ガシャン、ガシャンと歩く度に音が鳴る。
そのせいなのか、それ以外なのかは知らねえが俺はここらの犬っころ共には少し遠巻きに見られているようだった。
俺はイギー。あの凄まじい戦いの後、なんとか生き残った俺は承太郎とかいう気に食わねえ男に半ば無理矢理連れられ今は日本に住んでいる。
足を治療すると言われ次に目を覚ましたら足には何か鉄のもの(あとで聞いたが義足というらしい)がはめられていて、最初は歩きにくいったらありゃしなかった。
だが一度コツを掴めばあとは楽なものだ。承太郎達が寝ている隙に俺は家を飛び出し昔の様に悠々自適な野良犬だ。
…そのつもりだった。
「ありゃ、犬だ。しかも首輪無しじゃん。どうしたの?迷子?」
なんだこの女は。見た所ただの女であるし、日本らしい佇まいで普通の人間のようだが。
俺を抱えようとしているのか、女の両手がこちらに伸びてくる。反射的にザ・フールを出すが、女はそれさえも目視出来ていないようだった。
本当にただの、どこにでも居る女子高生のようだった。
そんな事を考えていたからだろう。少しの隙に抱きかかえられてしまった。抵抗するにも一般の、しかも犬好きの奴にスタンドは使わない主義だ。
また隙をついて逃げればいい。そうして俺はため息をひとつついてされるがままになった。
ーーーーー
「おーいブチ、ごはんだよ」
ペットフードを持ってくる名前に俺は喜んでなんていねーぜというそぶりをしながら近付く。
名前はもちろんそれに気がついている筈も無く、おーよしよしとこちらを撫でくり回す。
ところでブチとは俺の名前らしい。首に付けられた首輪は赤色で、本当に何でもかんでもやりたい放題な奴だ。
あまり美味くも無いペットフードをペロリと食い切って、眠たそうにソファに横になる名前の腹にどっかりと座ってやる。
眠たげに目を閉じていた名前は不意にはっとしたように目を開いてこちらを見る。
「そういやさ、学校の友達?知人?…まあいいや、その友達にね、最近犬を拾ったんだって話をしたら一度見てみたいなって言われたんだ。お散歩のついでにいつもの公園で落ち合おうって言ったから、ブチもそのつもりしててね。」
犬に話しかけるなんてどうかしてるんじゃねえのかとも思うのだが、名前はそういう奴なのだ。種族なんてまるでどうでもいいかのようにフレンドリーに接してくる。
だから友人が多いようなのだが、その人間に対してはなんだか歯切れが悪いのが気にかかった。そんなに近付き難い奴なのだろうか。
「ちょっと怖い人だから、ブチも怖がらないでね。失礼だから。」
それだけ言って俺の頭を撫でて名前は少しだけ眠った。
ーーーーー
「ごめんなさい、空条くん。待った?」
その公園には全く予想もしていなかった人間が待っていた。
その半端ではない威圧感、貫禄は忘れもしない空条承太郎であった。
「…イギー」
やっぱりなという顔をした承太郎がこちらに歩いてくる。
少し怒気もはらんでいるその声に俺は身構え、ザ・フールを出す。
俺はこの生活がなんだかんだ気に入っているんだという意思表示を兼ねていた。
「…?イギー?もしかしてこの子、空条くんちの子だったの?」
何がなにやらという様子で俺と承太郎を交互に眺めている名前はどうにも頼り無さげで、俺が守ってやらなくてはと犬ながらにして思ったのだ。
「ふん、スタンドを出すか。ああ、いい。お前がそれでいいのなら俺は何も言わねえよ。邪魔したな名字。」
「え、え?ど、どういう事?」
未だまごつく名前が持つリードを引っ張るように先導すると名前はそれに引っ張られていつもの散歩コースへと戻って行く。
残念かもしれないが俺は何故か残ったこと人生をコイツに注ぐんでな、と承太郎に視線で話しながら。
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