アンダンテ05
自分の選んだ五人の子供達との面会と話を終えたプラターヌはふう、と息を吐いてデスクの椅子に座った。
「なかなか有望な子達じゃないか」
その前にコーヒーの入ったマグカップを置きながら、赤い髪の女性は微笑んだ。
「そうだね、アスナ」
「なんだい」
「好きだよ!」
「あ、ああ……」
アスナと呼ばれた女性は少し顔を赤くして俯く。プラターヌは満面の笑みで続ける。
「いい加減慣れてよ。そんな君も可愛いけ」
「わ、分かったから!」
アスナが少し声を荒げた時、
「あのっ」
聞こえた声にぎょっとしてアスナが振り向く。プラターヌも気づいていなかったようで目を丸くして少女を見ている。
「聞きたいことがあるんです!あ、私クロワっていいます。えと、ぷ、プラターヌ博士はポケモン詳しいんですよね……?」
プラターヌは唸りながらパソコンを開いていた。
「どうだ」
そんな彼に二杯目のコーヒーを運んできながらアスナもパソコン画面を覗き込む。
「というか、なんでちゃんとしたサイトじゃなくて掲示板なんだ」
「意外とこういうとこに有益な情報があるんだ。特にクロワちゃんが持ってきたような話はね、ほら、これ」
プラターヌがスクロールすると画面に『ポケモンが進化しないんだけど……』という見出しの書き込みだった。
そのスレッドには『進化キャンセルしたんじゃ?』や『かわらずの石持たせてない?』という基本的な返答が書いてあったがスレッド主の返答は『否』だった。
そして次の行には、
『真っ黒な男に会ってからどうもおかしくなった気がする』の一文があった。
「これって……」
「クロワちゃんの話と一致するね。ふむう、ナナカマド博士は進化する時ポケモンが何かしらのエネルギーを出しているという説を提唱したという話はしたよね、アスナ?」
「ああ」
「これは仮説だけど……その男がポケモンが持つそのエネルギーを奪ったとしたら……?」
「そんなことが可能なのか?」
「仮説だよ。でも、クロワちゃんのコフキムシはもうコフーライになってもおかしくないレベルではあった。本当に進化が止まっているとしたら……」
「一大事じゃないか!」
「そうだね……でも、掲示板でしか噂になってないように、たいして取り上げられてない。本当に可能かどうかより、その男が何をしたいのか、の方が僕は気になるよ。今のところはあの人しか頼れる人がいないな……。カルム君達は忙しいし……」
「しかし、あのクロワという子、強いな」
「何か聞こえた?」
「あの真っすぐな目だよ」
「ああ、そのことか」
プラターヌは頬杖をついた。
「とにかく僕達は僕達でできることをしないと……」
「シャラシティのメガシンカ親父さん……」
タウンマップでシャラシティの場所を確認しながら、クロワは家で旅支度をしていた。母親はまだカフェの仕事から帰っていないようだ。言い方は悪いが、好都合だった。
きっと止めれるから。黙って出ていく。三つのモンスターボールを見て言った。
「友達だから。ほっとけないから、行くね。ごめんねお母さん」
例え出会ってから短くとも。ほっとけない。ほっといていい訳がない。
腰にモンスターボールをセットすると、クロワは家を出た。
【131127】
紅葉さん宅アスナさんお借りしました。