消えない世界律04
アリマは最初それを異常なことだとは思っていなかった。呼吸をするようにそれはアリマに取って普通のことだった。
「おとこのひとがすきなんてきもちわるい!!」
だから、自分の最初の想い人を告げてそれを叫ばれた時は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
(男が男を好きなのは異常なんだ)
そう心に刻みつけられていたアリマは、自分を偽る癖ができるようになった。お調子者の、道化。その心はいつも愛に飢えていた。けして返されることのない愛を人に求め続ける日々。そうして生きて、アリマは出会ってしまった。
運命の恋に。
『隣、いいか?』
声をかけられて目を合わせたその日から。
そのライオという少年にアリマの心は囚われてしまった。でも想いを告げることなんてできない。
そう想っていたのに。
「ねぇ、わかる? その人も、俺と一緒だったって気づいちゃった時の喜びと、絶望!」
「も、もう許して」
「まだだよ!」
リウトの頭を床に打ちつける。リウトは体のあちこちが傷だらけだ。
「なんとなく聞いた故郷の友人に想い人が恋してるってわかっちゃって、自分にはそれが一生向けられることのない感情だって知っちゃった時の気持ち、わかる!?」
「う、うう……」
「ずっと見てたから、わかったんだよ」
「……」
アリマは額に手を当てる。
「ライオ先輩が苦しんでる間、お前はなにをしてたの」
屈み、リウトと目を合わせる。
「こんなことになってんの、自業自得だからね。全部お前がなにも見ない馬鹿だったから」
「……助けて」
「泣くなよ」
「助けて」
ライオ。
「その名前を呼ぶのは、もう遅いよ」
「そんなことないんじゃないか?」
「あっれー思ったより遅かったですねぇ」
「……ライオ」
ああ、これは大分怒ってるなぁ。当然か。アリマは笑みを深くして現れたライオに向き直った。
刹那、衝撃と共に視界が揺れた。立っていられない衝撃に、地面に倒れ込む。間髪入れず胸ぐらを掴まれる。衝撃が痛みに変わり、声を漏らしながら視界を上にやると、
(ああ)
愛しい人。
「お前はっ!」
どうせ手に入らないなら。
(嫌われきってしまった方が楽だろう?)
「こんなことして! なんでだよ!」
「さあ」
「俺は、お前のこと、弟分だと思って……」
「……本当残酷ですね。先輩って」
胸ぐらを掴む腕が震えている。怒りか、悲しみか。少なくともアリマが本当に求めたものではないだろう。
「……先輩」
その手に上から自分の手を重ねて、呟く。
「……ライオ」
今だけは。
「好きですよ」
こう告げることをお許しください。
【170315】