僕らの大都会闘争08


 落ち着いて、きた頃メイアは泣きながらぽつりぽつりと話し出した。自分の本当の名前はメイアで、読者モデルのメイアと同一人物だと。軽い気持ちで変装してオーディションに応募したところ、受かってしまい、この仕事を初めたということ。
「最初は嬉しかった……。でもメイアなんて化粧で厚塗りした偽物よ。私じゃないっ……」
「でも、君はメイアなんだろ……」
「カフェやレストランで、名前を呼ばれるとみんな笑うのよ。同じ名前だけど全然違うねって。聞こえよがしに……っ」
 だから、リラと名乗るしかなかったのか。本当の名前はメイアなのに。
「……でも、君は犯人じゃない」
「!……気休めはやめて、あの状況で」
「何か理由があったんだろ? 俺の知ってる“メイア”は口は悪いけど、そんな他人を傷つけることをする奴じゃないと思ってるよ……」
「そんな、ふわふわした理由で?」
「んー、そう思うんだよ。もう他人じゃないからさ」
 メイアはじっとフェーナを見つめた後、ぽつりと漏らす。
「ヤヤコマ、貰ったのよ。あいつから……」
「え?」
「誰かが事件について聞いてきたら、メイアに誘導しろとも言われたわ……。大丈夫君はやってないんだから、それくらいいいだろう?って」
「誰に!」
「俺だろ」
 背後から乾いた声がした。瞬時にその人物が誰か分かってしまった。体が震える。それでも違うかもしれない、とゆっくり振り向く。
「よう」
「クールベ……?」
 別れて半日した経たないのに、見たことのない表情で、友人が立っていた。
「まぁさかこんなにうまく行くとはね〜?広告塔見た?メイア、お前緊急手配されてるぜ?」
「……!」
「ああ、ウィッグ取っても駄目だかんね? “リラ”と同一人物だっていうのも報道されてるよ〜? そっちの方で文書いてた雑誌の社長さん、どや顔でインタビュー受けてるよ〜?」
「いや! やめて!!」
 メイアが耳を塞ぐ。フェーナが一歩前へ出た。
「クールベ!」
「なに?」
 当たり前のように返される。うっと詰まるとクールベの方から話しかける。
「ああ? 理由? メガチャームが欲しかったに決まってるだろ? ああ、ヤヤコマにこっそりつけておいたのはレプリカだよレプリカ。本物は俺が持ってる」
「なんで」
「止まれよ下衆」
 また聞き覚えのある声。
「アングル!」
「ったくフェーナよぉ。お前は仕方ねぇ奴だな。巻き込まれやがって」
 プテラを連れたアングルがクールベを睨み
つけていた。
「クールベ、やっぱお前だったんだな」
「ああ、ソレイユの窓から見えたんだな? メイアにヤヤコマを渡す俺が」
「そう仕向けたんだろ?」
「そんな訳ないだろ? 俺に不利じゃないか。まあ俺に接触してきたら引き込むつもりではあったがね。まさか、読モになってまでメイアを見張るとは思わなかった」
 そうか、カルネを見たあの時、皆がカルネに見とれている中、彼は自分の後ろの窓からメイアとクールベを見たのだ。だから様子がおかしかった。
「最初は、隠れファンかなんかと思ってたけどな。あの後のあれだろ……勘だった。だからメイアの方に近づいたんだ。ヤヤコマを色々調べてみたが、フェイクには気づかなかった……それで取り越し苦労か、とお前に接触しようとしてた……順番をしくったぜ」
「羽の内側にピンで留めてたからな。飛ぶ時痛かったんじゃないか」
「うっせえ! なんでこんなことをしたか、なんてどうでもいい! てめぇを警察に突き出す!」
「ふぅん? できる?」
 どんっという音と共にアングルが吹き飛んだ。
「アングル!?」
 呆然としていたフェーナがやっと気を取り直しアングルに駆け寄ろうとした。しかし、耳元を何かがかすり、その衝撃波でバランスを崩し倒れてしまった。
「う……なに」
 衝撃が強すぎて体が動かない上、かすった耳の方がよく聞こえない。それでも嘲笑うようなクールベの声は聞こえた。
「あれ、アマルスのはかいこうせん、効き過ぎちゃったかなあ」
 人間に向かって技を撃ったのか? この声の主は本当にクールベなのか。夢であって欲しかったしそうならすぐ覚めて欲しかった。だが体の痛みがそれを許してはくれない。
「じゃあ、俺は行くねーばぁいばい」
 行くな。行かせてたまるか。もがくフェーナの手に何かが当たる。願いを込めて反射的にそれを投げた。
「そういえばいるんだっけね。強いポケモンが。アマルス! はかいこうせん!」
 方物線を動く丸い物体に、あろうことか、ポケモンの技が放たれた。クールベには、もう常識など通用しないのかもしれない。万事休すか、さすがのフェーナも諦めかけた。
 しかし。
「……化石っ!?」
 クールベが驚いたような声をあげる。投げたのはどうやらキルリアのボールではなく以前アングルから貰ったアゴの化石だったらしい。アングルがくれたもの。友人がくれたもの。その友人が頑張ってここまで来たんだ!まだ、まだできることがある! 心に再度炎が燃え上がった。
「メイア! 俺のボールを取って! それを開けて!」
 投げたらまた技を放たれてしまう。だがフェーナにはもう動くだけの気力がなかった。
「で、でも……」
「いいから!」
 お願いだ。
「君じゃなきゃだめだっ!! メイア!!」
 メイアが息を飲む。クールベがメイアに向かって走り出す。それに少し遅れて、メイアも走った。
「ざぁんねん」
 当然だが、男のクールベの方が歩幅は大きい。フェーナの元に行く前にメイアは捕らわれてしまった。
「ちゅんっ!」
 その先に飛んだ影があった。
 色違いのヤヤコマ。
「なっおまえ」
「残念ね!」
 メイアの声を合図にヤヤコマが足でボールを弾く、こつんとわずかにボールが浮き、中からキルリアが出てきた。周りの様子は把握できいるらしく、クールベを睨みつけている。
「あんたっ!なんでもいいから一番強い技っ!!」
 キルリアが頷く。
 そして祈りの体勢を取り、辺りが光に満ち始めた。
「ちっ! ムーンフォースか!」
 クールベは舌打ちするとメイアを突き飛ばし、アマルスを従え走り出した。途中プテラが道を遮るが強引に突き飛ばされてしまった。
「……ま、て」
 周りががやがやと騒がしい。起き上がろうとしたが体が重い。メイアの声が聞こえる。
「……」
 溶けるようにフェーナ意識を手放した。


【140508】
【170912追記】