ア・ピアチメント04


「ふむふむ、ソーガはポケモントレーナーになったばかりなんですね!」
 アリマの言葉にソーガは頷く。
「はい、オスカー君のお蔭で」
「それなのにイワンコもピチューもよく懐いてますね」
「これは……あー、はい。というかピチューは俺のポケモンじゃないんで」
「はは、そしてオスカーは図鑑を完成する旅に、という訳ですね」
 話が自分に向き、オスカーはふんぞり返った。
「ま、俺にかかりゃー捜し人も図鑑もラクショーだがな」
「あはは、自信家なんですね。そんな君たちに、これを」
「……卵?」
 差し出されたそれを受け取り、アリマを見ると穏やかに笑っている。
「俺からの選別です。仲間は多い方がいいでしょう?」
「ありがとうございます!」
「……ども」
「それでは、君たちの旅が実り多きものでありますように! ボン・ヴォヤージュ!!」
 手を振るアリマを二人も手を振り見送る。受け取った卵からはなにが産まれるのだろう。
「あの人が最後に言ったのカロスの言葉だな。いい旅をみたいな意味だったか」
「そうなの? オスカー君詳しいな」
「……」
「オスカー君?」
「オスカー」
「は?」
 聞き返され、イライラしたようにオスカーは頭を掻く。
「オスカーでいい。君ってつけられると、痒い」
「えっあっ」
「じゃあ、そーゆーことで。おら、せせらぎの丘行くぞ」
「あ、う、うん!」
 二人は4番道路へと向かう道へと歩き出した。



 数十分後、オハナタウンの地を二人は踏みしめた。
 ポケモンセンターに向かい、歩みを進めながら会話する。
「そういえばオスカーのお母さんとかお父さんってどんな人? 兄弟はいる?」
「あー……母さんはいい人だよ。それでも分かってくれないとこ、やっぱあるけどな。親父はクソヤロー」
 吐き捨てられた言葉にソーガは苦笑する。
「はっきり言うね」
「まーな。兄弟、兄弟は……二人いる」
「へー! ねえねえ兄弟がいるってどんな感じ?」
「なに食いついてきてんだよ」
「だってだって!」
「二人共家にはいねぇよ」
「……え」
「一人は就職して、一人は勝手に出て行った」
 二人の間に沈黙が落ちた。
「なんか言えよ」
「ごめん……」
「そういうことじゃなくて」
 オスカーは溜息を吐いた後、薄く笑う。
「俺が気にしてないからいいの。出て行きたくなる家だっていうのは分かるし、長男の方は苦労してたからな。俺もあの家で終わる気はないし」
「そうか……」
「我ながら養ってもらっておいて都合いい考えだと思うがな」
 ぴた、と歩みを止める。
「オスカー?」
「そんで悶々としてた時に、お前が現れたんだよ、ソーガ」
 ソーガの目が見開かれたのを見て、にひひ、と意地悪く笑う。
「お前がいなかったら、こんなに早くメレメレ島から出ることはなかっただろうってことさ」
「オスカー。でもそれは、時期が早まっただけで、君は遅かれ早かれこうしていたろうさ……」
「かもな。でも今の俺をここに立たせてくれているのは間違いなくお前だ。それは感謝してる」
「……」
「だから光栄に思いやがれよな!」
 後半恥ずかしくなったのか吐き捨ててオスカーはポケモンセンターに走っていく。
「……オスカー」
 だからその後の言葉はオスカーには聞こえなかった。
「俺はそんな感謝してもらうような人間じゃない……」 


【170319】