アンダンテ06


「冗談じゃなく広いい……」
そろそろ余裕がなくなってきたエイヴァルは、今日はホテルに泊まろうと先ほど見かけたホテルに行こうとしたのだが、案の定というべきか、迷っていた。
「タクシー使いたくないしなあ……そもそも金あんまり持ってないし」
ボリボリと頭を掻きながら、嘆息する。丁度その時だった。
「あの、すみません」
「?」
一人の少年が声をかけてきた。
「こーんくらいの、ピンクの髪で、ツインテール。知りませんか?」
「は?」
「あ、人探し」
なるほど。エイヴァルは少年に聞かれた少女を記憶の中で探ってみるが、どうも思い当たらなかった。
「すいません、知りませんね」
「そっかー、家出するような子じゃないんだけどなあ」
「家出?」
「うん、あーすいません、俺テルロっていいます。ていうか敬語なしでいい?」
「あ、はあ」
大分マイペースなタイプのようだ。
「俺はエイヴァルです。バンドやってます」
「ああ、じゃあその眼帯ファッションか」
「ん、まあ」
「あー、あちゃー教室の時間だ。どうしようかなあ」
「教室」
「ちょっとバレエを。どうしよう……」
「その家出した子のことですか」
「クロワっていうんだけど、俺がポケモンをその子のお母さん経由であげたんだ。それでハクダンまでお使いに行ったんだけど……戻ってこなくなっちゃって……」
そんな子じゃないんだけどな、とテルロは溜息を吐く。その行為はエイヴァルのお人好しの血を疼かせるには十分だった。
「俺探してきますよ」
「本当!」
「こんなことで嘘つきませんよ。クロワって名前で背がこんくらいのツインテールの子ですよね?」
「うん、いや本当悪いな。……ああそうだ!」
「?」
「これは
誰にも言っちゃ駄目だぞ……?」


「うわー本当だ……」
目の前を飛び回るオンバットの群れを見てエイヴァルはあんぐりと口を開けた。
「でも、仲よさそうだなあ……」
場所はミアレ出版の裏。気に入ったら一匹連れて行くといい、とテルロには言われたがじゃれつくオンバット達を見ていると胸が痛んだ。 その時、エイヴァルの腰のボールが動いた。
「ホイーガ?」
手持ちの一匹であるホイーガだ。メリープ、ミジュマルと合わせて他にもマタドガス、が今のエイヴァルの手持ちだった。 ホイーガをボールから出すとホイーガはのろのろと草むらの隅に進んだ。 不思議に思いながらも着いて行くと一匹のオンバットが座りこんでいた。丈が高い草むらの中なので一見見えない位置だ。遊び回るオンバット達からも見えていないのかもしれない。
「お前、仲間外れにされてるのか?」
そう言った瞬間オンバットがエイヴァルに突撃してきた。
「いってぇ!ちょ、なんだよお前!!」
「バァッ!!」
オンバットは草むらに着地しふんぞり返った。
「バァッ!ババ!」
首を振り、最後にビルに挟まれた外を指差した。
もしや。
「お前、外に出たいのか?」
「バッ!」
またふんぞり返る。どうやら相当プライドが高いようだ。
「じゃあ、さ……一緒に行く?」 オンバットは品定めするようにエイヴァルを見ていたがはあと溜息を吐き、今度は胸を叩いて、ご機嫌になった。どうやら『しょうがねぇな、行ってやるよ』という意志表示のようだった。
「ボールはそうだなぁ……さっきたまやで買ったゴージャスボールでどうよ?」
「バァ!」
どうやら外してなかったらしい。モンスターボールにしてたらまたたいあたりされてたかもなあ、とエイヴァルは苦笑した。その横でホイーガはやれやれ、というように首を振っていた。


【131129】

うわまにさん宅テルロさんと設定お借りしました。