アンダンテ01


 ミアレシティは広い。
 カロスで一番広いのはカロス地方の人々に取っては当たり前のことで、一生をミアレで過ごすような人もいる。
 それくらい便利で広い街だ。
 あいつの言った通りだな。
 エイヴァルはそんなミアレの街並みを見ながら、思った。
 彼は先日タチワキシティから幼馴染の父親の運転する船で、カロス、というよりミアレシティを訪れたばかりだった。
「ヒウンシティより広いかもしれないな……」
 そんなことを呟き、エイヴァルは傍らを歩くモココとミジュマルに話しかける。
「で、ポケモンセンターは何処だ?」
「めぇ」
「ミジュ?」
「そうか、俺もだよ。さっぱり分からない、困った!」
 困ってなさそうに大声で笑って、エイヴァルは歩を進めた。
「まぁ、頑張って歩いてりゃ何時かは着くだろう!」
「めめー!」
「ミジュジュ!」
一人と二匹の姿がゆっくり雑踏に消えた。


「お使い?」
「ええ、どうしても、ハクダンシティの知り合いに届けなくちゃいけないものがあって……。カフェの仕事シフト入れちゃったばっかりで変更もできなくて……いきなりでごめんね」
 眉を潜める母親にそれはいいけど、と少女は返した。そして続けた。
「でも、ポケモン出るんでしょ?」
 ポケモンを持っていない者は草むらには入ってはいけない。この世界の共通のルールであった。無論たまにそれを侵そうとする者もいたが、常に周りが気をつけているため今のところ大きな事故に繋がったことはない。
 そして、少女、クロワはポケモンを持っていなかった。
「それなら安心して、知り合いに頼んで捕まえてきたのを急いで持ってきてもらったから!」
「ええ!?本当!?」
「本当はどんなポケモンがいいか聞いておきたかったし、この街って博士がいるからそこに頼んでもよかったんだけど……」
「ううん、嬉しい!どんなポケモン?」
「貴方が出すのよ」
 母親はにっこり笑って、一個のモンスターボールを彼女の掌に置いた。
「え、えっと……」
「ほら、それを投げるの!」
「こ、こう……?」
 軽い曲線を描いて着地したボールから出てきたのは、
「デデ!」
「うっわあ……可愛いい……!」
「本当ねぇ、デデンネっていうらしいわよ」
「デデンネ……」
「デネ?」
 呼んだ?とでも言うように首を傾げるデデンネは誰が見ても愛くるしかった。
「よろしく!デデンネ、私はクロワだよ」
 デデンネは一瞬真顔でクロワを見た後嬉しそうに飛びあがってその肩に乗った。
「デネネ!デネネ!」
「私の名前呼んでるのかな?」
「きっとそうよ……それで本題なんだけど」
 これがその日同時にミアレシティで起こったことだった。
 何処にでもある、誰にもある。何かのきっかけ。
 運命というには稚拙な、始まり、そんなできごとだった。


【131122】