blue valet04
場所はミナモシティ、イッテツはちらちらとこちらを見ている。
「どうした?」
「スカート、履くんですね」
「どういう意味だ?」
「いつもスーツばっかり見てたなって」
「仕事だからな」
二人はコンテスト会場にいた、例のイッテツの姪が出るコンテストを観覧するためだ。
それにしても、ここはよく考えたら最高ランクのコンテスト会場だった筈。イッテツの姪は相当凄いのではないか。
「ミナモも変わりましたね」
「知ってるのか?」
「ヒマワキにいた時はまだピジョンだったこいつに運んでもらったこともあって」
二人の上を旋回するピジョットをルシナは見上げた。
「ええと……小さな会社がありましたね、いつの間にか潰れちゃってたけど」
「会社?」
「二階くらいの、ガキだったんで勿論興味示さなかったけど、デボンができてからは小さな企業とか減っちゃったイメージありますね」
「そう、だな……」
「?」
イッテツが首を傾げたのとその声が響いたのは同時だった。
「イッテツくん〜!!」
「ベルベットか」
こちらに走ってくる少女。明るそうで、実際まばゆい笑顔を振りまいている、可愛らしい少女。
「来てくれたのね!」
「チケット無碍にする気が起きなくてな」
「も〜う!可愛い姪っ子のために来てくれたの、隠さなくていいんだから!!」
なるほど、自信に満ち溢れている。マスターランクに出るだけはある。
「それで、こっちがイッテツくんの彼女ね!」
……は?
「そうだよ」
…………は?
「イッテツ」
「やっぱり〜チケット勘ぐって二枚送ってよかった〜」
「はは」
「イッテツ!」
「とりあえず準備してこいよ」
「あ、そーね! また後でね、イッテツくん、彼女さん!」
ベルベットと呼ばれていたか?彼女はくるりと体を反転させ、スキップしながら去っていった。
沈黙が落ちる。
「……あー、そういうことです」
イッテツが気まずそうに頭をかき、ルシナを真っ直ぐと見つめる。
「俺、好きな人手に入れるんならこういうこと平気でするんで、諦めないし誰かに渡す気もない」
「私の気持ちは無視か」
「絶対好きにしてみせる」
イッテツの目は本気だった。だから一瞬、流されてしまったのだ。
「……別にいいが」
「!」
やや意外そうなリアクションをしたイッテツは数秒後、微笑んだ。
場所は奇しくも、ミナモシティ。その海に面した場所にある洞窟の中に、サクレンはいた。
昼間にも関わらず、缶ビールを何本か開けていたサクレンに後ろから声をかける人物はいた。
「お前、アクア団相手に騒ぎを起こしたらしいな」
「あんた達が何故パーツを欲しがったのか探ろうとしてたから追い返したまでさ」
「まあいい。もうすぐで潜水艇ができるらしい。……わかるな」
「へいへい」
サクレンは立ち上がる。飲み過ぎたのか体がふらつく。
「外の風浴びてくるわ」
「おい」
「安心しなってリーダーマツブサ。命令聞いて欲しいだけなら、そっちのマイナスになることはしないからさ」
「……ふん」
「あー……」
波止場で塩風を浴びながらぼうっとする。デボンを出てからというもの、こういう時間が増えた。
『道化を演じているって』
「うるせぇよ」
不意に頭の中でリフレインする言葉に舌打ちする。
「わかってんだよ、今更言うなって……」
「ズッ」
「?……おわっ」
後ろからなにかに体当たりされ、前のめりに倒れかける。振り向いて文句の一つでも言ってやろうとしたが、それはポケモンであった。
「……カゲボウズか?」
「ず、ズズ!」
カゲボウズ。おくりび山に生息してる筈だが。誰かの手持ちか?……いや、野生のようだ。
「迷子か」
そう言われると肯定するようにカゲボウズはうなだれた。
「帰りたいか」
「ズ?」
首を傾げるカゲボウズにふんわりと笑って、サクレンはまた海の方を向いた。
「難しいよね、帰るってさ……いや俺のことなんだけど。お前は純粋な迷子だもんな?」
「?」
「どうせ暇だからおくりび山まで案内してやるよ。着いてきな」
歩きだしたサクレンの言うことを理解したらしくカゲボウズは一回転し、彼の後に続いた。
【160612】