ア・ピアチメント08


「……本当に、ごめん」
「なに、オスカーって結構ちゃんと謝れるんだね」
「あのなぁ。俺だって……」
 あの後オスカーはカキに、Zリングを取ってくるように言われ、リザードンライドの準備をしていた。
「お前はこのままシェードジャングル向かうんだよな?」
 同時に二人はオボロがこのヴェラ火山公園にも訪れ、もう一つの試練の地シェードジャングルに向ったことも聞いていた。
「うん、これ以上置いてかれることは避けたいし……」
「ま、リザードンなら一っ飛びだしそんな遅れないと思うわ!」
「うん!」
 ここでリザードンが一鳴きした。
「急かすなよ。ま、行くわ!」
 リザードンが大きく旋回し、空を飛んでいく。ソーガはそれを見送り、呟いた。
「ちょっと気が楽なんて、言ったら怒るかな?」



「へぇ、それで帰ってきたの」
「ああ」
「家出かと思ったわ。お父さんが出張から帰ってきたらなんて言うかしらね?」
「ぜってー言うなよ」
「で、さっきからなにしてるのオスカー」
「Zリング見つからねーんだよ!!」
 物置をごそごそといつまでもやっている息子に母親は溜息を吐く。
「そんな奥にまでしまったの?」
「もう使うことないと思ってたからな」
「それまで持ってたZクリスタル、全部キャプテンや島キングに返しちゃったものねぇ」
「やるんなら半端はしたくなかったっていうだけだ」
「そういうとこ、本当、極端よね」
「うっせ……」
 そこでひらり、となにかがオスカーの足元に落ちてきた。
「?」
 何気なく拾って検める。それは写真だった。幼い自分が写っている。
 しかし圧倒的に違和感があった。暗い目でカメラを睨む自分は今まで自分が把握している限りでも覚えのないものだった。
「オスカー?」
「! なんでもねっ」
「もう、私も手伝うわ。それにしてもこのヤトウモリとピチューって可愛いわねぇ」
 ポケモンをマッサージしていた母親が歩いてくるのに咄嗟に写真をポケットの中にねじ込み、オスカーは母親を迎えた。



「……不安だ」
 一人で5番道路を歩きながらソーガは溜息を吐いた。気が楽なんて、そんなことはなかった。なにせ勝負をしかけてくるトレーナーが強い。マロンはややばててきている。
「あ、ポケモンセンター」
「ワン……」
「休む? マロン」
「ワウウ……!」
「君、それまさか……」
 ソーガが身構えた瞬間マロンは光に包まれる。眩しい。目を閉じ、開くとそこには青い大きなポケモンがいた。
「……進化したんだね」
「バウ!!」
 マロンが高らかに吠える。5番道路の連戦でレベルが上がっていたらしい。
「オスカーより早く進化するなんてね」
「バウ……」
「オスカーに伝えてもいいのかな」
 ソーガはぼやいた。
「オスカーのイワンコの本当の名前」
 その時だった。
「この、役立たず!」
「!」
 大声の先を見ると小さなポケモンに大人のトレーナーが怒鳴りつけている。
「お前が来てからうちは連敗だ! 勝たないと意味がないんだよ!」
 小さな、恐らく虫のポケモンがごめんなさい、と言うようにトレーナーの足元にすがりつく。それをトレーナーは蹴とばした。
「っ!」
 勝手に体が動いた。
「おい!」
「ちょっと!」
 声を荒げたのは自分だけではなかった。振り向くと茶髪の少女が肩をいからせてトレーナーを睨んでいた。
「勝てないのはあんたがポンコツだからでしょ!?」
「んだと!? 子供が大人に意見するのか」
「……最低ですね。そうやってすぐ大人を傘に着る。なんでポケモンを大事にできないんですか?」
 ソーガは言う。思ったより冷たい声が出てきたことに自分で少し驚いた。
 子供二人に迫られ男はうっと詰まる。
「こ、こんなポケモンなんて最初からいらねぇよ!!」
 トレーナーはそう言ってポケモンセンターの方に走って行ってしまった。
「……あんたなかなか言うわね」
「どうも……」
 少女に言われソーガはなんとなく会釈を返す。少女の方がすごいことを言っていた気がするのだが。
「私はリオ。あなたは」
「……ソーガ」
「そう、ソーガ。あなた、手持ちに余裕はある? それまひるのルガルガンよね、色違いは初めて見たわ」
「うん……手持ちはマロンしかいないよ」
 ルガルガンというのか。
「じゃあ決まりね! このコソクムシよろしく!」
 いきなり歩み寄られて捕まれ、虫のポケモンが悲鳴を上げる。
「やめてあげて……」
 ソーガが横から抱き上げるように受け取ると、コソクムシはきゅーきゅーとソーガの胸で泣いた。
「うんうん。捨てられて悲しいよね」
「あら、懐いてるじゃない」
「うん、まぁ……」
「あんたって島巡りの証つけてないから島巡りじゃないわよね。わざわざこんなとこまでなにしに来たの」
「それは、まぁ探し人……」
 かなりグイグイ来る少女だ。リオはパン、と手を打って言う。
「じゃあ探し人も島巡りの人?」
「違うよ」
 リオは今度は口を尖らせた。
「あのねぇ、私は真面目に島巡りしてるの。あんまりそういうので出鼻くじかないでくれる?」
「ごめん……」
 何故自分は謝っているのだろう。と思っていると。
「随分じゃじゃ馬だな」
「なに?」
「お、俺じゃないよ!」
 声は上からだ。見上げると。リザードンで滞空する見慣れた姿。
「オスカー……」
「誰あんた」
 リオの方はやはり容赦がない。オスカーはリザードンで着地すると、ライドウェアを脱ぎながらリオに向き直る。
「どーも、元島巡りの民です」
「それって脱落したってこと? 話にならないわ」
「と、思うじゃん?」
 オスカーは腰元の飾りを示す。
 それは。リオがつけているのと同じもの。
「ククイ博士が確かあんたを褒めてたぜ。いい技を使うってな。でも先輩に対する意識が足りないな?」
「オスカーだっけ? あんたZクリスタル何個持ってるの?」
「ほのおZだけ」
「舐めてるの?」
 一触即発とはこのことか。ソーガがあわあわとしている時だった。
「随分騒がしいと思ったら、お前か。ソーガ」
「あれぇ? ソーガ君にオスカー君じゃないですか」
 シェードジャングルの方から、一声。ソーガが体が固まった気がした。この声はよく知ってる。
「オボロ……様」
 いつぞやかあったアリマの横に、緑の三つ編みの少女が凛々しく立っていた。

【171001】