ったものだった。
それをリゾットは知ってて渡したのかは定かではないが。ギアッチョの心がざわめいたのは確かだった。
「それを使った任務だ、次は。」
それを聞いて雲を漂わせていた名前はその雲を晴らしていく。
「リーダーそれほんと!?わ〜!やったやった〜!」
「ああ、説明するから着いてこい。」
はあい、と子供のように返事をする名前。
ドアが閉まる直前、こちらをちらりと振り向いたリゾットが少し呆れた顔をしているのをギアッチョはしっかりと見ていた。
「リゾット…クソッそういう事かよッ!」
リゾットが言葉を発さずともギアッチョは心で理解したッ!
理解したギアッチョは少し頭が冷えたが、また別のイライラがたまったので机を蹴った。
「ねえ、部屋がひんやりしてきてない?リゾット。煽りすぎなんだって。」
段々と温度が下がって来た部屋で私とリゾットは書類とにらめっこする。
「お前が言って来たんだろう、最近ギアッチョが冷たいからと…。」
ぺらりと書類をめくり、任務の確認を進める。
次の任務は小さい規模の任務だった。これなら確かにスタンドを使うよりも素直に拳銃を使う方がいくらか燃費がいい。
「まあそうだけどォ…でも私、あそこまでしろとは言ってないじゃんか…。ギアッチョの言葉を遮るし…ちょうど良く拳銃持ってくるし…。リーダーほんとは性格悪い?」
名前が唇を尖らせそう漏らすと、リゾットは軽く苦笑した。
「さあな」
冷えた部屋から名前はちらりと顔を出し、ギアッチョに手を振る。
すると先ほどまで血液も凍るかというくらいに冷え込んで来てきた部屋が一瞬にして常温に戻り、リゾットは首を傾げる。
リゾットには分からないかもしれないが、手を振る行為は二人の間では『イベント』がうまく行くように、というサインだった。
(このサイン、任務前くらいしか使わなかったけど…。良いところで使えて、良かったかも。)
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