恋、とは。甘酸っぱくて、学校の帰りにちらりと愛しの人を眺めてみたり、大胆に手をつないでみたり…なんて想像をしたりするものだと私は思っているし、そうでないものは恋ではないと思ったりしている。
という話を酒片手に若者三人にしたら三者三様の反応をされたのは分かっていた事だ。
承太郎は帽子の鍔を限界まで下げて真顔、花京院には激しい同意を貰っている。ポルナレフは大声で笑い転げているが…。
そもそも何でこういう話になったかというのは、そこで笑い転げているポルナレフが発端だ。容易に想像出来るだろう。ポルナレフがその分離した下半身で下賤な話をし始めたのだ。
そこから転げ転げて青臭い青春の話になったのだ。というのも、私と花京院が漫画のような恋にあこがれを持っていたのが原因のようにも思う。

「ねえ、一応言っとくけどこれが一般の恋じゃないのは分かってるから。私の理想ってだけ。オーケー?」

たしなめるように言うと、笑いの波から脱出したらしい承太郎が私から目を逸らしつつ口を開く。

「良く分かった…。テメーの理想が高すぎる事と…何でテメーに彼氏が出来ねえかってのもな。」
「余計なお世話だっつうの。」

はあ、とほろ酔いでいい気分になって承太郎を小突く。
すると花京院があふ、とあくびをしたので今日はこの辺でお開きという事になった。
床に散らばった空き缶空き瓶を私と承太郎でひとまとめにしたら彼らは自室に戻っていった。

「ね、まだお酒あったっけ?もう少し飲んでいたいんだけど…。」
「冷蔵庫にあっけどよォ、オメー…飲み過ぎると明日に響くぜ」
「うるさい」

理想の恋をかたったところで所詮今は旅の途中できっと留年だってしてしまうだろう。そんな恋できっこない事は重々承知だ。

「ところでよ〜〜〜…さっきの話だけど、あれほんとに思ってんのかよ?」
「……悪い?」

ポルナレフが酒をあおりながら聞いてくるので、私も冷蔵庫から缶ビールを取り出しながら答える。
全く素面では考えられないような赤裸裸な話をしているとは思うが、なんせ今は酔っているのだ。深く考えないことにしよう。

「悪かねえ…とは思うけどよ、これは一例だぜ?もし、もしよ。苦楽を共にした戦友と恋をして、それから二人でまた違う苦楽を乗り越えるってのは……どうおもう?」

そんなことを聞いてくるポルナレフに私は面食らってそちらを見るが、彼の顔は大きく傾けられた缶で隠れて伺う事は叶わなかった。

「……そう、そうだなあ。けっこ〜〜〜…カッコいいんじゃあない?少年漫画みたい。」
「だろ?」
「ねえ、もし…もしも!もしもの話だけど…。恋に恋してるような女の子が…かなり信頼を寄せていた人に遠回しに告白されたとする…。それで初めて私は…いや、女の子は…その人の魅力に気付くの。でも、でもね、まだ戦いが終わるまでは私情を挟みたく無いの…。もう少し待ってもらえる、と…思う?」

ぐい、と酒を煽って、手身近にあった雑誌を暇を持て余すようにぱらぱらとめくる。気付けば指先もほんのり桜色に染まっていたが、それは酒のせいなのか、他に原因があるのかは定かではない。

「ああ…待つさ。全てが終わるまで。それまでその女の子と信頼の人は友達として互いを知っていけばいい…。それも愛の形ってもんよ」
ほろ酔いの私たちはそれぞれ自分のベッドに身を投げ出してくすくすと笑う。
「そうだね!ありがとうポルナレフ…私…」


しん、とする室内。不思議に思い、隣のベッドにちらりと視線を寄越すと、すうすうと寝息がたっていた。
俺ははあ、とため息をひとつ吐いて彼女をベッドにしっかりと寝かせてやる。

「…Ti amo…名前…」

ほとんど吐息と一緒にそうつぶやいてから自分も布団にもぐる。
早くこの旅を終わらせないといけない。少しだけ浮ついた気持ちでそう思った。


恋に恋して、君に恋した


(お題:確かに恋だった様より)


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