ア・ピアチメント09


『オスカー、帰っているのですかな?』
『ハラさん』
『ちょうどよかった。旅に出たと聞いて渡すものがあったのですな。返したZクリスタルは集めなおしてもらうことになりますがな』
 そう言って渡された島巡りの証。今度こそ失わない。
 しかし、この状況は。
「あれ、オボロさんとソーガさんたち知り合いなんですか?」
 アリマはあれ?と首を傾げる。
「ていうか、雰囲気悪くないです?」
「誰かさんのせいでね」
「俺か? 言うじゃねーのリオ」
「気安く名前で呼ばないで」
 オスカーは肩眉を上げる。怒りはしないが、大分敵を作りやすい少女だと見た。
「トレーナーが会ってやることなんて一つだろ?」
「……私とバトルしたいの? いいわ、返り討ちにしてあげる」
「えっと、じゃあ。僕、審判しますね」
 アリマはまだ訳はわかっていないようだが二人の間に立つ。その間にソーガはオボロの横に立った。
「お前が来たのか」
 オボロはオスカーとリオたちから視線を外さない。
「ええ」
「そうだな。島の外のことにはお前が駆り出されることが多いよな」
「そうですね」
「……」
「……」
「……ソ」
「オスカーはすごいいい人、ですよ」
「そうか……」
「はい」
 会話は今度こそなくなってしまった。



「それでは使用ポケモンは一対一の真剣勝負! オスカーさんとリオさん、ポケモンどうぞ!」
「行けっ、ヤトウモリ!!」
「ニャヒート、お願い!」
「それでは、バトル開始!!」
「先手必勝だぁ! ヤトウモリ、どくガス!!」
「避けてしたでなめる!」
 速い!ニャヒートのしたでなめられたヤトウモリの動きが鈍くなる。麻痺したのだ。
「センスある技選ぶな……嫌いじゃないぜ、そーゆーの」
「偉そうにしないでよ」
「……俺は楽しんでるんだよ」
「楽しんでる……!?」
 リオが目を見開いた。そしてすぐギッとオスカーを睨む。
「あんたには絶対負けない」
「……?」
「ポケモンバトルを楽しんでるなんてふざけてるあんたには! 負けない!」
「俺がいつふざけったってんだよ!」
 それには答えずリオはZリングを起動させた。
「行くよ! ニャヒート! 私たちのゼンリョク!!」
「お前がなにを怒ってるのか知らねぇけど! 俺のスタイルを否定されて黙ってられないんだよなぁ!!」
 オスカーのZリングも起動する。
「ヤトウ!!」
「行くぜヤトウモリ!! 俺たちのゼンリョク!!」
 二人のポーズが同時に決まる。
 ダイナミックフルフレーム。
 二匹のまとう炎がぶつかり合う。
「負けるかぁあ!! 頼むぜヤトウモリ!!」
「頑張って! ニャヒート!!」
「すごい……」
 ソーガが呟く。
「あの男を応援するか。ソーガ」
 オボロに問われ、ソーガは俯く。
「ポケモンが傷つくのは嫌いです……」
「ポケモンを進化させといてよく言う」
「! ……見てたんですか」
「いや、感じただけだ」
「……」
「決着がつくぞ」
 衝撃波が晴れていく。残されたのは。
 気絶しているヤトウモリとニャヒート。
「両者ひんし! 引き分けです!」
 アリマが右腕を上げる。
「そんな……」
「ヤトウモリ、ありがとうな」
 オスカーはヤトウモリに駆け寄り、抱きかかえる。リオは呆然と立っている。そしてはっとして彼女もニャヒートに駆け寄る。
「ありがとうね、ニャヒート。……あんた」
「オスカーだ」
「そう、オスカー。これで終わりだと思わないことね。私が、あんたを負かす!」
「俺お前の名前知らねーんだけど……」
「そう……そうね、私はリオ。因みにシェードジャングルでの試練は私は終わらせてるから。精々頑張ることね」
「えっらそー」
 それ以降なにも、誰にも声をかけることもなくニャヒートをボールに戻しリオは去っていった。
「……なんか彼女、心配ですね。肩に力入りすぎっていうか……」
 アリマがソーガとオボロに駆け寄りながら言う。
「ポケモンもピリピリしてた……」
「とりあえずポケモンセンターですね。ソーガ君のコソクムシも怪我してるみたいですし」
「そういえば、アリマさんはなんでここに。オボロ様はなんか、島巡りに変わるなにかを探してるとはスイレンさんから聞きました」
「言ったでしょう。ジガルデ・セルを集めてるって。可能性があればどこだって行きますよ」
 得意げに腰に両手を当てたアリマは呟く。
「オボロさんがぬしポケモンを戦わず手なずけちゃったのはびっくりしましたけどね……」
「そんなことより、ポケモンセンター、だろう?」
「ああ! そうでした! オスカー君!」
 ピシ。
「ピシ?」
 その音はオスカーから聞こえた。オスカーがはたと止まってハッとしたようにバッグを探る。中には卵が入っていた。かつてアリマからもらったものだ。ヒビが入っている。ヒビはどんどん大きくなる。
 そして、完全に孵った時そこには黄色と灰色のポケモンがオスカーの腕の中にいた。
「ジャラコですね! いやー僕も卵持ち歩き過ぎてなんの卵だかわかんなくなってたからなぁ」
「それ、俺のもなんですか」
「いやぁ、ははは。パートナーが増えるのはいいことでしょ?」
 オスカーとジャラコは暫く見つめ合っていたが。
 ジャラコが突然オスカーに頭突きした。
「いってぇ!」
「ジャラッ」
 オスカーから離れたジャラコはツン、としている。それに対しピチューの一匹が非難するように鳴く。それをはすに見て、ジャラコは顔を背けた。
「産まれた瞬間に嫌われるとかすごいな」
「お、オボロ様……もうちょっとオブラートに……」
「ドラゴンポケモンには気難しいのが多いですからね……」
「てめー!! なに頭突きしてくれてんだ!!」
「ジャラ!」
 怒り出したオスカーとそれを睨むジャラコに三人は苦笑した。


【171001】