僕らの大都会闘争07
「君たちがそうか。カルネから話は聞いている」
体格のいい褐色肌の男はフェーナとドラクロワを見つけると自分から声をかけてきた。
「クリストバルだ。好きなように呼んでくれ」
「フェーナです」
「……ドラクロワです」
「早速だが、犯人の様子を見に行くぞ」
「はい……っええええ!?」
「どうした」
余りにも簡単に吐き出された言葉に、フェーナはのけぞって驚く。
「もう犯人……分かってるんですか」
ドラクロワが尋ねるとクリストバルは頷いた。
「三日程前に目星をつけた」
「……」
「どうした」
「いえ、やっぱり真似事じゃ駄目ですね……」
大人は凄いな。少し落ち込む気分だ。
「そんなことはない。私に辿りついたことで犯人を知った。君たちは真実を掴んでいる」
「他の仕事は明日手伝ってもらおう。今日は念のためその犯人だけを教えておこう。ただし勝手に接触などしないように」
「はい」
「……はい」
「いい子だ」
クリストバルは初めて笑顔を見せた。想像より笑顔は幼かった。
「……え」
先導され辿り着いたビルには見覚えがあった。
「ここで写真を撮っている、メイアとアングルという読者モデルが怪しい」
「アングルがっそんなことっ」
「待って……」
叫びかけたアングルをドラクロワが止める。
「ドラッ」
「……後で本人に聞ける。騒ぎを起こすべきじゃない……こんなこと、僕も不本意だ」
珍しく強い語調で囁かれ、フェーナは黙った。言うことは最もだ。それにドラクロワも我慢しているのだ、自分が走るべきではない。
「どうした?行くぞ」
「はい……」
複雑な心境を胸に抱えたまま、ビルに足を踏み入れることとなった。
「……茶髪の男がアングル、橙色の髪の方がメイアだ。メイアの方はそれなりに有名だから知っているな?」
「はい」
メイアより、ファインダー越しに笑うアングルを見ている方が胸が痛い。
(そういえば……)
アングルはあの事件の日、カルネを初めて見かけながらも声をかけなかった。
(いや、関係ないよ……。アングルがヤヤコマを持ってないことだって、そもそもそんなことする奴じゃないうってことは、よく知ってる)
モデルのアングルは知らないが、普段のアイドルはとても活発で、それでいて面倒見もいいことはよく知っている。
「よーし、じゃあ予定通り、それぞれのポケモンと一緒に撮ろうかー」
そんなことをしている内に、今度はポケモンと一緒の撮影が始まったらしい。アングルがモンスターボールを、メイアがゴージャスボールを投げる。
出てきたのはプテラと。
「すげー……あれが色違いか」
群衆の誰かが呟いた。通常と配色の違うヤヤコマはボールから出て軽く旋回しメイアの肩に止まった。
しかし、そこで予期せぬことが起こった。ごとり、と重い音がして、ヤヤコマの羽の間から何かが落ちた。
「おい、あれ……」
「メガチャーム?だっけ?カルネさんの。なんかそれに似てね……ニュースで見た……」
そう、羽をあしらったようなパーツに、綺麗な石がはまったチャームのついたネックレス。盗まれたカルネのメガチャームに酷似していた。メイア本人も呆然としているようだった。周りもである。しかし、メイアのそれは一瞬だった。ローファーが床を蹴る音。次の瞬間には彼女はビルから外に飛び出していた。
「逃げた!」
「お、おいどーする!」
「つ、捕まえる!?」
「警察でしょ!」
にわかに騒がしくなった現場を後に、フェーナは思わず飛び出していた。後ろでクリストバルが叫んでいたが、足は止めなかった。
何処に行った?辺りを見回す。その時、噴水の隅に見覚えのあるものが移り込んだ。
「リラ?」
呼びかけると俯いていた影はびくっとなった。
「どうした?珍しく元気ないみたいだけど」
「もう、おしまいよ……」
「なにが、……え」
リラの服は先ほどメイアが着ていた学生風の服装に酷似していた。全く同じと言っていい。そしてその足元には、橙色のウィッグが落ちていて。
「……君は、誰?」
思わず呟くように尋ねると、メイアの目に、じんわりと涙が滲んだ。
「……メイア」
【140509】