朝、目が覚めるといつも隣にあるぬくもりが抜け落ちたように無くて。
まだ半分夢の中な意識で周りを見渡すと、彼が居た所のシーツはまだ少しだけ温かかった。
「フーゴ知りません?」
気もそぞろのままアジトの扉を開けると、ブチャラティとフーゴ以外のメンバーが暇そうにパスタをつつきながら喋っていた。
ブチャラティは多分また近所を見回っているのだろう。それよりも目当てのフーゴが居ない事に焦燥を覚える。
「フーゴォ?知らねーよ。お前の方が知ってるんじゃあねえの?」
ミスタがめんどくさそうに答える。答えてくれるのは嬉しいけれど、せめて口の周りのソースを拭いてからにしてほしい。
「そうですか。ちょっと近所のバール覗いてきます。ありがとうございます、ミスタ」
ベルを鳴らしながら開くドアに体を滑り込ませて外へ出る。裏路地に出てからいつものようにバールへ向かった。
「つってもよー、どうせすぐ帰ってくるんだからここに居りゃあいいのに」
皿に残ったパスタを器用にフォークで掬い啜りながらぽつりとミスタが零す。
それにブチャラティが苦く笑いながら自分用のパスタを注文しておしぼりで手を拭いた。
「ま、カップルなんてそんなもんだろ」
「やっぱりここに居たんですね」
アジトと化したバールから少し歩いた別のバールに彼は居た。
静かな場所を好む彼はしばしば訪れるこのバールはコーヒーが評判になっている。
「ああ、名前。どうしたんですか」
残り少ないコーヒーの入ったカップを傾けてから、フーゴは手元に置いた分厚い本にしおりを挟んで閉じる。
テーブルを見回すと、コーヒー以外のものは無くてそろそろバールを出ようという所だったようだ。
「え、いや…その…起きた時にフーゴが居なかったのでちょっとパニックになっちゃって…」
急におろおろとし出した名前にフーゴは薄く笑って向かいの席に座るよう促した。
名前はそれに従ってフーゴの向かいの席に腰を下ろしてテーブルに置かれた存在感のある本に目を滑らせる。
難しそうな単語の羅列に目を回す名前にまたフーゴは苦く笑う。
「パニックになると外見冷静になるの、なんとかならないんですか」
「えっ、冷静に見えますか?結構呂律とか回ってなかったかなって思ってたんですけど…。」
「呆れるくらいにいつも通りです。むしろいつもよりテンション低そうに見えます。」
自分と居るとIQが低そうに見えて可愛いけど、というのはいわないでおくフーゴだった。
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