僕らの大都会闘争06


「いやでもだって、まさか」
「可能性は全部潰すんじゃなかったの……?」
「でもさー読者モデルもモデルだろ?そんな知名度落とすようなことするかなぁ……」
 壁際により会話をしながらフェーナは視線の先。読者モデルのメイアを見やった。可愛い。普通に可愛い。
「ていうかリラはなんで撮影日程なんて知ってたんだろうな」
「ん?」
 別れ際にリラに告げられたビルに向かうと撮影機材が丁度搬出されているところだった。人だかりができる前に来れたので群衆の最前列をキープできている。ありがたいが、腑に落ちないところもあった。
 いけ好かない、とメイアのことを差していた癖に。
「ていうか、こんな感じで話なんてできねぇだろ……」
 周りを見ると、それこそ老若男女集まっている。きらきらした目でメイアを見る少女。楽しそうに見守るお爺さん。ファンらしい男性達……。
 とてもではないが貴方ヤヤコマでメガチャーム盗みましたか?と言える感じではない。肉体的というか社会的に殺されそうだ。
 そもそもこの仮説自体がかなり弱いのだ。詰んでいると言えた。思わず溜息が漏れた。
 ……チーン。
 そんなことをしている間に、エレベーターが上から降りてきた。中から人が出てくる。
「……あ」
 ドラクロワが珍しく目を見開いた。フェーナは逆に一瞬、フリーズした。
「あん、ぐる……!?」
 久しぶりに見た隣家の少年。髪型はセットして服も小綺麗だが、どう見てもアングルである。アングルの方は観衆にさしたる興味は払っていないようで、二人に気づかずメイアに近づいていった。
「よろしくお願いします、先輩」
「君がアングル君? よろしくね!」
 当たり前のようにメイアに受け入れられたアングルに、開いた口が塞がらない。
「アンッ……」
「出よう」
 思わず叫びかけたフェーナを止めるように手を引っ張ったのはドラクロワだ。引きずられるまま、二人はビルを出た。
「……どゆこと?」
 オトンヌアベニューを歩きながら、やっと落ちついたフェーナが呟いた。
「読者モデルに……なったんだね……」
「いや、それは……そう、なんだろうけど」
「話して、欲しかったね……」
「うん……」
 付き合いが短い自分でさえも多少なりともそこにショックを感じるのだから、幼馴染であるドラクロワはさぞや悲しいのだろう。さすがにクールベもそれを知ったらショックは大きいだろう。
「なんか結局話聞けなかったけど、どうしよっか」
「ソレイユに、行ってみない?」
「ソレイユ? 警察が大体調べちゃってると思うけど」
「調べるのは……場所じゃない」
「え?」
「人……カルネさんがいるかもしれない。アングルのことは……次会ったら聞こう?」



 タイミングがいいというか、カルネは本当にソレイユでお茶をしていた。向かいではキルリアが優雅に座っている。
「あら?」
 カフェに入ってきたフェーナを目に留め微笑む。
「貴方、事件の日ここから飛び出して行った子ね」
 覚えていたんだ。
「フェーナ、です……」
「フェーナ君ね、お隣は」
「ドラクロワ……です」
「二人共素敵な名前だわ」
「あの……」
「事件のことが聞きたいのかしら」
 初めて見た時も思ったが美しく輝きに満ち溢れた人だなあと思う。先ほどの読者モデルメイアは確かに可愛いが、こういう人とは方向性が違うような気がした。
「お願いします。出しゃばってるって分かってるけど。何かできるならしたいんです」
「そういうことなら協力するわ。その前に」
 コーヒーを啜るカルネ。閉じられた目を開き、ころころと色を変える海のような瞳でフェーナを射抜いた。
「私とポケモンバトルしてくれないかしら、協力してくれるならどんな人か知っておかないと」



「行けアメタマ!」
 代表して戦うことにしたフェーナがアメタマを繰り出す。最近ボールから出してないからかアメタマは速く戦いたいとばかりに相手のキルリアをつぶらな目で見つめている。
「始めましょう」
「はい! ……アメタマ、でんこうせっか!」
「キルリア、みらいよち」
 何かを願う姿勢を取った、キルリアにアメタマの小さな体がぶつかる。微かによろめいたキルリアにカルネは更に指示を与える。
「あやしいひかり!」
「かわすんだ、アメタマ!」
「……アメッ」
 遅かった。かわしきれず光を直視してしまったアメタマがくらくらしだす。そして次の瞬間。
 みらいよちに寄る一撃がアメタマに炸裂した。



「アメタマ! ……ごめん」
 みらいよちで瀕死になってしまったアメタマをボールに戻しフェーナは悔しそうにボールを撫でた。その後カルネに向き直り、お辞儀をする。
「さすがチャンピオンです……強かったです」
「いいえ、貴方の指示は適格だったわ。それに、貴方は悔しさも優しさも忘れない。きっと素敵なトレーナーになるわ」
「え……」
「私ね、メガシンカも好きだけれど、ポケモンは絆が一番大事なんだと思うわ」
 カルネはキルリアの頭を撫でる。キルリアは嬉しそうに体を揺らす。
「絆……」
「だから、ポケモンを泥棒に使う行為はとても悲しいことだと思うわ」
「はい、俺もしてはならないことだと思います」
「やっぱり真っすぐでいい子ね。貴方達にだったら頼める」
「……?」
「私の知り合いのヒャッコクの探偵さんが今ミアレにいるんだけど、今回の事件も調べていてね。彼の手伝いをしてもらえないかしら」
「手伝い……?」
「いろんな仕事をかけもちしているから、ミアレの調査とか聞きこみとか力になってくれないかなって」
 フェーナとドラクロワは顔を見合せ、頷く。本職の人物と関われるのは願ってもないことだった。
「それと、この子も連れてってくれないかしら」
 カルネはキルリアの肩に手を置く。
「私は女の子の方のサーナイトがいるから、この子はきっとボディーガードになってくれるわ」
 女の子の方のサーナイト。
「♂なんですか……」
「ええ」
 悪戯が成功したように微笑むカルネだった。


【140508】