ふわ、とあくびをして目が覚めたのが九時。
いつもならばこれでは遅刻だと顔を青ざめさせるところだが、今日はいつも頑張っているのだからとジョルノから休暇を貰ったのだ。
カーテンを開けてからまた一度あくびをして顔を洗う。髪を整えリビングへ行くと不意に何かに躓いた。
「わっ」
つんのめる体をすぐそばの柱に伸ばした手で支えて足に当たった物を確認する。
それは腹を上にしてじたばたと忙しなく手足を動かしている。
「ああ、ごめんポルナレフ。」
亀に話しかけるなんて、ペット煩悩だと傍から見られたら思われそうだけれど今この家には私しか居ない。
くるりと元に戻してやると、鍵がはめ込まれた甲羅から人影が浮き出てくる。
何度見ても面白いと思うのだが、この亀の中には生きている…否、生きていた人間の魂が入っている。
経緯については割愛するが、私もあの時は大変な目にあったものだ。
「いつも足元に気をつけろと言っているだろうが!」
「ごめんごめん」
笑いながら亀を持ち上げてやると、ポルナレフは薄く笑って次は気をつけるんだぞと言う。
昔に比べたらえらく落ち着いたものだと思う。
「今日はえらく遅かったが…休みか?」
「まーね。ジョルノ様々ってわけよ」
のったりとしたポルナレフに合わせてリビングへ赴き、湯を沸かす。本格コーヒーなんていれるような日でもない。
インスタントの粉をカップに適量入れて沸いた湯で溶かす。
「たまには人を傷つけない日もいいものね。」
暖かいカップを両手で包みそう零すとポルナレフは薄く笑う。
これが普通の日常なのだとしたら、刺激も何もないのだろうけれど。
「まあ、しかし何事も無かったら名前とこうなる事も無かっただろうがね。」
亀には自由にごはんを食べさせてやりながらポルナレフはまた笑う。
あのとき私がポルナレフに会わなかったら…もっと遡ると、DIOに勧誘されていなかったらこうなる事はなかった…。
「不思議ね。」
口に含んだコーヒーはあのときの記憶のように少しいつもより苦く思えた。
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