アンダンテ08


 ショボンヌ城という城が臨めるその街で、クロワとカルムはセレナと落ち合った。
「アタシがセレナ……と言っても分かるわよね。まあ実際会うのは初めてだけど」
「うん、よろしくね」
 ホロキャスターの時も思ったけど綺麗な子だなあ。クロワは納得する。カルムもかっこいいし、選ばれる人っていうのはこうなんだろうな、とぼんやりと思った。
「それで、それがコフキムシ?」
「うん」
 セレナはクロワの抱きかかえるコフキムシを検めるように見ると頷いた。
「確かに進化してもおかしくないレベルね。前兆もないのよね?」
「うん、全然進化しなくて」
「黒い男についてはトロバの報告を待つしかないね」
 カルムの言葉にはっとセレナは思いついたように言った。
「そういえば……ミアレシティで真っ黒な男の人にアタシ、会った気がする……!」
「本当かい!セレナ」
「記憶は定かじゃないし、その人かは分からないけど、フラダリカフェの方にそんな人が入って行くのを見たわ」
「フラダリさんの喫茶店?」
「ええ、あそこは商談の場にもされるみたいだから不思議には思わなかったんだけど……真っ黒だったわ」
「……私、ミアレには……」
「どちらにしろもうカフェにはいないでしょうし、ミアレから探すのは無理な話よ。ただ、メガシンカ親父さんに会って問題が解決しなかったら選択肢の一つとして覚えておいてもいいと思う」
「じゃあ、クロワは真っすぐシャラシティに向かった方がいいね。コルニ、って子を尋ねるといいよ」
「カルム達は来ないの」
「オレ達はメガシンカの可能性を聞く為にコウジンシティに向かう予定なんだ。大丈夫、クロワは自分が思ってる以上に強いから」
「一人じゃないものね」
「デネ」
 その通り!とばかりにデデンネが踏ん反り返った。
「デデンネ……」
 クロワはデデンネを見つめた後、頷いた。
「私、必ずこの子を進化できるように戻してあげる!」
「その意気だよ!」
「じゃあ、クロワは急いだ方がいいわね。お母さんも心配しているだろうし」
「うん、じゃあ二人共、本当にありがとう!!」
 クロワが走り去った後、呟いた声があった。
「よくもまあ、やるもんだよ」
 黒い男は実は、三人のすぐ近くにいた。建物の影なので三人の誰も気づかなかった。
「……さて、残ったガキ共が散ったら僕もぼちぼち行きますかね」
 軽く伸びをして、愚痴るように呟いた。
「レンゴクの奴……本当に人使いが荒いよ」


【131202】