ア・ピアチメント11
「どうも! キャプテンのマオでっす! オボロはまた来たんだね」
「友人が世話になるのでな」
「友達が来てくれたんだね! 心強いなー! 挑戦者さんともう一人の人は名前はなんて言うのかな?」
「オスカー様だ」
「……ソーガ」
「うんうん、覚えたよ! じゃあ試練始めよっか、オスカー!」
「おう!」
試練開始。
「コソクムシ。遊ぶのはいいけど草むらには入らないようにね」
「バウ!!」
「コソー!!」
オスカーが試練をしている間木の根元でソーガがマロンとコソクムシを遊ばせているとオボロがやってきた。肩にはピチューが乗っている。
「……契約、初めて見ました」
「お前にも現れるといいな」
「俺なんて……」
「なぁ、ソーガ。自分を卑下するのはやめにしないか」
「……」
「失礼した。無神経だったな」
「いえ、オボロ様は悪くありません!」
「優しいな。お前は」
ふっと笑って言った後、きゅっと真剣な顔になりオボロはソーガの隣に座る。
「優しいから、たまに怖くなる。その優しさがいつかお前の首を絞めないか」
「オボロ様…….。俺はオスカーに全てを話していない卑怯者です。本当に優しいのはそれを聞かないで言わないことを察してくれているオスカーです」
「……」
「だから」
「コソー!!」
「コソクムシ!?」
コソクムシがソーガの胸に飛び込んできた。会った時よろしく泣いている。
「なに、どうしたの」
「あのポケモンに襲われたらしいな」
草むらの付近にポケモンがいる。
「確か、カリキリ」
カリキリは暫くソーガを見ていたが、てこてこと歩みよってきて。
傅いた。
「え!?」
「噂をすれば……」
「で、でも俺とこのカリキリは会ったばっかりで」
「私とピチューもそうだぞ」
「……」
カリキリはまっすぐな目でソーガを見つめている。
「オスカー! さすがだね! ぬしポケモンおとなしくさせちゃうなんて!」
「だめかと思ったけどな……お疲れさんイワンコ」
「ワン!」
「じゃあこれ、くさのZクリスタルを受け取ってよ!」
緑の綺麗な石。アローラの誰もが一度は憧れる光だと思った。
「それと、オスカーにお願いがあるんだ」
「?」
「ここの迷子になったイーブイがいてね。そのままリーフィアに進化しちゃったんだけど……シェードジャングルでは孤立してるみたいで……元々むれ意識の強いポケモンが多いから……。君におやになってもらえたらいいなって思うんだけど、因みにリオには急いでるのでって断られちゃったんだ」
「いいぜ」
断る理由なんてないと思った。一人はきっと辛い。
「いいね、即決! リーフィアはこの奥の岩の上にいることが多いよ!」
頷いて、オスカーはイワンコをボールに戻した。
「本当にいた」
「……フィン!」
図鑑を片手に呟くとリーフィアは警戒するように身構えた。ただで捕まえられるつもりはないようだ。
「よし、ピチュー!」
「チュ!?」
「なに驚いてるんだよ。お前もバトル覚えておかないと、いざというとき自分を守れないだろ?」
「チュ……」
「そんな顔するなって。手が届く限りは、守ってやるからさ」
ピチューはなにか逡巡するように考えていたが、オスカーの肩を降りてリーフィアに向かった。
「よし、行くぜ。ピチュー! でんきショック!!」
「ピィイッ!!」
ピチューの電撃をリーフィアが飛んで避ける。そして技を出した。はっぱカッターだ。
「避けろ!」
「ピー!!」
ピチューがオスカーを見て叫んだ。そこで気づいた。このはっぱカッターは自分を狙っている!
慌てて避けたところではっぱカッターの衝撃が強くその場で転倒してしまう。頭を強かに打った。
(や、べ、え)
意識が遠のいていく。
(まも、るっていった、のに)
『おにいちゃんにはなにもまもれないよ』
視界が変わった。目の前には少年がいる。顔がぼやけていて見えないがよく知っている気がする。
「誰だ……」
『なんでおにいちゃんなの』
「なん……」
『おにいちゃんなんてにせものだ。ぜんぶぼくにうえのたってふみつぶしてる』
「……」
恐怖。こんな恐怖は感じたことがない。自分はちゃんと立てているのか。
『かえしてよ』
少年は近づいてくる。後ずさりもできない。
『ピガー!!』
よく知った、知らない声が聞こえた。
「……ピチュー?」
「ピカ!」
「……違う、ピカチュウ……進化したのか」
まだ頭は痛いが、起き上がる。リーフィアが気絶している。
「……ごめんな」
まだ痛い頭を持ちあげて起き、リーフィアの前まで行ってボールをコツンと当てる。リーフィアはボールの中に収まった。
「俺が守られちまったみたいだな」
ピカチュウを撫でる。ピチューの時よりぱちぱちしている。
「あのガキ、誰だろうな」
「ピ」
「お前が鳴いてなかったら、わかんなかったかも……そんな気がする」
「ピカ!」
「オスカー!」
またよく知った声。
「ソーガ!」
「マオさんから聞いたよ。リーフィアは捕まったの? あ、ピチュー進化してる」
「ああ。ポケモンセンター行かねぇとな」
「……なにか、あった?」
「んーん、なんも」
「そう……」
嘘をついた。説明できる気もしなかった。
「俺もカリキリを捕まえたんだよ。オスカーといるといろんな友達と会えるね」
「俺じゃなくてお前の力だよ」
オスカーはそう言って、座り込む。頭が痛い。
「大丈夫? ……わっ」
オスカーは心配して同じく座ったソーガの肩にもたれた。
「少し、疲れた」
「……うん」
「もうちょっとだけこうしててくれ」
「うん」
随分といい匂いがする。オスカーはそっと意識を手放した。
「おやすみ、オスカー」
今寝てもあの少年はもう出てこないと思った。
【171001】